ビンディングの違いについて

先に http://grskilife.net/?p=602 をご覧頂くと話が分かりやすくなります。

前回、ビンディングについて解説しましたが、今回はスキーボード(ファンスキー)のビンディングのそれぞれについて解説したいと思います。

「 種 類 」

KIMG0439 プラビン(他と互換性のないプラスティック製の固定式ビンディング)

KIMG0467 4×4ビン(4×4規格の金属ないし樹脂製ビンディング)

KIMG0444 解放ビン (アルペンビンディング)

種類としては大きくこの3種に分かれます。それぞれについて簡単にメリット、デメリットを見ると

<プラビン>

・メリット 非常に軽量で、コストが安い。調整がしやすい

・デメリット 耐久性に難あり。メーカーによって仕様が異なり、取り換えが出来ない。外れない。

<4×4ビン>

・メリット 互換性があり、種類も豊富。ニーズによってビンディングを選べる

・デメリット 手に入りにくい。高価。外れない。

<解放ビン>

・メリット 転倒時に外れてくれるので怪我の程度を軽減できる。

・デメリット 重さ、価格。取り付けモデルの場合は選べない。

このようになります。

 

「 具 体 的 な 比 較 」

ではさらに違いを検討してみます

KIMG0439 KIMG0440 KIMG0441

<プラビン>

参考板:エラン社(EXPO)

参考ビンディング:取り付け済み 固定式

板重量/ビンディング重量:不明(総重量1.4kg程度)

全体的に非常に軽く、コンパクトなプラビンなので板が90cm程度であっても長く見えます。しかしビンディングが独自のものののため、当時持っていたブーツではマッチングに問題がありビンディングを少し加工して使っていました。他のブランドのプラビンでも耐久性や強度に問題が出ることが多く、リリースから10年以上経つモデルでは自然劣化による破損の可能性も否めません。ビンディングが壊れた場合はほぼ換装が出来なくなるので、板も処分しなければならなくなります。


 

KIMG0435 KIMG0443 KIMG0466

<4×4ビン>

参考板:GR ski life(ForFree)

参考ビンディング:固定式 樹脂製

板重量/ビンディング重量:990g/560g(計1550g)

3枚目写真は下のもの。数少ない樹脂製の4×4規格のビンディングで、プラビン並みの重量が最大の特徴。調整機構に若干難があるためハードな使い方には向かないが、締め付けにある程度バネによる遊びがあるため履きやすい。プラビン同様に劣化の問題や、ベースの金属やビスが錆びやすいという問題はあるものの、これ以上軽い4×4規格のものはない。現状では生産メーカーが無いために中古で稀に見つかる程度で手に入れるのはほぼ不可能。


 

KIMG0442 KIMG0467 KIMG0466

<4×4ビン>

参考板:GR ski life(ForFree)

参考ビンディング:固定式 金属製

板重量/ビンディング重量:990g/700g(計1690g)

2,3枚目はそれぞれ上のもの。標準的な4×4規格の金属ビンディングで、これは最もベーシックなもののひとつです。樹脂製のものに比べてずいぶん重くはなりますが実際の使用感に問題はなく、プラビンや樹脂製に比べても高い剛性があるのでハードな使い方にも十分耐えることが出来ます。新品は手に入れにくいですが中古でも比較的手に入れやすく、質の良い中古品はオークションでも活発に取引されています。


 

KIMG0447 KIMG0449 KIMG0448

<解放ビン>

参考板:GR ski life(SnowFairy)

参考ビンディング:フリーライド向けアルペンビンディング 樹脂/金属製

板重量/ビンディング重量:775g/765g(計1540g)

マーカー社のフリーライド向け超軽量ビンディング。ハードユースにも耐えられるスペックながら非常に軽く、今回の組み合わせであれば4×4ビンよりも軽くなる可能性もあります。値段がネックではありますがその性能は十分なもので、長板でも評価が高い。プラビンなどに比べて見た目が大きいのでスキーボードの軽さを見ることが出来ませんが、履いてみると重さを感じさせません。板の横に伸びている2本の棒は「ブレーキ」と言って、板が外れた際にどこかに流れていかないようにするためのものですが、スキーボードの場合幅が広いものが多いためブレーキ幅は確認して取り付けないと対応しない場合もあります。(このビンディングは問題なし)


 

KIMG0444 KIMG0446 KIMG0445

<解放ビン>

参考板:GR ski life(WhiteLand -theFirstLimitedBlackEdition)

参考ビンディング:一般/レンタル向けアルペンビンディング 樹脂/金属製

板重量/ビンディング重量:880g/800g+210g※本体+レール重量(計1890g)

チロリア社のレールシステムを用いたビンディングで、最大の特徴は非常に簡単にサイズ調整が可能な事。このモデルは263mm~347mmと非常に幅の広い調整幅を持ち、かつ軽量である事から最近様々な板に採用されています。樹脂を多用することで軽量感がありつつもビンディングとしての機能は標準的なもので、スキーボードのビンディングとしても十分に使える革命的な一台。最軽量級とはいえ固定ビンの重さにはかなわないものの、しかしほぼ匹敵する軽さであるのでその使用感はほとんど大差がありません。


 

KIMG0453 KIMG0455 KIMG0456

<解放ビン>

参考板:GR ski life(ForFree)

参考ビンディング:一般/レンタル向けアルペンビンディング 樹脂/金属製

板重量/ビンディング重量:990g/805g+200g※本体+レール重量(計1995g)

