ハヤシワックスの取り扱いを始めます

スキーボード専門ブランドとして、「専門」というからには、些細なことにも妥協ができません。

スキーにとってマテリアルは大事ですが、雪と一番最初に触れる「ワックス」は、見逃せないこだわりポイントです。

 

そんなこだわり。GRは国産ワックスメーカー「ハヤシワックス (https://hayashiwax.jp/)」様のワックスの利用と、取り扱いを始めます!

hayasirogo

 

 


 

スキーボードにとってワックスは、従来のセオリーが通用しない部分があります。それは板の長さゆえに面圧が長板やスノーボードよりも強く、同じコンディションでも板にかかる摩擦と抵抗が大きいことがその理由です。(詳しくは⇒ <こちら>)

なので何も知らないで普通に滑っていると徐々に板が摩擦で劣化してしまい、気持ちよく滑れない板になってしまいます。

 

ここで要求されるのが「保護性と耐久性」です。しかし高い保護性と耐久性を持つワックスは滑りを犠牲にしていたり、作業性が悪かったりします。

そこでGRが出会ったのが「ハヤシワックス」です。ハヤシワックスのその特徴は何といっても高い保護性と耐久性です。通常よりも硬いワックスながら滑りも犠牲にしない品質の高いワックスは、スキーボードにとって最も適したワックスと言っても過言ではありません。もともとスキーレースシーンで磨かれたワックスメーカーであることからその滑走性能は伊達ではなく、しかも「作業性も良い」のでスキーボードユーザーにとっても使いやすいワックスです。

さらに国産メーカーなので日本の雪に合っています。春先に問題になる悪雪、黄砂やPM2.5といった独特の国内事情まで考えて作られたハヤシワックスは使ってみると納得の性能を発揮します。

ちなみにGRでは取り扱いだけでなく、GR板に施されるプレチューン加工に使うワックスとしても採用します(※順次採用)。硬く保護性が高いハヤシワックスによって、これまで以上に納得できる品質のものを提供できるようになりました。

さて、そんなハヤシワックスですが、非常にたくさんの種類が用意されているなかからGRがスキーボード向けに適していると用意させて頂くのが、以下の商品です。

 


<ベースワックス>


NF01 NF02NF03

NF01_2NF02_2 NF03_2

まずはベースワックスです。このNFシリーズは高い耐久性を有しながらも扱いやすいベースワックスです。特にNF-02はベーシックに使いやすく広くおすすめできる商品です。

といいますか、ホビースキーやレジャースキーであればこのNFシリーズだけでも十分なワックス効果が得られます。それぞれクリーニング効果が高いNF-01、使い勝手の良いNF-02、保護性の高いNF-03とユーザーの使用用途にも組み込みやすいので、ワックス初心者にもわかりやすいベースワックスだと思います。

そしてこのNFシリーズは浸透性が高く、塗って人肌程度に冷めれば(※ワクシング後15分~30分程度浸透)もう剥がしても効果はあります!(※ただし本来の性能を十分発揮させるためには1日程度浸透させる必要があります。ご注意下さい。)

時間のないユーザーや、ワックスを剥がすのに不慣れな方でも扱いやすいというのが、このNFシリーズの特徴かと思います。

そして驚愕の耐久性と保護性を誇るNF-03は、今までいろいろなベースワックスを試しましたが、これほどまでに硬く、耐久性のあるワックスは他になかったと思います。かといって硬すぎてワックスを剥がす作業がしにくいのでは?と思われますが、塗ってすぐ剥がせるので思ったよりも剥がしやすいです。ベースバーンが起こりやすい板を使っている場合にこのNF-03は、板の性能を取り戻す良いワックスとなると期待できます。

 


<トップワックス(レーシングワックス)>


shf01 shf02 shf03

次におすすめするのがトップワックスのSHFシリーズです。このトップワックスはベースワックスであるNFシリーズとの相性はもちろんのこと、さらにフッ素に頼るだけでなく「NITRO」によって、さらなる滑走性を発揮します。

後術の商品でも紹介しますがこの「NITRO」が凄い!摩擦抵抗そのものを軽減させる効果があるため、フッ素による撥水性+摩擦低減で高い滑走性能を維持します。特に摩擦抵抗に影響が出やすいスキーボードでは効果が高いワックスになると思います。

本格的なレーシングワックスでありながら幅広い温度帯をカバーするのも魅力の一つです。一段階上の滑走感を得られるトップワックスとして、SHFシリーズは正にうってつけのワックスとなると思います。

ntr

そしてトップワックスの中でも異彩を放つのがのこNTRです。SHFに比べて3倍のNITROを配合したこのワックスは、スタートワックス並みの性能ながら耐久性があり、物理的に摩擦を緩和させるため春先の悪雪などに対して非常に高い性能を発揮します。

一般ではこういった製品に近いのが「グラファイトワックス」と呼ばれるもので、グラファイトはごみを寄せ付けないことで高い滑走性を維持しますが、しかし素材そのものが黒いため、デザインソールが多いスキーボードではそのせっかくの滑走面を黒く汚してしまいます。

しかしこのNTRは同等の性能がありながら滑走面を汚しません。そして高配合されたNITROによる滑走性は、面圧の高いスキーボードでは明らかな差となります。普段はベースのみ、春は+NTRという使い方ができるのも、このワックスが非常に優れたワックスだからできる技になります。

 


<リキッドワックス(スタートワックス)>


hplqd01(※容器の仕様が変更になります)

HP-LQDシリーズは3種ありますが、特にスキーボーダー向けにお勧めするのがこのWET用のリキッドワックスです。SHFやNTRでも対応しきれない水の浮いた春雪などのシーンでこのリキッドワックスは活躍します。非常に使い勝手がよく、あらかじめ塗るのも良いのですが、ゲレンデのコンディション変化でその場で塗布できるのが最大の魅力です。特に予想以上の高温で溶けた雪などで効果があり、その場で滑走面を拭って、そして数滴垂らして滑走面に塗り広げるだけで驚くほどの滑走性を取り戻すことが出来ます。さらに耐久性も従来のリキッドワックスに比べても高いので、これ一本あれば十分なほど使うことが出来ます。

もちろん本来の使い方である「スタートワックス」としても十分な効果を発揮します。

 


