リムーバーをお勧めしにくい理由【補足】

スキーボードクリーニング(リムーバー編)にて触れていますが、リムーバーは安易に使うとデメリットがあり、お勧めしにくいものです。

元々リムーバーは溶剤によって板のワックスを溶かして除去するためのものです(Remove=>取り除く(和訳))。クリーニングではこの効果を利用し、ゴミや汚れをワックスと一緒に溶かして落としてしまうのがその効果です。

なお、溶かすと言ってもこれは滑走面自体には影響がなく、あくまでも溶かすのはワックスだけなのでその点は問題ありません。

滑走面に用いられる素材はポリエチレンなどの素材ですが、このポリエチレンが滑走面の素材として採用されているのにはいろいろ理由があります。それが耐寒性だったり耐水性だったりするのですが、プラスティック素材の一種であるために「劣化」と言う問題がどうしてもあります。

この劣化を緩和させる為にも必要なのがワックスなのですが、リムーバーで除去してしまうと保護するものが無く劣化しやすくなります。せっかくきれいにしたのに何もしなかったら滑走面が白っぽくなっていた・・・と言うのは、つまり簡単に言うと劣化なのです。

劣化してしまった滑走面は、もとの状態に比べて滑走性が悪くなります。こうなるとさらにゲレンデの微細なゴミをさらに拾い上げてより悪化し、それをまたリムーバーできれいにしても状況はあまり良くなりません。また、劣化してしまった滑走面はワックスが入りにくくなるため、こうなると滑走面の表面をごく薄く削り取って新しい面を出してあげなければならなくなります(サンディングと言います)。

サンディングは様々に道具も必要なので簡単な作業ではありません。おそらく経験者に頼むか、プロにお願いする他ないでしょう。

もし、リムーバーでのクリーニングの後にワックスを入れる事さえ怠らなければ最低限そのようにはなりません。ですがこの点を知らずにリムーバーを手に取ってしまったら・・・多くの方が陥る失敗になります。

 

では、ワックスさえ使えばリムーバーは問題なく使えるか?と言うと、そうでもありません。

 

もう一つのおすすめしにくい理由が、ホットワックスなどで滑走面を作っている場合にはリムーバーを多用するとせっかくの滑走面が壊れてしまう事があるからです。

ホットワックスはアイロンを使って数種類の温度の違うワックスを塗りこむ作業で、一般の方にはややハードルの高いメンテナンスです。ホットワックスで施工されている滑走面にリムーバーを使ってもワックスは溶けださないと考える方もいらっしゃいますが、私はそうは思いません。せっかく手間をかけて作った滑走面が一度のリムーバーで壊れてしまうのは大変もったいない事です。

なお、この「壊れた」という表現は物理的なものではなく、せっかく仕上げた状態の良い滑走面が状態が悪くなってしまうことの揶揄です。

それにホットワックスが出来るのであればそうリムーバーが必要になるシチュエーションは少なくなります。よっぽど汚れたか油まみれになったか、ワックスを丸ごと入れ替える必要が出てきたかくらいしか使わないでしょうし、一般作業としてのクリーニングはホットワックスクリーニングになるからです。

しかしホットワックスが出来ないとリムーバーは必要になるでしょう。そういう場合は出来るだけ動画で紹介したように作業できれば失敗も少なく、リムーバーの影響で滑走性も悪くなることは無いでしょう。

最後に巷によくある「リムーバー入りワックス」について。

これはクリーニングとワックスを同時に行ってくれる非常に優れたアイテムです。これであれば上記の問題は出てこないでしょう。しかし注意点としては、このタイプのワックスは塗布面が汚れやすいという点です。リムーバー入りワックスを使う際には簡単でも良いので滑走面をぬぐってから使うと良いでしょう。

【スキーボードメンテナンス】スキーボードクリーニング(リムーバー編)

スキーボードのクリーニング動画です。

今回はリムーバーを使ったスキーボードのソールのクリーニングを紹介しています。クリーニングワックス編は次回公開いたします。

*これらの紹介は参考としての一つの方法であり、効果などを保障するものではありません。ご自身で行う際には当方は責任を負いませんので一切を自己責任にてお願い致します。