チロリアのレールシステムビンディングの最新機種。上記のモデルの上位機種となり、同じく広い調整幅(255mm~338mm)を持ちつつも、スキーボードにおけるレールシステムのデメリットである板への影響を最大限解決しています。レールシステムはそのレールそのものを板に固定しますが、そのレールが影響して板が本来よりも硬く感じられるようになってしまいます。このモデルではその点を改善したため、レールシステムでありながら板の性能も犠牲にしない非常に優秀なビンディングとなっています。

 

このように、ビンディングによってそれぞれ異なった特徴があります。GRでご紹介、用意しているビンディングは全て軽量かつスキーボードに適したビンディングで、その重量なども比較して頂ければさほど差はありません。ちなみに今回手元になく比較できませんでしたが、解放式のレンタル用のビンディングのモデルは総重量が片足あたり2kgを超えるものが多く、軽量感はやや損なわれてしまいます。

 

「 重 さ 」

スキーボードのビンディングほど「重さ」を気にするものは無いでしょう。では、その重さのメリット、デメリットは何なのでしょうか?

重いビンディング

・メリット 重さがあるので安定感があり、剛性がある。余計な振動や挙動を吸収して適切に保持、解放が行える

・デメリット 操作感が重く感じて鈍い。足が疲れる。滑る用途以外には向かない。

軽いビンディング

・メリット 操作感が軽く、足元だけで板が操作できる。グラウンドトリックがしやすい

・デメリット 無用な挙動や振動を拾いやすく、足元が安定しにくい。高速時に不安定感を感じる

このようになります。スキーボードは軽さと言う部分で特に進化したため、滑りだけでなく頻繁に足を上げたりすることがあります。そういった場合重いビンディングは邪魔にしかならず、軽いビンディングが要求されています。長板などでは元々足を上げて滑るシチュエーションもほとんどないためビンディング自体の重さはデメリットになりにくく、むしろ重い方が安定感があって上級には好まれる傾向にあります。

足元の安定感があるというのは他にも意味があり、怪我などにおいては軽いビンディングよりも重いビンディングの方が安全性が高い傾向にあります。足元だけで操作しがちな軽いビンディングでは足をひねってしまう誤操作が多く、特に板も短いスキーボードでは顕著とも言えます。その点がスキーヤーにとってスキーボードを良しとしない理由の一つでもありますが、しかし重いビンディングは滑走スピードが高速化しやすく扱うには技術も必要になるため、怪我と言う部分においては実は大きく差が出ることは意外とありません。

むしろ「軽さ」においてメリットを見出して進化してきたスキーボードにおいて、重いビンディングしか選べないのはデメリットでもあります。しかし最近のフリースタイルスキーブームのおかげで生み出された超軽量ビンディングの登場で、スキーボードの世界も大きく変わろうとしています。スキーボーダーもビンディングを選ぶ時代が来たと言っても過言ではありません。

 

「 そ の 他 に つ い て 」

固定ビン、解放ビンにはそれぞれ機能があります。

<固定ビン>

履いたら外れませんが、その目的が単純な事から非常に軽量なものが多くあります。ブーツの大きさに対応する調整機能を持つものがほとんどで、多くのブーツに対して合わせることが可能になっています。スキーボードの普通では想定しえない動きにも十分対応でき、怪我の懸念はありますが有志による技術の検討や熟達、指導によって怪我も昔に比べて少なくなってきている。

4×4規格のものであれば自由に付け替えが可能で、固定ビンを一台持っていれば様々な板に付け替えて履く事が出来る(ただし自分で取付、調整したものは全て自己責任です)

<解放ビン>

有事の際に外れて怪我のリスクを軽減させてくれる(怪我そのものを防ぐものではない)。非常に多くの種類があり、自分の目的に合わせたものを選べる。基本的に取り付けてしまった場合は再度取り外して取り付けることが難しく、スキーボードの場合固定ビンのように複数枚所有してビンディングだけ付け替えて使用するのが難しい。コスト的にも固定ビンよりも高額なため、複数所有する場合にはデメリットになるが、怪我のリスクを考えた場合にはやはり固定ビンよりは圧倒的に安心感がある。取り付け、調整には基本的に認定された技術者に依頼するのがほとんどで、知識と経験が無ければ自ら取り付け、調整するのは避けた方が良い(この場合も自己責任になります)。

ビンディングにおいて最大の機能は「ブーツと板を繋ぐ」ことで、少なくとも怪我のリスクや今後を考えた時にはスキーボードであっても解放ビンを私は勧めます。固定ビンを選ぶ場合は何よりも「解放しない」という事を念頭に置いて、怪我などのリスクも含めて責任が取れる場合でないと安易におすすめすることは出来ません。

 

いずれにしてもその使用に関しては利用者の自由です。これまで選択する機会が無かったスキーボードのビンディングは、今、解放ビンも加えて多くのものを選べる時代になりました。今回違いという事で解説させて頂きましたが、こういった違いに対する知識も皆さんで共有して、よりスキーボードが発展していったらと願っています。

ビンディングによってスキーボードは新しい時代に突入しました。現時点で解放ビンが選べるのはGR板しかありませんが、この先いろいろなアイデアで楽しい板が生まれ、それぞれのユーザーが楽しんで選択してスキーボードを楽しんでもらえたらと思います。

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