<オールラウンドワックス>


base270px top270px

ワックスいろいろあるけど…種類とか温度とかよくわからなくて…という方にお勧めなのがこれ!Blendsワックスです。

このワックスは「for Freerider」と商品に書かれている通り、フリーライド向けのオールラウンドなワックスです。まさにこれ一本でOKな性能。シーンを選ばず気軽に楽しみたいユーザーにとってもおすすめできるワックスです。(※Blendsトップワックスは必ずベースワックスが入っていることが前提でご利用下さい。本来の性能が発揮されません)

このワックスは簡単に「ベースワックス」と「トップワックス」の2種しかありません。基本はベースワックスのみで使ってもし滑りが悪ければ加えてトップワックスも使ってみる。というように、いろいろ考えずに使えます。さらにこのトップワックスは「生塗り」が可能。つまりベースワックスさえ入っていれば、ゲレンデでの気温上昇などの際に滑走面に直に生塗して滑走性を保つことが可能です。

※Blendsワックスはグラファイトが添加されていますので、滑走面に色が残ってしまう場合がございます。黒色の滑走面以外でのご使用の際には十分ご注意、ご理解の上ご使用ください。


以上の13製品をGRでは取り扱いさせて頂きます。もちろんこれ以外のハヤシワックス製品も対応可能ですので、もし気になる方はお問合せ下さい。

なお、販売はGRオンラインショップ(=> こちら )よりご注文下さい。商品によっては取り寄せとなるものもございますので、あらかじめご承知願います。

 

スキーボードにおけるワックスと摩擦について

注:ここで紹介している方法を参考にする場合、必ず自己責任において行って下さい。特にワックスの扱いを間違った場合、板に対する深刻なダメージを負わせるだけでなく、火傷などの怪我を負いかねません。十分使用方法に注意し作業を行って下さい。

スキーボード(ファンスキー)を長く楽しんでいると、ワックスというのが気になり始めます。

ワックスはスキーの滑走面に塗ることで滑走性を良くしてくれる大事なものです。そのワックスはいろいろあって、簡易的な缶に入っているスプレーワックスから本格的なアイロンを使うホットワックスと、なかなか奥が深いものです。

とはいえホビースキーヤーやレジャースキーヤーが多く、競技でのスキーもほとんどないスキーボードでは、実際のところワックスの重要性があまり理解されてません。

そんなあなたに今回「スキーボードのワックス」について解説したいと思います。


スキーは雪の上を滑ります。(※鉄の上や塩ビの上で滑る人もいますがそれは置いておいて…)

ここで問題になるのが「摩擦」です。あんなにツルツル滑る雪の上でも摩擦はあります。雪の上では雪の状態は汚れ具合によって摩擦が変化するので、いつも同じコンディションで滑るのは案外大変です。摩擦が0に近ければ多少摩擦が大きくなっても気になりませんが、大きくなればなるほど板が引っかかるような、足元が引っかかるような感覚を覚えますし、ともすれば板が全く滑らなくなることもあります。こうなると気持ちよく滑れないどころか、けがをしてしまう事すらあります。

この摩擦の影響を可能な限り0に近づけるのがワックスの役割なのですが、一般のワックス理論のままで考えると実はスキーボードの場合通用しないことがあります。それはスキーボードが短いということです。

ちょっと専門的にはなりますが、「面圧」というものがあります。面圧は1cm×1cmあたりにどれくらいの力がかかっているか?というものです。一般のスキーやボードに比べてスキーボードの面圧がどうなのか?と簡単に比較すると次のようになります。


ユーザーの体重が72kg(=72000g)だとして

スキー(165cmの一般的なアルペンスキー)

滑走面面積:1237.5×2=2475㎠ 面圧:29.1g/㎠

スノーボード(150cmの一般的なスノーボード)

滑走面面積:3750㎠ 面圧:19.2g/㎠

スキーボード(99.9cmの一般的なスキーボード)

滑走面面積:799.2×2=1598.4㎠ 面圧:45.0g/㎠


これらは非常に簡単に計算してはいますが、スキーに比べスキーボードの面圧は約1.5倍、スノーボードと比べると2.4倍も強いのがスキーボードです。

そして摩擦は押し付ける力(=面圧)に比例するため、スキーボードは元々摩擦が生じやすい板というのが数字で分かります。

実際は板のしなりや硬さ、様々な要因があるのでこの通りではありませんが、「スキーボードはスキーなどよりも1.5倍以上の面圧と摩擦がある」という点のみざっくり理解して頂くと理解しやすくなると思います。

雪と滑走面との摩擦はごく小さいものですが、わずかでも摩擦があれば熱が発生し、滑走面はごくわずかずつ削られます。アイスバーンの多いゲレンデや人工雪のゲレンデででは雪の結晶が硬く尖った粒子になっていたりするために摩擦だけでなく滑走面がやすりのように削られます。スキーボードはこういう状況でも1.5倍以上影響を受けやすい…と捉えてもらっても良いかもしれません。

ここで話題がちょっと逸れますが、皆さんはベースバーン(滑走面焼け)についてはどのように理解していますか?

ベースバーンはよく「板が焼けた!」などと言われます。滑った後滑走面が白く変色しているアレです。

kimg0857この写真を見ると、ところどころ白く変色しているのが分かると思います。これがいわゆる「焼けた!」ということですが、実際はベースバーンとは別に滑走面がごく薄く削られて毛羽立つ「毛羽立ち」というのもあります。

ベースバーンは摩擦による熱などで滑走面の素材が変質し、傷んでしまっている状態です。毛羽立ちはその前段階の状態、摩擦で細かくやすられてザラザラになっている状態です。

毛羽立ってしまうとゲレンデでは余計に摩擦がひどくなって滑りはどんどん劣化します。このままの状態で使い続けると毛羽立ちが摩擦だけでなくゲレンデのごみや汚れ、油などを掻き込んでしまい、ますます滑りは悪くなります。ワックスも浸透しにくくなるので保護性も失われますし、あまり良い状態ではありません。

pic_1202これが末期的に酷くなると…右写真のような状態にまでなります。こうなるともはやゲレンデを上に向かって上ることすらできます。

こうなると専門のチューンを頼んで板を直さない限り、元の滑走性は得られません。

 

なんでこうなる・・・それはスキーボードが面圧が高いからです。普通のスキーよりも摩擦が大きいスキーボードはそのまま使い続けると単純にスキーなどよりも1.5倍以上早く劣化が進みます。スキーボーダーなら多くの人が苦手とする春雪のスキーでは、ゲレンデの汚れもあってスキーボードでは引っかかるような滑りで四苦八苦した方も多いと思います。

