メンテナンス

メンテナンスとは?

 スキーボードに限らずスキーの板やブーツなどはメンテナンスが必要です。適切にメンテナンスを行う事で長持ちさせるのはもちろん、快適に扱えたり未然の事故や怪我を防ぐことが出来ます。
 ここでは一般に行われるメンテナンスを紹介します。難しいと思われがちなスキー道具のメンテナンスですが、この機会に一度チャレンジしてみては如何ですか?


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スキーボードの夏チューンナップ

夏も暑いさなかですが、愛板の調子はいかがですか?チューンナップはされてますか?

 

…調子と言っても雪もない今はあまり関係ない?

 

実は、夏ってチューンナップにはとても良い時期なんですよ。

DSC06425_R<夏がチューンナップに向いてる訳 その1>

夏は暑いです。この暑さが実はポイント。スキーの滑走面にしっかりとワックスを浸透させる場合、できるだけゆっくり冷えるようにしてあげるとその分ワックスも浸透してくれます。冬にやる場合は室温を20度程度に温めて行いますが、室温が高い夏ならば特に加温しなくとも浸透を高める事ができます。

そしてよく浸透したワックスは滑っても耐久性があり、板も十分保護されます。良いことづくめですね。

 

<夏がチューンナップに向いてる訳 その2>

上の理由に近いのですが、ワックスを浸透させるもう一つのコツに「板を温める」というのがあります。板が冷たいといくら室温が高くとも浸透しにくくなるのですが、暑い夏は板も十分温められている状態に近いので、特に保護性を期待できる硬いワックスなどを浸透させやすくなります。

硬いワックスは板を長持ちさせるためには大事なワックスなので、少しでも浸透させた方がやはりメリットはあります。

 

<夏がチューンナップに向いている訳 その3>

夏は湿気が高いため、案外この時期に板の錆びが進行してしまうということはよくあります。ですが、逆にこの時期にメンテナンスして錆を落としておくことで、エッジの錆を進行させずに済ませることができます。エッジの錆はいわゆる癌と同じようなもので初期的なら簡単に落とせますが、進行してしまうとエッジ剥がれの原因となる場合もあります。特にノーメンテでシーズンオフしてしまうとかなり錆が進行している場合もあるので、夏の間に落としておくのも必要です。

 

<夏がチューンナップに向いている訳 その4>

夏は十分時間があります。案外冬にチューンナップやメンテナンスを行っても時間が足りないことがあり、不完全なメンテで使うこともままあります。夏なら十分時間があるのでゆっくり丹念にチューンナップやメンテナンスを行う事が出来、万全の仕上がりでシーズンインを迎えることができます。

 

<夏がチューンナップに向いている訳 その5>

自分でチューンもメンテもできない!という方の場合はショップにチューンの依頼をされると思います。その場合、多くのショップは夏は比較的リースナブルな料金で行ってくれます。シーズン中だと注文の多いためチューンに預けても時間がかかることも多く、料金も正規の料金となることがほとんどです。また、スキーボードの場合短いがゆえに受付てくれないショップもあるので、余裕のある夏の方が預けられるショップを探すのにも向いているということもあります。

 

と、このような理由があります。12月にシーズンインと考えてもあと4か月、ゆっくりできる今だからこそのチューンナップも「アリ」だと思います。

 

なお、GR ski lifeでもチューンナップを受け付けています。スキーボードはメーカー、ブランドに限らずお預かりしますし、やや料金は割増となりますが長板のチューンも行います。(スノーボードは申し訳ないのですができません)

そしてこの記事を読んでくれた方にサービス!注文時に「記事を読んだ」とご記入頂いてご注文頂ければ、ベースチューン、リフレッシュチューンの料金からそれぞれ1000円引きにてお受けいたします(チューン割引券との併用はできません、このサービスの適応は平成27年8月31日受付分までです)。

GRのチューンナップについては<<こちら>

 

この夏にしっかりチューンナップして、ぜひ楽しいシーズンインを迎えましょう!

滑走面のちょっと深い話

ちょっと久々のハウツーブログですね。

最近エントリー向けの動画を作成していますが、これがなかなか好評のようでしてうれしい限りです。ですが、スキーの世界にどっぷりつかっている皆さんには物足りない内容かとも思います。

そこで、今回は意外と深い滑走面のお話をしたいと思います。

<滑走面?>

スキーでは滑走します。当たり前です。かつては竹などが素材に選ばれていましたが、技術革新によってその素材はプラスティックに置き換わり、今の時代を迎えています。

この「滑走面」とはなんなのでしょうか?

