前回(こちら)はスキーボードの各部の名称とその説明をさせて頂きました。今回はその続き、「キャンバー」と「ロッカー」、そして「フレックス」と「トーション」についてです。
という訳でまずはまたわかりにくい図を・・・
キャンバー、ロッカーは板に意図的につけられたたわみの事です。静止状態で置いておくとスキーの板の多くは反っていると思います。これがキャンバーです。ロッカーはキャンバー同様に元々つけられたチップの大きな反りなのですが、このロッカーの仕組みは近年のスキー業界ではトレンドとなっています。
これらの話をする前に必要なのが「有効接雪点長」です。図で示していますが、滑走時に雪面に触れるエッジの長さをそういうのですが、一般ではそのまま板を置いた時に板と雪が触れるノーズ、テールの点を「接雪点」と言います。多くの板は板の一番幅の広い箇所と接雪点はほぼ同じ位置になり、その位置関係によってターン性能などが大きく変わってきます。
先に説明の簡単なロッカーについて。ロッカーはこの接雪点を意図的に手前にし、それ以上前の部分を浮かせた構造になっています。これが何を意味するのかと言うと深雪やパウダースノー、荒れたゲレンデなどにおいてあらかじめノーズが浮き上がっているために自力でノーズを持ち上げるような動きや操作をすることなく、普通の滑りで足を取られる事無く滑走が出来ます。しかしロッカーが無いとノーズが雪に埋まってしまう為ノーズを浮かせるように板を引き上げなければならず、しかも後ろ気味に重心をかけて滑るので通常の滑りと違った操作が必要になります。(これが割と大変なのです)
つまり簡単に言うと、ロッカーのある板は整地されていない状況でも楽に滑れるメリットがあるのです。しかしデメリットもあり、構造的に有効接雪点長が本来の長さよりも短くなってしまいます。なので板としての安定性は同じ長さの普通の板に比べて不安定になりやすく、ターンを楽しむ滑りには向かない傾向にあります。最近だと意図的にごくわずかのロッカーを入れて扱いやすくした板も多く、従来のものよりより楽にターンが楽しめる板もありますが、極端なロッカー形状の板になればなるほどターン性能は落ち、普通のゲレンデでは扱いにくくなります。
ですが、パウダーなどのシチュエーションでこれに勝る構造は他にはありません。そして短く構造的に作りにくいスキーボードであってもこの構造を持った板もあります。
キャンバーはロッカーとは違いずいぶん昔からその構造として存在しています。これがあることで効率的にノーズやテールを雪面に押し付ける事が出来て、板のレスポンスも上がるからです。エッジを十分に使えば使うほどターンは安定して曲がることが出来るようになります。キャンバーの無い板だと足元のエッジしか雪面に押し付けることができなく、せっかく板の長さを利用することが出来ません。
キャンバーはその板の硬さ、ねじれの強さも大きくかかわってきます。これらを「フレックス」「トーション」と言います。
フレックスは板のたわみの強さの事です。フレックスが強い板ほど「硬い板」、弱い板は「柔らかい板」になります。トーションはねじれの強さで、最近の幅の広い板では非常に重要な部分となっています。
キャンバーのある板はフレックスの強さによってエッジに掛けられる力の強さ、板そのものの反応、レスポンスが変わってきます。一般に上級者ほどフレックスの強い板が好まれますが、反応性が高い板の方がさまざまなシチュエーションで使いこなせるといった意味があります。ですので初級者はあまり機敏な板よりもゆったりして優しい板、フレックスの弱い板の方が楽に滑れます。
トーションはいったい何に影響するかと言うと、弱ければ板はターン中にずれやすく、強ければエッジが立って切り込むように曲がれます。最近主流のカービングと呼ばれるずれないターンはトーションの利いた板でないと板がずれてしまってうまくカービングになりません。ですがカービングが必要でない滑りではトーションの利いた板はエッジが利きすぎて滑りにくく、曲がりにくくなります。
そしてトーションはそれ単体だけを硬くしたり柔らかくしたりすることがなかなか出来ません。板自体の硬さであるフレックスが大きく影響するためで、基本的にフレックスが強い板は、トーションも強くなる傾向にあります。メーカーは様々に工夫してこのバランスをとるために、板の構造としていろいろなパーツを取り付けたり凹凸をつけて表現しています。またトーションは幅の広い板ほど利きやすく、狭い板は影響が小さくなります。
これらのキャンバー、フレックス、トーションがうまくミックスされて様々な板が出来ています。同じ大きさ、太さの板でもこの3つが違うだけで全く別の板に感じられます。
ちなみにスキーボードでは板の幅が大きいためトーションが重要ですが、短いので一般的にはトーションは強めになってしまいます。ですのでメーカーは工夫してフレックスを柔らかくしてトーションも柔らかくする構造を優先して作っています。キャンバーもつけすぎるとエッジが利きすぎてしまうので緩やかのなものが多く、見た目に差異が感じられにくくなっています。
尚、グラウンドトリックを多用するスタイルの方であれば、トーションの強くないもの、キャンバーの緩やかなものが扱いやすくなります(ずらしやすくなるので)。滑走がメインの方ですと張りのあるフレックスが強めでキャンバーのしっかりついた板が良いでしょう(エッジが利かせやすく、反応性が良い)。
このようにこれらの言葉の意味と構造を理解すると自分が欲しい板の構造が何となくつかめると思います。
さて、キャンバーとロッカー、そしてフレックスとトーションですが、実際の所見た目では良くわからないのが実情です。乗ってみなければわからない、しかも体格や体重によっても印象が変わるために誰かが良いと言った板があんまり良くなかったり、自分の好きな板が他の人に好まれなかったりという事があります。ですが知っておくとより自分に合った板を選ぶことが出来るので、ただでさえ高価なスキー道具ですから後悔する事無く買う為にも知っておいて損は無いものだと思います。
以上、わかりにくい点もありますが構造の説明でした。