これを解決するには摩擦を低減して毛羽立ちを抑えること。なのですが、普通のスキーやスノーボードのセオリー通りにワックスを使ってもスキーボードの場合「足りない」んです。


一般のワックスはスキーなどで快適に滑れるように作られています。なのでワックスにもいろいろあって硬さなど選べるのですが、その通りに使ってもスキーボードでは思ったような効果を得られないことがよくあります。これはひとえに面圧が高くて摩擦が大きいからです。

これを軽減するには硬いワックスを使うのが最も効果的です。硬いワックスは滑走面の保護性を向上させるだけでなく、毛羽立ちも抑えてくれます。硬いワックスとはマイナス10度くらいでの使用を勧められる低温度用のワックスです。低温度では先に書いている通り氷自体の攻撃性が強くなり、長い板であっても強い摩擦を受けて滑走面が劣化します。なのでこの温度帯のワックスは保護性を重視して作られています。

スキーボードではむしろこの温度帯のワックスを優先的に使うべきなのです。すると滑走面が劣化しにくくなり、高い滑走性を保ちやすくなります。さらにベースバーンの軽減にもつながるので、結果的に板は長持ちします。

私個人の見解では、スキーボードではメーカー推奨の一段階硬いものを選ぶと効果があると見ています。なおGR板ではプレチューン時点で非常に硬いワックスを施工し、最低限滑走面の劣化が起こらないように工夫しています。(※ただし数回の使用でワックスが落ちるので、定期的にワックスを入れなければ劣化します)

もし最初からワックスが入っていないと・・・スキーボードはあっという間に劣化して「かんじき」のようになってしまうでしょう。


こういった事柄に対して素材で軽減することもできます。高級な板などに使用されるシンタードベースと呼ばれる硬い滑走面は元々摩擦抵抗が小さいので、一般のものよりも劣化しにくくなっています。しかしシンタードを採用するスキーボードはあまりなく、あっても非常に高価な板です。(※シンタードベース自体が高いため)

むしろ低価格を要求されるスキーボードでは、ワックスすら入りにくいPEベースと呼ばれる廉価な滑走面が採用されることも少なくありません。この滑走面は柔らかく傷つきやすいため、ワックスを入れていてもすぐに毛羽立ち、ベースバーンが起こってしまいます。

GRでは価格と性能を鑑みてその中間に位置するエクストリューデッドベースを採用しています。特にGRのものはワックスが入りやすく、メンテがしやすいものを選んでいます。


と、滑走面の素材は仕方ないところもありますが、ワックスは誰でも容易に選べますし対策ができます。そしてそのコツとして、GRでは「硬いワックスを選んで使用する」ことをおすすめします。もし経験が少なく、オールラウンドワックスやスプレーワックスに頼っている場合でも、定期的に板をクリーニングして最低限ごみや汚れが付着したままにしないだけでも、驚くほど滑走性は持たせることが出来ます。

※ちなみに板のクリーニング方法については動画で解説しています。

この「クリーニング」と「硬いワックスを使う」事が、スキーボードならではのワックスのコツだと思います。できるだけ摩擦を低減させるようなワクシングこそが、スキーボードで気持ちよく滑るためのコツとも言えるでしょう。これが一般のワックス理論では足りないスキーボードならではの部分なのです。

しかし、問題もあります。硬いワックスは施工がしにくく、高い温度でアイロンを使うためにアイロンの熱によって滑走面を痛めてしまうことがあるという事です。硬いワックスはその多くがアイロン設定温度が140度以上です。慣れないユーザーが扱うにはちょっと怖い温度です。

こればかりは慣れとコツをつかんでいただく他ないのですが、もし経験を積むのであればベース作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?ベース作りとは、シーズン前に数回から数十回いろいろなワックスを入れて滑走面に十分なワックスを浸透させておくチューンナップです。

一般的なベース作りの方法は

1 板をクリーニングする(初回のみ)

2 高温度用ワックス(0度以上に対応するワックス)を入れる⇒浸透させる⇒剥がす

3 中温度用ワックス(-2~-8度くらいに対応するワックス)を入れる⇒浸透させる⇒剥がす

4 低温度用ワックス(-10度以下に対応するワックス)を入れる⇒浸透させる⇒剥がす

5 2~4の工程を1~3回以上繰り返す。

このようになります。シーズン前の暇な時にでもワックスを入れて剥がす、というのを繰り返すだけなので夏くらいから作業を始めるとシーズンにはとても良い滑走面が仕上がります。

ポイントとしては「ベース用ワックス」を使うこと(※フッ素などの添加剤が入っているものはNGです)、同じメーカーのワックスを使うこと、浸透には一日程度放置して剥がすこと。くらいで、さほど難しい事はありません。それに加えてアイロンにも慣れますし、徐々に温度が上がっていくので作業の程度がつかみやすいと思います。

ワックスは滑走面の上で溶けただけで滑走面に浸透します。アイロンペーパーを使い、滑走面の上でワックスを溶かすだけ、と思ってささっと使うと失敗を防げます。慣れないうちはちょっと多めに使うのもコツです、もったいない気もしますが、板を焼くよりはずっとましです。滑走面の上で多少解けない感じがあっても慣れるまではそれでOK、ワックスは思ったよりもあっさり浸透するものです。

ワックスを剥がすのも大変ですがシーズン前なら時間を気にせずじっくりできますし、そのうちやり方のコツも掴めます。(ワックスを剥がすコツはスクレーパーで剥がす際にしっかり剥がすことです)

ベースがしっかりできている板はそれだけで保護性が高く、焼けにくくなります。硬いワックスも入っていますから新たなスキーボードのワックスのセオリーにも合いますし、ベースがしっかりできている滑走面は追加のワックスもしっかり浸透しますし、いいことづくめです。

ワックスについては当サイト内でも何度か繰り返して解説を行っております。興味のある方はサイト内のタグから「ワックス」を選んでいただけると、過去の記事や動画を参照することが出来ます。


 

最後に、GRではそんなスキーボードに最適なワックスの取り扱いを今シーズンより始めます。レースシーンから生み出される性能はもちろん、保護性、作業性に優れた国産ワックスメーカーのワックスです!

ハヤシワックスについては ⇒ <こちら>(リンクは後日繋がります。しばらくお待ち下さい)


以上、ワックスと摩擦について解説してみました。ちょっと難しい話もありましたが、この情報が皆さんのスキボライフに少しでも良い情報となれば幸いです。

 

スキーボードの夏チューンナップ

夏も暑いさなかですが、愛板の調子はいかがですか?チューンナップはされてますか?