滑走面はそのほとんどが「ポリエチレン(PE)」でできています。PEは低温に対して安定的な性質を持つため雪の上ではうってつけで、高い滑走性能を発揮します。

この「低温に対して安定的」というのが重要でして、他のプラスティック素材ですと低温ではもろくなりがちで、高速で滑走するスキーではPEは非常に有用な素材です。また生産コストが安価で加工もしやすく、スキーの滑走面としては非常に理想的な素材と言えます。

さらに、ワックスと呼ばれるパラフィンを染み込ませると容易にその滑走性を調整できるのも大きな特徴です。このため、スキーではワックスを滑走面に塗り、その滑走性を高めている訳です。

<シンタード?エクストリューデッド?>

一般には滑走面はPEですが、さらに大きく3種類の素材に分けられます。滑走面は「ベース」と呼ばれることから、これらは以下のように呼ばれています。

・PEベース

・エクストリューデッドベース

・シンタードベース

もっとも安価で手軽なのがPEベースです。これはキッズ向けの安価なスキーなどに採用されますが、PEと言ってもベース素材としては柔らかいため傷がつきやすく、滑走性もあまりよくありません。大人向けでも非常に安価な板に採用されますが持ちはよくありませんし、ワックスもあまり意味をなしません。スキーボードでも安価なモデルはこの滑走面が採用されているものもあると思います。

エクストリューデッドベースはEXベースともよばれ、extrudedの意味、押し出し成型からよばれています。滑走面としてはもっとも普及している素材で、ワックスとの相性もそれなりに良く、滑走性も安定しています。構造的にはPEベースよりも高密度なもので、近年では透明な素材もあるため、デザインを施した滑走面にはしばしば採用されます。

シンタードベースはEXベースよりもさらに高密度なポリエチレン素材を用いていて、その製法もPEベースやEXベースとは大きく異なります。そのため非常に硬く、ワックスの持ちの良い、滑走性の高い滑走面となるため、競技用の板やハイパフォーマンスな板に採用されています。しかしEXに比べると高額で、透明な素材が作りにくいためその多くが真っ黒な滑走面で、最近では切り貼りすることでデザインされた滑走面を作ることもできています。

このようにこれらには特徴があります。ちなみにGRではコストパフォーマンスとデザインの再現性、メンテナンス性を重視してEXベースを採用しております。

<滑走性を高めるならシンタード一択じゃないの?>

実はシンタードは「厄介な」滑走面なのです。

シンタードは値段意外いいことづくめ。滑走性は圧倒的で、ワックスも良く染み込むし持ちも良い。きちんと滑走面ができていれば多少ワックスをさぼっても余裕で滑れます。しかしこれが、実は「厄介」なのです。

EXベースはPEベースより硬いとはいえ作業性はよくシンタードよりも柔らかいので修復が比較的楽です。滑走性はシンタードよりも劣り、ワックスの持ちも劣りますがそのために自然に滑走面を手入れでき、もし致命的に劣化したとしても割と直しやすい特徴があります。

しかしシンタードはそうもいきません。滑ってしまうため習慣的に滑走面をメンテナンスしない方では、致命的に劣化するまでメンテナンスを行わないことがあります。こうなってしまったら直さねばなりませんが、その硬さゆえに簡単には治せません。しかも使う前にしっかりとベースワックスを染み込ませる「ベース作り」を行っておく必要もあり、その作業性はEXベースに比べてあまり一般向けではありません。性能が高く高価である反面、ユーザー次第ではEXベースよりも扱いにくい板になる場合もあります。

とはいえ、一般的なメンテナンスを日常的に行えるのであればシンタードほどよい滑走面は無いでしょう。しっかりベースを作り育てたシンタードの滑走面は、あらゆる状況で最高のパフォーマンスを発揮します。

GRではこの点を検討し、現モデルシンタードの採用を見送っております。将来的には採用するモデルをリリースする予定はもちろんありますが、シンタードは透明な素材も無いため滑走面のデザインを大事にしたいGRでは特別なモデル以外はEXベースを採用する方針です。

<滑走面の劣化とその対処?>

滑走面は必ず劣化します。シンタードも例外ではありません。PE<EX<シンタードの順に劣化に強いですが、PEの性質上何もしなくとも毎日劣化します。

PEはプラスティックなので、紫外線や水分による加水分解、熱などの要因で劣化します。よく「滑走面が焼けた」と言いますが、この状態は専門的には「ベースバーン」と呼び、滑走面が摩擦によって劣化してしまった状態です。この状態は板を見るとエッジのわきなどが白くぼやけたようになります。程度の軽いものであればワックスを入れるだけである程度改善しますが、ひどいものは削り取る必要があります。