 

…調子と言っても雪もない今はあまり関係ない?

 

実は、夏ってチューンナップにはとても良い時期なんですよ。

DSC06425_R<夏がチューンナップに向いてる訳 その1>

夏は暑いです。この暑さが実はポイント。スキーの滑走面にしっかりとワックスを浸透させる場合、できるだけゆっくり冷えるようにしてあげるとその分ワックスも浸透してくれます。冬にやる場合は室温を20度程度に温めて行いますが、室温が高い夏ならば特に加温しなくとも浸透を高める事ができます。

そしてよく浸透したワックスは滑っても耐久性があり、板も十分保護されます。良いことづくめですね。

 

<夏がチューンナップに向いてる訳 その2>

上の理由に近いのですが、ワックスを浸透させるもう一つのコツに「板を温める」というのがあります。板が冷たいといくら室温が高くとも浸透しにくくなるのですが、暑い夏は板も十分温められている状態に近いので、特に保護性を期待できる硬いワックスなどを浸透させやすくなります。

硬いワックスは板を長持ちさせるためには大事なワックスなので、少しでも浸透させた方がやはりメリットはあります。

 

<夏がチューンナップに向いている訳 その3>

夏は湿気が高いため、案外この時期に板の錆びが進行してしまうということはよくあります。ですが、逆にこの時期にメンテナンスして錆を落としておくことで、エッジの錆を進行させずに済ませることができます。エッジの錆はいわゆる癌と同じようなもので初期的なら簡単に落とせますが、進行してしまうとエッジ剥がれの原因となる場合もあります。特にノーメンテでシーズンオフしてしまうとかなり錆が進行している場合もあるので、夏の間に落としておくのも必要です。

 

<夏がチューンナップに向いている訳 その4>

夏は十分時間があります。案外冬にチューンナップやメンテナンスを行っても時間が足りないことがあり、不完全なメンテで使うこともままあります。夏なら十分時間があるのでゆっくり丹念にチューンナップやメンテナンスを行う事が出来、万全の仕上がりでシーズンインを迎えることができます。

 

<夏がチューンナップに向いている訳 その5>

自分でチューンもメンテもできない!という方の場合はショップにチューンの依頼をされると思います。その場合、多くのショップは夏は比較的リースナブルな料金で行ってくれます。シーズン中だと注文の多いためチューンに預けても時間がかかることも多く、料金も正規の料金となることがほとんどです。また、スキーボードの場合短いがゆえに受付てくれないショップもあるので、余裕のある夏の方が預けられるショップを探すのにも向いているということもあります。

 

と、このような理由があります。12月にシーズンインと考えてもあと4か月、ゆっくりできる今だからこそのチューンナップも「アリ」だと思います。

 

なお、GR ski lifeでもチューンナップを受け付けています。スキーボードはメーカー、ブランドに限らずお預かりしますし、やや料金は割増となりますが長板のチューンも行います。(スノーボードは申し訳ないのですができません)

そしてこの記事を読んでくれた方にサービス!注文時に「記事を読んだ」とご記入頂いてご注文頂ければ、ベースチューン、リフレッシュチューンの料金からそれぞれ1000円引きにてお受けいたします(チューン割引券との併用はできません、このサービスの適応は平成27年8月31日受付分までです)。

GRのチューンナップについては<<こちら>

 

この夏にしっかりチューンナップして、ぜひ楽しいシーズンインを迎えましょう!

ダリングとダリングマーク

 

 

 

 

KIMG0416

*以下の作業はご自身の責任において行って下さい。性能向上の保証となるものではなく、間違った加工を行った場合、その復旧には実費が必要となる場合があります

「ダリング」と言う作業をご存知でしょうか?

「ダリング」は板のエッジを意図的に削り落とし、エッジが無用に引っかからないように行う「加工」です。

具体的にはエッジの両端に近い部分を数センチ、紙やすりなどでわずかに削り落とすだけの難しい作業ではありません。しかし一般的ではないし、簡単に出来る作業ではないのです。

と言うのも、どこまでエッジを落とすかで板の乗り味がかなり変わるだけでなく、削り過ぎ等加工に失敗した場合、簡単には元に戻せないからです。元に戻す場合は専用の道具を使ってエッジを削って復活させる以外に方法は無く、その作業は経験者でないと難しい作業です。

これらの問題があって一般でもあまり耳にしませんが、しかし重要な作業です。特に買ったばかりの板はスキーボードに限らずなんでも同じですがエッジが端から端まで立っていて、そのまま使うとエッジが引っかかって乗りにくいです。(*一部加工済みで売られている商品もあります)

特に問題になるのがスキーボードで、板が短いスキーボードはエッジの影響を受けやすく、他の長板などに比べてダリングの必要性が高いものです。

 

実は、このエッジが引っかかるというのがスキーボード(ファンスキー)が廃れた理由の一つだったりします

 

試しに滑ってみたらエッジが引っかかって滑りにくい。そうなればやめてしまうのは当然です。ならば最初からダリング処理を行っておけば?と思うのですが、ダリングは手作業で手間のかかるものなのです。

しかし、GR板は全てダリングしてあります。これは上記の問題を解決するためのもので、プレチューン作業に含まれて行われています。

ダリング

GRの板はそれぞれ「ダリングマーク」が示されており(写真の▲マーク)、そこから外側に約2cmの個所から先をダリングしてあります(やすりでエッジを落としている)

これはプレチューン動画内でもご紹介していますが、この加工があるのでGR板は最初からエッジがひっかかって滑りにくい!と言う問題が少なくとも解決されています。

もし、これでもエッジが引っかかるようでしたら、このダリングマークを基準に少しずつ紙やすりでエッジを落としてあげるとより好みの感覚になります。ダリングマークの位置より外側であれば比較的安全に調整が可能ですし、見た目の目印にもなるので失敗が減らせます。

なお、ダリングでエッジを落とす場合、紙やすりでわずかにエッジを丸める程度で十分効果があります。(*削り過ぎて失敗した場合は簡単には戻せないのでその点は十分注意して、自身の責任において行って下さい)金属製のやすり(ファイル)では経験が無い限り失敗しやすく、おすすめしません。また、雪質、状況でエッジのかかり方は変わります。必ず「簡単には戻せない」ことを確認してから行って下さい。

どのような雪質、状況でもエッジが引っかかる感覚があるのならばダリング加工は必要になります。そのときはエッジを丸める大きさを少しずつ調整したり、ダリングの範囲を少しずつ調整すると失敗は少なくなります。

 

この「ダリング」ついてもっと詳しい説明が必要な方はさらに下へ読み進めて下さい。(専門的なのでわかりにくい点が多々あります)

という訳でここから先はダリングの解説、ハードモードです。

ダリングの目的はつまり「トーションのコントロール」になります。

ターン中トーション板の各部の名称

ターン中にトーションを支えるのはだいたいダリングマークの個所、板をそのまま置いた時に雪と触れる「接雪点」が基準となります。この点がしっかりエッジが効いていればターンした時にエッジがたわみを支え、横滑りする事無くターンすることが出来ます。

この「トーション」「横滑り」をコントロールするのがダリングの最大の意図です。エッジが引っかかると感じるのはつまりこの接雪点のエッジがずれない事が大きく影響していて、トーションが強ければ強いほどエッジはしっかり効きますが、しばしば効きすぎることにもなります。

これがトーションが弱い板であれば影響は小さくなります。トーションがねじれて力が逃げることでエッジングが弱まるので、結果ダリングが必要なくなる場合もあります。しかしトーションが効きやすい板はこの影響を大きく受けます。短いスキーボードが他に比べて影響を受けやすいのはこれが原因で、結果「スキボ乗りにくい」の悪いイメージの一因になっています。

さらに、サイドカーブの強いスキーボードでは他に比べてエッジにより板がキョロキョロとブレやすい特徴があります。現在のスキー板のサイドカーブが18~28mが主流に対して、スキーボードは6~10mとかなりきついサイドカーブを持っています。したがってわずかでも傾けばエッジが効いて板が回り始め、すれが不快感に繋がります。

これを解決するには「エッジの引っ掛かりをコントロールする」ことが重要で、結果ダリングが重要になります。ターンした場合に一番初めに影響を及ぼす接雪点上のエッジを丸めてエッジングを抑える事でずらしやすくし、サイドカーブの影響も低減させられます。大きくターンする場合はエッジを丸めたと言っても食いつくのでトーションを支える事が出来ます。

しかし「失敗」してしまうとどうなるか。ダリングは意図的に滑走に使えるエッジの長さを変えるので、やればやるほど短くなります。するとエッジが必要な「ターン」や「制動」に大きく影響してしまい、曲がれない、止まれない不安定な板になってしまいます。しかもエッジを削った場合、直すためにはサイドエッジを削って治すしか方法が無く、そのためには専用の道具と専門の技術、そして実費が必要になります。

なお、ダリングのように有効エッジ長を減らさない方法でエッジの利きをコントロールする方法もあります。それは「ビベル」と言う加工ですが、これはサイドエッジを削るよりもはるかに難しい作業なので一般的ではありません。

そこでGR板では「ダリングマーク」を用意しました。ダリングマークは接雪点を基準にGRで独自に適切な箇所を検討して示してあります。出荷時はこのダリングマークからそれぞれ約2cm、指一本分外側までをしっかりダリングしてあります。一般であればこの調整で不快感を持たず、板の性能も発揮される設定になっています。

ですが、エッジの効き方は雪質や環境によって大きく変わります。良く行くゲレンデが雪の豊富なゲレンデであればあまり感じませんが、良くしまった雪ではエッジが効きやすく感じられます。そういったここのシチュエーションに対応する場合、このダリングマークを目安に加工を行うと調整しやすくなります。ダリングではどうしても「どこまで削ったら良いのか?」が分かりませんが、あらかじめ示しておくことで作業を簡単にし、失敗を少なくしています。

このような意図がありGR板ではダリングマークを用意し、プレチューンでダリングを行っています。すべての方において快適なものにはなりませんが、最低限不快感は持たずに滑ることが出来ると考えて行っています。

そしてくれぐれもご自身で調整する場合は「失敗したら簡単に戻せない」という事を念頭に置いて加工して下さい。少しでも板がお好みの感覚になれば幸いです。

 

 

 

ワックスの種類について

前回 <こちら> にてスキーとワックスについて解説しました。(まだご覧になっていない方は一度ご覧ください)

非常にわかりにくい話ですが、今回はさらに踏み込んだ解説をしたいと思います。

DSC06473_R

前回、スキーとワックスの関係を解説しましたが、その中で「ワックスには種類がある」と言いました。その種類について解説します。ワックスの種類

(上記 A-EはAが最も優れている、Eが最も効果が期待できない。 S-HはSが柔らかい Mがふつう Hが硬いの意です)

このように種類があります。(表は一般的なワックスの参考です)

これらを使い分けるのがワックスのむずかしさであり醍醐味ですが、まず基本としてこのような関係があります。使う基準として気温や雪温が示されていますが実は単純にそれらの温度帯に合わせるだけでなく、使うシチュエーションに合わせてワックスを選ばなければ、逆にワックスが滑走性を悪くすることもあります。

たとえば人工雪のスキー場。人工雪は天然に比べて結晶が硬く、板が傷つきやすい傾向にあります。ですのでベースとしては保護性の硬いワックスが入っていないと後で残念なことになります。また、黄砂の舞う春先はこの黄砂やゴミが摩擦となって滑走性の邪魔になるので、暖かい時期ではありますが低温用のワックスが必要になります。

しかし保護性ばかり見ていると滑走性が悪くなる事もあります。これは「硬いワックスが入っていると柔らかいワックスが入りにくい」と言う特徴にもよる事で、板の撥水性が損なわれて雪が少しでも解けると滑りにくくなる板になったりもします。

したがってベースの作り方にコツが生まれてきます。ベースワックスは一般的に柔らかいものから順に硬いワックスを入れます。こうして作ったベースは滑走性も持ちつつ保護性も持たせたオールラウンドな板に仕上がります。これが面倒な場合は「オールラウンド用」の幅広いシチュエーションで使えるベースワックスを使う方法もありますが、多くはやや保護性にかけるので個人的には硬いワックスと組み合わせると良いと考えています。

こうして作り上げた滑走面は十分に浸透した皮膜層ができており、高い滑走性を維持することが出来ます。が、この皮膜層は滑るほど失われるため、適時ベースワックスを塗って維持する必要もあります。これは一見面倒ですが、一度ベースを作ってしまえば作業自体は割と簡単になります。こうして十分浸透した皮膜層を作り、維持していくことを「滑走面を育てる」と表現したりします。