劣化した滑走面はまず滑走性が悪くなります。引っ掛かるような感覚で板が進まなくなります。そしてワックスも劣化した個所は入らなくなり、そのまま放置するといくらワックスを塗っても滑走性が悪いままの板になります。(これがシンタードで劣化した場合に厄介な症状です)

しかし補修する場合はごく薄く削るだけで治すことが可能です。作業としてはヤスリなどで削り落とすのが一般的で、これらの作業を「サンディング」と呼びます。

劣化させない方法もあります。それは適切なワックスを常に入れておくことです。時期によりワックスは数種類を使い分けますが、とりわけ「ベースワックス」と呼ばれる基本的なワックスをしっかり入れておくと、滑走性も良く劣化もしにくくなります。具体的には滑って帰ってきたらワックスを入れておけば、ワックスが被覆して滑走面を守るだけでなく、ワックス自体もしっかり浸透して次に滑るときに快適に滑れるようになります。

このメンテナンスはすべての滑走面に言えることで、ワックスを切らさないことがすなわちもっとも大事なメンテナンスになります。

<ストラクチャー?>

滑走面には「ストラクチャー」と呼ばれる非常に細かい溝が刻まれています。これはサンディングの作業による副産物なのですが、この微細な溝が板の排水性を高め、滑走性をより高める効果があります。

さらに高級な板となると意図的にストラクチャーを入れる「ストラクチャー加工」が施されます。こうした板は効率的な排水が行われるのでより高い滑走性を維持できるようになります。

ところで、この撥水性はどのようなものか。滑走性を悪くする要因は滑走面の劣化ですが、それ以外の要因としては「水」「汚れ」「ワックス」があります。

水はもっとも身近な要因で、寒いゲレンデで水というとピンときませんが、板は滑走により摩擦されます。摩擦されると氷は水になり、水の表面張力によって板にまとわりつきます。こうなるとせっかくのPEの性能は発揮されなくなり、滑走性は著しく低下します。

そこでストラクチャーを入れることで排水を促し、ワックスの染み込んだPEがきちんと雪に触れられるようにします。このおかげで板は滑走性を保ったまま滑る事ができます。

しかしストラクチャーも過ぎたるは及ばざるが如しで、やりすぎると今度はストラクチャーの溝が抵抗となって滑走性に影響を及ぼします。ストラクチャーはあった方が良いですが、意図的に加工する場合は必ず技術者に依頼した方が良いでしょう。

<汚れ?ワックス?>

先ほど、滑走性を悪くする要因としてもう二つ、「汚れ」「ワックス」と紹介しました。

「汚れ」はわかるとして、「ワックス」は滑走性をよくするものでは?

「汚れ」はごみ、油、砂など様々です。PEはその性質上静電気を帯びやすく、ごみを吸着しやすい性質があります。春先に滑走性が良くないのはこれと水が原因ですが、もちろん対処方法もあります。

汚れにくい滑走面を作る事。つまりきっちりクリーニングされていれば汚れも付きにくくなり滑走性を保てます。そしてもう一つ「グラファイト」を用いたワックスを使う方法もあります。グラファイトは汚れを静電的にはじくので効果があります。しかし炭のように黒いため、滑走面は黒く汚れます。もしデザインされた滑走面であるなら、グラファイトの使用は一度検討してからの方が良いでしょう。

「ワックス」は真逆のようですがそうではありません。雪質に合わないワックスを使ったり、フッ素が必要ない状況でフッ素入りのワックスを使うと滑走性が妨げられる事があります。これらは経験でしか判断ができませんが、ワックスに書いてある「温度帯」を参考に、できるだけ雪に合ったワックスを選ぶことが大事です。

さらに、ワックスを剥がさないことも妨げられている原因です。これは単純にストラクチャーがワックスでつぶされている状態であり、排水性が悪くなっているのが原因です。ワックスを入れた後になぜブラシなどでこすり落とすか疑問だった方もいると思いますが、ストラクチャーの溝のワックスを掻き出すというのがその理由です。

ですが、最近では工夫されて塗りっぱなしで剥がさずとも効果のあるワックスもあります。これもワックスの説明書をよく読んで正しく使う必要があります。

<まとめ>

滑走面についてはちょっと深い話としてもこれほど盛り沢山な話となります。これ以上深い話はまたの機会にしますが、これで少しでも皆さんの疑問や解らないことが解決されれば幸いです。

また、板の短いスキーボードでは滑走性の維持が楽しく滑る為にも重要な要素となります。これを機会に皆さんも自分のメンテナンスを見直してみても良いかもしれません

ダリングとダリングマーク

 

 

 

 

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*以下の作業はご自身の責任において行って下さい。性能向上の保証となるものではなく、間違った加工を行った場合、その復旧には実費が必要となる場合があります

「ダリング」と言う作業をご存知でしょうか?