ここで注意なのですが、ワックスは「それそのものは滑らない」と言う事です。

DSC06479_R 余分なワックスを削り取る各種ブラシ

スキーで滑る際に必要なのは「ワックスが浸透した滑走面」であって、その上に残るワックスは余分なものです。ですので、ワックス作業では必ずワックスをはがし取る必要があります。

この作業を「ブラッシング」と言いますが、ブラッシングの意味はもう一つあり、ストラクチャーと呼ばれる滑走面の微細な排水の為の傷のワックスをはがし取る意味もあります。

ストラクチャーは滑走面をよく見るとわかりますが、非常に微細に細かく傷がついているのがわかると思います。この傷が非常に大切で、滑る上で邪魔な「水」を効果的に排水してくれます。水はまとわりつく性質があり、滑走性に悪影響を及ぼします(表面張力、ゲレンデにできた水たまりに入った事がある人はわかると思います)。それを軽減してくれる構造が「ストラクチャー」です。ストラクチャーを失った滑走面はいくら育ててもなかなか滑走性が上がりません。(濡れた机に下敷きを置き、しっかりと押さえつけてから横に滑らそうとしてもなかなか滑りません。同じ現象が雪の上でも起こります)

かといって過度にストラクチャーを付けてしまうとそれそのものが滑走性を悪くする場合もあります。ストラクチャーは難しいので細かい説明は省きますが、安易にストラクチャーはいじれるものではありません。

話はそれましたがワックスが塗られるとこのストラクチャーはもれなく埋まってしまいます。ですのでブラッシングによってストラクチャーの中のワックスもはがし取る事でより滑走性を高めます。ワックスは必要なのにワックス自体は必要ない、少し矛盾な感じもしますね。

ですが「ワックスが浸透している滑走面が滑る」と覚えれば、理解しやすくなると思います。

なお、滑走面のワックスをすべて剥がし取るのは非常に大変です。慣れないうちはこの作業でかなり苦労すると思います。


これまで「滑走面とベースワックス」について着目して解説してましたが、次に「滑走ワックス」についてです。

滑走ワックスは滑走性を高めることを主眼としており、ベースワックスとの一番大きな違いは添加剤が加えられている事です。この添加剤は多くは「フッ素」で、他にグラファイトと呼ばれる炭素化合物や、ガリウムなどもあります。これらの添加物は水弾きに作用したり、静電気に作用したりと様々です。

ですが一番の大きな目的は「水やゴミを滑走面に近づけない」事です。それによって安定した滑走性を発揮させるのが「滑走ワックス」です。

この滑走ワックスは基本的にベースワックスの上から使います。さらに滑走ワックスは滑るシチュエーションを良く検討した上で使うのが理想です。これは単純に滑走ワックスが高額であるのと、耐久性がベースワックスより劣るからです。しっかり状況にあった滑走ワックスを使わなければその効果は発揮されず、しかも一日滑れば滑走ワックスはだいたい剥がれ落ちてしまいます。

となると「浸透させればいいじゃない?」と考えますが、滑走ワックスに含まれる添加物はそのごく表面に効果を発揮します。浸透させてしまってもそれらの添加物は何も効果はありませんし、値段もかなり高い滑走ワックスなのでわざわざ頑張って浸透させるメリットはありません。

滑走ワックスイメージ 青が滑走面 黄色がワックス 黒点が添加物

図はイメージですが、このように捉えて頂ければ想像しやすいと思います。この表面に付着した添加物により、高い滑走性を発揮するのが滑走ワックスの役割です。特にフッ素は水に対して効果が高いので春雪などの水分が多い時期に用いると一日気持ちよく滑れる事でしょう。

滑走ワックスはこのような原理がありますが、実はレジャースキーであればそこまで必要なものでもありません。タイムを争う競技スキーでは避けて通れない部分ですが、タイムよりも快感を重視するスキーの場合、一日通して滑走性が保てるという事の方が重要です。

ですので敢えて滑走ワックスを使うよりも、ベースワックスをしっかり使って良いベースを作る事の方が重要です。コスト的にも滑走ワックスは高額なので、ベースワックスの扱いに慣れてから使い始める方が良いと思います。

私もたまに使いますが、毎回使う訳ではありません。あらかじめシチュエーション的に「必要だな」と思う時以外はあまり使いませんし、後述の液体ワックスなどを活用してピンポイントで滑走性を維持する方法でスキーを楽しんでいます。パウダーや雨のスキー、初めて訪れるスキー場など滑走ワックスがその効果を発揮するのは、そういった必要である状況が見えた時に使うようにしています。

この他に液体ワックスや、それを使いやすくしたスプレーワックスがありますが、原理的には滑走ワックスに近いものと捉えてしまって構いません。ですので一時的な滑走性は良いのですが、残念ながらその効果は一日、状況では半日も持たないものもあります。スプレーワックスを使う場合でも、最低限あらかじめベースワックスが浸透している滑走面を作っておいた方がより効果は長持ちします。

また、液体ワックスなどは一時的に浸透させるためにコルクなどでこすりあげる必要があります。これが実は結構大変な作業で、アイロンを使ったワックス作業が出来ればやりたくないと思うような作業です。ちなみにコルクでこすらずそのまま使った場合、最悪たった一本滑っただけでワックスが剥がれ落ちてしまう事もあります。

と、ここまではパラフィンが主成分となるワックスについて説明しました。しかし最近では「非ワックス系」というものも存在します。有名なのはザードスのノットワックスですね。

DSC06486_R

このタイプは滑走面の表面にフッ素などの被膜を作り滑走性を保ちます。原理的にはテフロンコートのフライパンに近いです。ですので適切に使うと驚くべき効果を発揮し、しかも効果も滑走ワックスなどよりも長く体感できます。特に春雪には非常に効果が高く、扱いも手軽です。

ですが、根本的に「保護性」を無視しているのでこれもできれば保護性の高い硬いベースワックスで滑走面を作った後に使った方が良いです。実際にワックスに添加された状態のものもありますし、ワックスとの併用も推奨されています。

正直なところ、本当に効果が高いのでワックスに不慣れな方にはおすすめできるものでもあります。私も緊急用にいつも携帯しています。

最後にクリーニングワックスですが、クリーニングワックスは極力添加物や不純物のない、扱いやすいパラフィンでできています。よってその保護性や滑走性はあまり期待できませんが、滑走面をきれいにするためには非常に有用です。

これは、クリーニングワックスを滑走面に溶かし込むと滑走面の奥からゴミやほこり、油などを浮かし出してくれるからです。ですからクリーニングワックスは浸透させる目的もないので使う場合は滑走面に溶かしたら軽く固まるのを待ち、すぐに剥がし取ってしまいます。手間はかかりますがかなり滑走面をきれいにすることが出来ます。

 

このようにワックスの種類について説明させて頂きました。私の主観によるものもありますが、概ね把握して頂ければこれからのメンテナンスに生かせる情報にはなると思います。

ワックスは始めるのが少し大変ですが、出来るようになるとゲレンデで一日気持ちよく滑れるようにもなります。実際の施工方法はまた別の機会に説明させて頂きますが、この機会に始めてみてはいかがでしょうか?

スキーとワックスの関係について

DSC06464_R

(注)非常に長く理解しにくいかもしれません。あしからず。

スキーボードもスキーもスノボも、その板は雪の上で滑ります。なので、ほとんどの板は雪に対して滑りやすい素材を滑走面に採用しています。

この素材は簡単に言えば「ポリエチレン」でできています。数ある素材の中でポリエチレンが採用されたのはマイナス以下の温度に対して変質が少ないのと加工が容易なこと、そしてワックスとの相性が良いことが大きく採用されている理由です。そのポリエチレンの種類として専門用語的に「エクストリューテッドベース」「シンタードベース」などがあります。

このポリエチレンはワックスと共に使うと非常に強力に滑走性を高めることが出来ます。この原理は様々あるのですが大まかに

・水が張り付く事で損なわれる滑走性を軽減できる(表面張力による滑走性の低減)

・氷が傷つける事で損なわれる滑走性を軽減できる(摩擦力による滑走性の低減)

と、似て非なる二つの要因に対して有効なのがこの組み合わせなのです。


水は0℃で凍ります。凍った水の結晶が積もった状態が雪なのですが、この上を滑るからこそ難しい問題があります。それは雪がさまざまな状況で多様にその状況を変化させてしまう事。なので、滑走面として適切なのは一つのシチュエーションで優れた効果を持つものよりも、多様なシチュエーションに合わせて柔軟に対応できる素材である。という事です。

気温が0℃程度の時の雪はすぐに解けます。滑ると雪と滑走面の間に水がまとわりつき、滑りが悪くなります。そこで滑走面に撥水性を持たせれば水をはじき、滑走性を維持できます。

気温が非常に寒いマイナス10度の時は雪は硬く凍ります。その硬い結晶はやすりのように滑走面を削り、滑走性が悪くなります。そこで滑走面に削れにくい能力を持たせれば、滑走性を維持できます。

この二つの仕組みを滑走面に与えられるのが「ワックス」なのです。ワックスのその成分は「パラフィン」で、簡単に言うとロウソクのロウと同じ成分です。このパラフィンに様々な添加物を与えたり、そのものに工夫をすることで大変多くの種類のワックスが生み出されています。

DSC06473_R 例 写真はSWIX社などのもの。ワックスとその種類

簡単には、ワックスは気温によってその種類が分けられています。

・溶けやすい雪に対して撥水性を重視したもの(高温度用、写真では黄色のワックス)

・硬く傷つける雪に対して保護性を重視したもの(低温度用、写真では青いワックス)

・その中間となる1~3種類のもの(中温度用、写真では赤いワックス)

が多くのワックスメーカーで用意されています。さらに幅広いシチュエーションに対応できる「オールラウンド用」と、滑走面のクリーニング目的で使う「クリーニング用」があります。さらにその用途で「ベース用」「滑走用」などがありますが、今回はその説明は割愛します。

雪の状況に合わせて滑走面にワックスを塗る事で多様なシチュエーションに合わせて滑走性を維持できるのが、このポチエチレン+ワックスの最大の強みです。だからこそ一般のユーザーにはわかりにくい悩みが同時に存在しています。

それは「どのワックスをどのように使うか」

という事です。


ワックスの塗られていないポリエチレンのみの滑走面は、初期的には滑りますがどんどんその滑りは劣化していきます。ポリエチレンは低温や高温に強い反面、劣化しやすい性質があるからです。スキーではこれを「滑走面が酸化する」「滑走面が焼ける」と表現していて、横文字だと「ベースバーン」と言います。

この劣化は止める手段がなく、たとえどのような滑走面でも時間が経てば劣化します。さらに対候性に弱い性質を持つために、屋外で使うスキーは何もしなければどんどん劣化します。劣化してしまった滑走面はそのままではワックスを浸透させることが出来なくなっており、上記の滑走性の維持や保護性の向上が出来なくなるばかりか、より滑走面が劣化していきます。

この劣化を食い止めるのが、またワックスの役割です。劣化の大きな原因は水と空気と紫外線ですが、そのうち水と空気に関してワックスが塗られていれば、その劣化を大きく食い止めることが出来ます。ワックスによるごく薄い皮膜のような層によって無用な水や空気が滑走面に触れなくなり、滑走面はより長くその性能を維持することが出来ます。

ですが、このワックスが浸透して出来た層は0.2ミクロンとも言われる非常に薄い層で、これは滑走によって徐々に失われていきます。よって、ワックスは適時塗り足して浸透させなければなりません。

では、削れにくくする「保護性」重視のワックスを使えばワックスははがれにくくなるでしょうか?答えはその通りですが、しかしデメリットがあります。保護性重視のワックスが浸透している滑走面は滑走性を重視する柔らかいワックスが入りにくくなります。したがってワックスをバランスよく浸透させることが一番大事になります。逆に滑走性のワックスだけが浸透している滑走面は低温時に滑走面が保護しきれずやすられて削られ、せっかくの浸透層がなくなって無防備な滑走面を晒して劣化させてしまいます。(良くスキーの板が滑走後に白く変色しているのはこれが理由です。なので圧が最もかかる足元のエッジ付近が良く白く変色して劣化します)

このバランスを簡単にしたものが「オールラウンド用」と呼ばれるワックスです。オールラウンド用ワックスは適度に滑走性と保護性を持っているので扱いは楽です。しかしシーズン通した幅広いシチュエーションすべてに対応できるほどの柔軟さは持っていませんし、多くのオールラウンド用は滑走性を重視して配合されています。より適した滑走面を求めるならば、数種のワックスを使い分ける方がより良い滑走面になります。