「ダリング」は板のエッジを意図的に削り落とし、エッジが無用に引っかからないように行う「加工」です。

具体的にはエッジの両端に近い部分を数センチ、紙やすりなどでわずかに削り落とすだけの難しい作業ではありません。しかし一般的ではないし、簡単に出来る作業ではないのです。

と言うのも、どこまでエッジを落とすかで板の乗り味がかなり変わるだけでなく、削り過ぎ等加工に失敗した場合、簡単には元に戻せないからです。元に戻す場合は専用の道具を使ってエッジを削って復活させる以外に方法は無く、その作業は経験者でないと難しい作業です。

これらの問題があって一般でもあまり耳にしませんが、しかし重要な作業です。特に買ったばかりの板はスキーボードに限らずなんでも同じですがエッジが端から端まで立っていて、そのまま使うとエッジが引っかかって乗りにくいです。(*一部加工済みで売られている商品もあります)

特に問題になるのがスキーボードで、板が短いスキーボードはエッジの影響を受けやすく、他の長板などに比べてダリングの必要性が高いものです。

 

実は、このエッジが引っかかるというのがスキーボード(ファンスキー)が廃れた理由の一つだったりします

 

試しに滑ってみたらエッジが引っかかって滑りにくい。そうなればやめてしまうのは当然です。ならば最初からダリング処理を行っておけば?と思うのですが、ダリングは手作業で手間のかかるものなのです。

しかし、GR板は全てダリングしてあります。これは上記の問題を解決するためのもので、プレチューン作業に含まれて行われています。

ダリング

GRの板はそれぞれ「ダリングマーク」が示されており(写真の▲マーク)、そこから外側に約2cmの個所から先をダリングしてあります(やすりでエッジを落としている)

これはプレチューン動画内でもご紹介していますが、この加工があるのでGR板は最初からエッジがひっかかって滑りにくい!と言う問題が少なくとも解決されています。

もし、これでもエッジが引っかかるようでしたら、このダリングマークを基準に少しずつ紙やすりでエッジを落としてあげるとより好みの感覚になります。ダリングマークの位置より外側であれば比較的安全に調整が可能ですし、見た目の目印にもなるので失敗が減らせます。

なお、ダリングでエッジを落とす場合、紙やすりでわずかにエッジを丸める程度で十分効果があります。(*削り過ぎて失敗した場合は簡単には戻せないのでその点は十分注意して、自身の責任において行って下さい)金属製のやすり(ファイル)では経験が無い限り失敗しやすく、おすすめしません。また、雪質、状況でエッジのかかり方は変わります。必ず「簡単には戻せない」ことを確認してから行って下さい。

どのような雪質、状況でもエッジが引っかかる感覚があるのならばダリング加工は必要になります。そのときはエッジを丸める大きさを少しずつ調整したり、ダリングの範囲を少しずつ調整すると失敗は少なくなります。

 

この「ダリング」ついてもっと詳しい説明が必要な方はさらに下へ読み進めて下さい。(専門的なのでわかりにくい点が多々あります)

という訳でここから先はダリングの解説、ハードモードです。

ダリングの目的はつまり「トーションのコントロール」になります。

ターン中トーション板の各部の名称

ターン中にトーションを支えるのはだいたいダリングマークの個所、板をそのまま置いた時に雪と触れる「接雪点」が基準となります。この点がしっかりエッジが効いていればターンした時にエッジがたわみを支え、横滑りする事無くターンすることが出来ます。

この「トーション」「横滑り」をコントロールするのがダリングの最大の意図です。エッジが引っかかると感じるのはつまりこの接雪点のエッジがずれない事が大きく影響していて、トーションが強ければ強いほどエッジはしっかり効きますが、しばしば効きすぎることにもなります。

これがトーションが弱い板であれば影響は小さくなります。トーションがねじれて力が逃げることでエッジングが弱まるので、結果ダリングが必要なくなる場合もあります。しかしトーションが効きやすい板はこの影響を大きく受けます。短いスキーボードが他に比べて影響を受けやすいのはこれが原因で、結果「スキボ乗りにくい」の悪いイメージの一因になっています。

さらに、サイドカーブの強いスキーボードでは他に比べてエッジにより板がキョロキョロとブレやすい特徴があります。現在のスキー板のサイドカーブが18~28mが主流に対して、スキーボードは6~10mとかなりきついサイドカーブを持っています。したがってわずかでも傾けばエッジが効いて板が回り始め、すれが不快感に繋がります。

これを解決するには「エッジの引っ掛かりをコントロールする」ことが重要で、結果ダリングが重要になります。ターンした場合に一番初めに影響を及ぼす接雪点上のエッジを丸めてエッジングを抑える事でずらしやすくし、サイドカーブの影響も低減させられます。大きくターンする場合はエッジを丸めたと言っても食いつくのでトーションを支える事が出来ます。

しかし「失敗」してしまうとどうなるか。ダリングは意図的に滑走に使えるエッジの長さを変えるので、やればやるほど短くなります。するとエッジが必要な「ターン」や「制動」に大きく影響してしまい、曲がれない、止まれない不安定な板になってしまいます。しかもエッジを削った場合、直すためにはサイドエッジを削って治すしか方法が無く、そのためには専用の道具と専門の技術、そして実費が必要になります。

なお、ダリングのように有効エッジ長を減らさない方法でエッジの利きをコントロールする方法もあります。それは「ビベル」と言う加工ですが、これはサイドエッジを削るよりもはるかに難しい作業なので一般的ではありません。

そこでGR板では「ダリングマーク」を用意しました。ダリングマークは接雪点を基準にGRで独自に適切な箇所を検討して示してあります。出荷時はこのダリングマークからそれぞれ約2cm、指一本分外側までをしっかりダリングしてあります。一般であればこの調整で不快感を持たず、板の性能も発揮される設定になっています。

ですが、エッジの効き方は雪質や環境によって大きく変わります。良く行くゲレンデが雪の豊富なゲレンデであればあまり感じませんが、良くしまった雪ではエッジが効きやすく感じられます。そういったここのシチュエーションに対応する場合、このダリングマークを目安に加工を行うと調整しやすくなります。ダリングではどうしても「どこまで削ったら良いのか?」が分かりませんが、あらかじめ示しておくことで作業を簡単にし、失敗を少なくしています。

このような意図がありGR板ではダリングマークを用意し、プレチューンでダリングを行っています。すべての方において快適なものにはなりませんが、最低限不快感は持たずに滑ることが出来ると考えて行っています。

そしてくれぐれもご自身で調整する場合は「失敗したら簡単に戻せない」という事を念頭に置いて加工して下さい。少しでも板がお好みの感覚になれば幸いです。

 

 

 

ワックスの種類について

前回 <こちら> にてスキーとワックスについて解説しました。(まだご覧になっていない方は一度ご覧ください)

非常にわかりにくい話ですが、今回はさらに踏み込んだ解説をしたいと思います。

DSC06473_R

前回、スキーとワックスの関係を解説しましたが、その中で「ワックスには種類がある」と言いました。その種類について解説します。ワックスの種類

(上記 A-EはAが最も優れている、Eが最も効果が期待できない。 S-HはSが柔らかい Mがふつう Hが硬いの意です)

このように種類があります。(表は一般的なワックスの参考です)

これらを使い分けるのがワックスのむずかしさであり醍醐味ですが、まず基本としてこのような関係があります。使う基準として気温や雪温が示されていますが実は単純にそれらの温度帯に合わせるだけでなく、使うシチュエーションに合わせてワックスを選ばなければ、逆にワックスが滑走性を悪くすることもあります。

たとえば人工雪のスキー場。人工雪は天然に比べて結晶が硬く、板が傷つきやすい傾向にあります。ですのでベースとしては保護性の硬いワックスが入っていないと後で残念なことになります。また、黄砂の舞う春先はこの黄砂やゴミが摩擦となって滑走性の邪魔になるので、暖かい時期ではありますが低温用のワックスが必要になります。

しかし保護性ばかり見ていると滑走性が悪くなる事もあります。これは「硬いワックスが入っていると柔らかいワックスが入りにくい」と言う特徴にもよる事で、板の撥水性が損なわれて雪が少しでも解けると滑りにくくなる板になったりもします。

したがってベースの作り方にコツが生まれてきます。ベースワックスは一般的に柔らかいものから順に硬いワックスを入れます。こうして作ったベースは滑走性も持ちつつ保護性も持たせたオールラウンドな板に仕上がります。これが面倒な場合は「オールラウンド用」の幅広いシチュエーションで使えるベースワックスを使う方法もありますが、多くはやや保護性にかけるので個人的には硬いワックスと組み合わせると良いと考えています。

こうして作り上げた滑走面は十分に浸透した皮膜層ができており、高い滑走性を維持することが出来ます。が、この皮膜層は滑るほど失われるため、適時ベースワックスを塗って維持する必要もあります。これは一見面倒ですが、一度ベースを作ってしまえば作業自体は割と簡単になります。こうして十分浸透した皮膜層を作り、維持していくことを「滑走面を育てる」と表現したりします。

ここで注意なのですが、ワックスは「それそのものは滑らない」と言う事です。

DSC06479_R 余分なワックスを削り取る各種ブラシ

スキーで滑る際に必要なのは「ワックスが浸透した滑走面」であって、その上に残るワックスは余分なものです。ですので、ワックス作業では必ずワックスをはがし取る必要があります。

この作業を「ブラッシング」と言いますが、ブラッシングの意味はもう一つあり、ストラクチャーと呼ばれる滑走面の微細な排水の為の傷のワックスをはがし取る意味もあります。

ストラクチャーは滑走面をよく見るとわかりますが、非常に微細に細かく傷がついているのがわかると思います。この傷が非常に大切で、滑る上で邪魔な「水」を効果的に排水してくれます。水はまとわりつく性質があり、滑走性に悪影響を及ぼします(表面張力、ゲレンデにできた水たまりに入った事がある人はわかると思います)。それを軽減してくれる構造が「ストラクチャー」です。ストラクチャーを失った滑走面はいくら育ててもなかなか滑走性が上がりません。(濡れた机に下敷きを置き、しっかりと押さえつけてから横に滑らそうとしてもなかなか滑りません。同じ現象が雪の上でも起こります)

かといって過度にストラクチャーを付けてしまうとそれそのものが滑走性を悪くする場合もあります。ストラクチャーは難しいので細かい説明は省きますが、安易にストラクチャーはいじれるものではありません。

話はそれましたがワックスが塗られるとこのストラクチャーはもれなく埋まってしまいます。ですのでブラッシングによってストラクチャーの中のワックスもはがし取る事でより滑走性を高めます。ワックスは必要なのにワックス自体は必要ない、少し矛盾な感じもしますね。

ですが「ワックスが浸透している滑走面が滑る」と覚えれば、理解しやすくなると思います。

なお、滑走面のワックスをすべて剥がし取るのは非常に大変です。慣れないうちはこの作業でかなり苦労すると思います。


これまで「滑走面とベースワックス」について着目して解説してましたが、次に「滑走ワックス」についてです。

滑走ワックスは滑走性を高めることを主眼としており、ベースワックスとの一番大きな違いは添加剤が加えられている事です。この添加剤は多くは「フッ素」で、他にグラファイトと呼ばれる炭素化合物や、ガリウムなどもあります。これらの添加物は水弾きに作用したり、静電気に作用したりと様々です。

ですが一番の大きな目的は「水やゴミを滑走面に近づけない」事です。それによって安定した滑走性を発揮させるのが「滑走ワックス」です。

この滑走ワックスは基本的にベースワックスの上から使います。さらに滑走ワックスは滑るシチュエーションを良く検討した上で使うのが理想です。これは単純に滑走ワックスが高額であるのと、耐久性がベースワックスより劣るからです。しっかり状況にあった滑走ワックスを使わなければその効果は発揮されず、しかも一日滑れば滑走ワックスはだいたい剥がれ落ちてしまいます。

となると「浸透させればいいじゃない?」と考えますが、滑走ワックスに含まれる添加物はそのごく表面に効果を発揮します。浸透させてしまってもそれらの添加物は何も効果はありませんし、値段もかなり高い滑走ワックスなのでわざわざ頑張って浸透させるメリットはありません。

滑走ワックスイメージ 青が滑走面 黄色がワックス 黒点が添加物

図はイメージですが、このように捉えて頂ければ想像しやすいと思います。この表面に付着した添加物により、高い滑走性を発揮するのが滑走ワックスの役割です。特にフッ素は水に対して効果が高いので春雪などの水分が多い時期に用いると一日気持ちよく滑れる事でしょう。

滑走ワックスはこのような原理がありますが、実はレジャースキーであればそこまで必要なものでもありません。タイムを争う競技スキーでは避けて通れない部分ですが、タイムよりも快感を重視するスキーの場合、一日通して滑走性が保てるという事の方が重要です。

ですので敢えて滑走ワックスを使うよりも、ベースワックスをしっかり使って良いベースを作る事の方が重要です。コスト的にも滑走ワックスは高額なので、ベースワックスの扱いに慣れてから使い始める方が良いと思います。

私もたまに使いますが、毎回使う訳ではありません。あらかじめシチュエーション的に「必要だな」と思う時以外はあまり使いませんし、後述の液体ワックスなどを活用してピンポイントで滑走性を維持する方法でスキーを楽しんでいます。パウダーや雨のスキー、初めて訪れるスキー場など滑走ワックスがその効果を発揮するのは、そういった必要である状況が見えた時に使うようにしています。

この他に液体ワックスや、それを使いやすくしたスプレーワックスがありますが、原理的には滑走ワックスに近いものと捉えてしまって構いません。ですので一時的な滑走性は良いのですが、残念ながらその効果は一日、状況では半日も持たないものもあります。スプレーワックスを使う場合でも、最低限あらかじめベースワックスが浸透している滑走面を作っておいた方がより効果は長持ちします。

また、液体ワックスなどは一時的に浸透させるためにコルクなどでこすりあげる必要があります。これが実は結構大変な作業で、アイロンを使ったワックス作業が出来ればやりたくないと思うような作業です。ちなみにコルクでこすらずそのまま使った場合、最悪たった一本滑っただけでワックスが剥がれ落ちてしまう事もあります。

と、ここまではパラフィンが主成分となるワックスについて説明しました。しかし最近では「非ワックス系」というものも存在します。有名なのはザードスのノットワックスですね。

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このタイプは滑走面の表面にフッ素などの被膜を作り滑走性を保ちます。原理的にはテフロンコートのフライパンに近いです。ですので適切に使うと驚くべき効果を発揮し、しかも効果も滑走ワックスなどよりも長く体感できます。特に春雪には非常に効果が高く、扱いも手軽です。

ですが、根本的に「保護性」を無視しているのでこれもできれば保護性の高い硬いベースワックスで滑走面を作った後に使った方が良いです。実際にワックスに添加された状態のものもありますし、ワックスとの併用も推奨されています。

正直なところ、本当に効果が高いのでワックスに不慣れな方にはおすすめできるものでもあります。私も緊急用にいつも携帯しています。

最後にクリーニングワックスですが、クリーニングワックスは極力添加物や不純物のない、扱いやすいパラフィンでできています。よってその保護性や滑走性はあまり期待できませんが、滑走面をきれいにするためには非常に有用です。

これは、クリーニングワックスを滑走面に溶かし込むと滑走面の奥からゴミやほこり、油などを浮かし出してくれるからです。ですからクリーニングワックスは浸透させる目的もないので使う場合は滑走面に溶かしたら軽く固まるのを待ち、すぐに剥がし取ってしまいます。手間はかかりますがかなり滑走面をきれいにすることが出来ます。

 

このようにワックスの種類について説明させて頂きました。私の主観によるものもありますが、概ね把握して頂ければこれからのメンテナンスに生かせる情報にはなると思います。

ワックスは始めるのが少し大変ですが、出来るようになるとゲレンデで一日気持ちよく滑れるようにもなります。実際の施工方法はまた別の機会に説明させて頂きますが、この機会に始めてみてはいかがでしょうか?

スキーとワックスの関係について

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(注)非常に長く理解しにくいかもしれません。あしからず。

スキーボードもスキーもスノボも、その板は雪の上で滑ります。なので、ほとんどの板は雪に対して滑りやすい素材を滑走面に採用しています。

この素材は簡単に言えば「ポリエチレン」でできています。数ある素材の中でポリエチレンが採用されたのはマイナス以下の温度に対して変質が少ないのと加工が容易なこと、そしてワックスとの相性が良いことが大きく採用されている理由です。そのポリエチレンの種類として専門用語的に「エクストリューテッドベース」「シンタードベース」などがあります。

このポリエチレンはワックスと共に使うと非常に強力に滑走性を高めることが出来ます。この原理は様々あるのですが大まかに

・水が張り付く事で損なわれる滑走性を軽減できる(表面張力による滑走性の低減)

・氷が傷つける事で損なわれる滑走性を軽減できる(摩擦力による滑走性の低減)

と、似て非なる二つの要因に対して有効なのがこの組み合わせなのです。


水は0℃で凍ります。凍った水の結晶が積もった状態が雪なのですが、この上を滑るからこそ難しい問題があります。それは雪がさまざまな状況で多様にその状況を変化させてしまう事。なので、滑走面として適切なのは一つのシチュエーションで優れた効果を持つものよりも、多様なシチュエーションに合わせて柔軟に対応できる素材である。という事です。

気温が0℃程度の時の雪はすぐに解けます。滑ると雪と滑走面の間に水がまとわりつき、滑りが悪くなります。そこで滑走面に撥水性を持たせれば水をはじき、滑走性を維持できます。

気温が非常に寒いマイナス10度の時は雪は硬く凍ります。その硬い結晶はやすりのように滑走面を削り、滑走性が悪くなります。そこで滑走面に削れにくい能力を持たせれば、滑走性を維持できます。

この二つの仕組みを滑走面に与えられるのが「ワックス」なのです。ワックスのその成分は「パラフィン」で、簡単に言うとロウソクのロウと同じ成分です。このパラフィンに様々な添加物を与えたり、そのものに工夫をすることで大変多くの種類のワックスが生み出されています。

DSC06473_R 例 写真はSWIX社などのもの。ワックスとその種類

簡単には、ワックスは気温によってその種類が分けられています。

・溶けやすい雪に対して撥水性を重視したもの(高温度用、写真では黄色のワックス)

・硬く傷つける雪に対して保護性を重視したもの(低温度用、写真では青いワックス)

・その中間となる1~3種類のもの(中温度用、写真では赤いワックス)

が多くのワックスメーカーで用意されています。さらに幅広いシチュエーションに対応できる「オールラウンド用」と、滑走面のクリーニング目的で使う「クリーニング用」があります。さらにその用途で「ベース用」「滑走用」などがありますが、今回はその説明は割愛します。

雪の状況に合わせて滑走面にワックスを塗る事で多様なシチュエーションに合わせて滑走性を維持できるのが、このポチエチレン+ワックスの最大の強みです。だからこそ一般のユーザーにはわかりにくい悩みが同時に存在しています。

それは「どのワックスをどのように使うか」

という事です。


ワックスの塗られていないポリエチレンのみの滑走面は、初期的には滑りますがどんどんその滑りは劣化していきます。ポリエチレンは低温や高温に強い反面、劣化しやすい性質があるからです。スキーではこれを「滑走面が酸化する」「滑走面が焼ける」と表現していて、横文字だと「ベースバーン」と言います。

この劣化は止める手段がなく、たとえどのような滑走面でも時間が経てば劣化します。さらに対候性に弱い性質を持つために、屋外で使うスキーは何もしなければどんどん劣化します。劣化してしまった滑走面はそのままではワックスを浸透させることが出来なくなっており、上記の滑走性の維持や保護性の向上が出来なくなるばかりか、より滑走面が劣化していきます。

この劣化を食い止めるのが、またワックスの役割です。劣化の大きな原因は水と空気と紫外線ですが、そのうち水と空気に関してワックスが塗られていれば、その劣化を大きく食い止めることが出来ます。ワックスによるごく薄い皮膜のような層によって無用な水や空気が滑走面に触れなくなり、滑走面はより長くその性能を維持することが出来ます。

ですが、このワックスが浸透して出来た層は0.2ミクロンとも言われる非常に薄い層で、これは滑走によって徐々に失われていきます。よって、ワックスは適時塗り足して浸透させなければなりません。

では、削れにくくする「保護性」重視のワックスを使えばワックスははがれにくくなるでしょうか?答えはその通りですが、しかしデメリットがあります。保護性重視のワックスが浸透している滑走面は滑走性を重視する柔らかいワックスが入りにくくなります。したがってワックスをバランスよく浸透させることが一番大事になります。逆に滑走性のワックスだけが浸透している滑走面は低温時に滑走面が保護しきれずやすられて削られ、せっかくの浸透層がなくなって無防備な滑走面を晒して劣化させてしまいます。(良くスキーの板が滑走後に白く変色しているのはこれが理由です。なので圧が最もかかる足元のエッジ付近が良く白く変色して劣化します)

このバランスを簡単にしたものが「オールラウンド用」と呼ばれるワックスです。オールラウンド用ワックスは適度に滑走性と保護性を持っているので扱いは楽です。しかしシーズン通した幅広いシチュエーションすべてに対応できるほどの柔軟さは持っていませんし、多くのオールラウンド用は滑走性を重視して配合されています。より適した滑走面を求めるならば、数種のワックスを使い分ける方がより良い滑走面になります。

この場合、浸透させる順序があります。基本は高温度用の柔らかいワックスから低温度用の硬いワックスの順番に使います。さらに滑走面は1度や2度の作業ではワックスがしみこみきりません。何度も浸透させることで一様に均一な、様々なシチュエーションに対応できる滑走面が出来上がります。これを「滑走面を育てる」とも言います。

このようにして作った滑走面は滑走性を維持しつつもしっかりとした保護性を発揮し、多少のシチュエーションの変化でも諸ともしない良い滑走面になります。またしっかりワックスが浸透している事で劣化に対しても効果を発揮し、その寿命は格段に長くなります。あとはその都度時期や雪に合わせたワックスを塗り足していくことでシーズン通して快適なスキーを楽しむことが出来ます。


 

このようにスキーとワックスは切っても切れない関係にありながら、その原理的には非常に理解するのに難しい問題があります。しかしこれらの原理的な部分を理解しておくと、自分でチューンナップを行う際にワックスの選択などで判断しやすくなります。

次回はそんなワックスの具体的な種類と使い分けについて説明したいと思います。