この場合、浸透させる順序があります。基本は高温度用の柔らかいワックスから低温度用の硬いワックスの順番に使います。さらに滑走面は1度や2度の作業ではワックスがしみこみきりません。何度も浸透させることで一様に均一な、様々なシチュエーションに対応できる滑走面が出来上がります。これを「滑走面を育てる」とも言います。

このようにして作った滑走面は滑走性を維持しつつもしっかりとした保護性を発揮し、多少のシチュエーションの変化でも諸ともしない良い滑走面になります。またしっかりワックスが浸透している事で劣化に対しても効果を発揮し、その寿命は格段に長くなります。あとはその都度時期や雪に合わせたワックスを塗り足していくことでシーズン通して快適なスキーを楽しむことが出来ます。


 

このようにスキーとワックスは切っても切れない関係にありながら、その原理的には非常に理解するのに難しい問題があります。しかしこれらの原理的な部分を理解しておくと、自分でチューンナップを行う際にワックスの選択などで判断しやすくなります。

次回はそんなワックスの具体的な種類と使い分けについて説明したいと思います。

 

GR板のプレチューンナップ作業の紹介

GR板のプレチューン紹介動画です。GR板は全てこのような作業の後に出荷されております。

(注)

これらの作業は滑走性などを向上させる目的で行われておりますが、すべてのユーザーに対してその効果を保障するものではありません

また、その効果は一時的なものであり恒久的に維持されるものではありません、これらの点をご了承ください。

スキーボード板の各部の名称とその意味について

スキーボードに限らず、スポーツでは多く専門用語が用いられますが、ではその言葉の意味は?と思う方も多いでしょう。カタログやパンフレットを読んでもハテサテ?な単語ばかり。

ですが、理解しておくとそれがどのような板で自分に合うかどうか?が何となく見えるようになってきます。そこで今回は各部の名称を解説してみたいと思います。

板の各部の名称

わかりにくい図で申し訳ないのですが、以上を参考に解説します。

ノーズ・テール

→板の先端、もしくは後端。ノーズはトップとも言う。

キャンバー

→意図的に作られた板全体の反り。板の機敏さや乗り心地に関係します。(別記事にて詳しく解説します)

チップ

→ノーズ、もしくはテールの反りあがり。チップが大きいと深い雪や荒れた雪でも引っかかりにくくなりますが、大きすぎると逆に抵抗になる場合もある

サイドカット(サイドカーブ)

→上面図のようなしゃもじ型の形状の構造がどのようなものか示す。図の場合A-B-C Rx.xmとなっているが、ノーズの幅の最も広い所、センターの最も狭い所、テールの最も広い所が何mmかを示す。GR板(ForFree)の場合113-90-103なのでそれぞれAが113mm、Bが90mm、Cが103mmとなる。Rは次にて説明。

ラディウス

→その板が半径何mの円弧と同じ深さのサイドカーブなのか示す。一般に数字が小さいほどクイックに曲がり、大きいほど緩やかに曲がる性質になる。ForFreeの場合はR9.7mなので半径9.7mくらいの深さの円弧のサイドカーブと言える。スキーボードの場合7~9mが平均的で、一般の長板の15~20m比べてラディウスは小さいのが一般的。ラディウスが大きい板は曲がりにくく、ラディウスが小さい板はまっすぐ滑っていてもキョロキョロと動きやすいデメリットがあるが、板のたわみやすさなども関係するため目安としての数字である。

センターマーク

→メーカーが推奨する位置で、示し方、名称はそれぞれメーカーで異なることが多い。この位置を参考に金具を取り付けたりブーツの位置を合わせると板の本来の性能が発揮されやすくなる。逆にこの位置を参考に好みで位置を変えることで乗り味が変化し、板の性格も変わる。一般的にはブーツ側に示されているブーツセンターに合わせるように調整するのが良い。このセンターマークよりも前にブーツセンターを合わせたセッティングを「セットフロント」、後ろだと「セットバック」と言い、ゲレンデの状況やスタイルにあわせて簡単に調整できる金具も売られている。

<参考:ブーツのブーツセンター表示>

DSC06633_R わかりにくいですが中央部にある線がブーツセンター。これもメーカーによって示し方が変わります。

芯材(コア)

→構造の要となるもので、多くはウッドコアと呼ばれる木製、もしくは化学合成素材(ポリウレタンなど)が用いられる。この芯材によって板の性格は大きく変わり、一般的にはウッドコアの方が優れた性能を発揮することが出来るとされているが、技術革新のために合成素材のものでも十分な性能を発揮するものもある。この芯材によってほとんどその板の性格が決められるため、各社とも心材をどうするかは重要な開発のキーポイントになる。近年ではカーボンを利用したものや、チタンなどの軽量高剛性金属を複合的に用いるものもあり、ここ数年でさらなる進化をすると思われる。スキーボードでは比較的安価で性能を出しやすいポリウレタンコアが主流だが、ウッドコアのものもある。心材は値段にも大きく影響し、値段的にはウッドコアの方が高くなる。

トップシート

→板の表面の事。多くはプラスティック系の素材が用いられる。トップシートの張り方で以下の構造に大きく影響がでる。

構造(サンドイッチ構造:キャップ構造)

→トップシートをどのように張るのかでその構造は大きく「サンドイッチ構造」と「キャップ構造」に分かれる。サンドイッチ構造は芯材をトップシートと滑走面で挟んだ構造で、その横にはサイドウォールと言う素材が張り付けられる。キャップ構造は芯材を丸ごとトップシートで覆って滑走面に張り付ける構造。サンドイッチ構造はコスト的に高くなるがその乗り味や硬さなどを比較的自由に設計できる。キャップ構造は比較的安価に作れ、十分な強度を期待できる。お互いにデメリットもあり、サンドイッチ構造はその強度と重さが、キャップ構造は細かい設計としなやかさがデメリットとなるが、この二つを組み合わせた構造の板も存在している。軽さと強度を求められるスキーボードではキャップ構造が主流だが、ハイパフォーマンスなモデルではサンドイッチ構造のモデルもある。

滑走面(ソール)

→板の裏側の事。滑る為に最も重要なもので、昔は黒一色が多かったが近年グラフィックが入ったカラフルな滑走面も多い。滑走面はポリエチレン系の素材で作られており、その素材によって、またその素材に添加されるものによってその滑走性とメンテナンス性が大きく異なる。多くはエクストリューテッドと呼ばれる滑走面で、更なる滑走性を求めるモデルには高価なシンタードと呼ばれる素材が用いられる。劣化や滑走性維持のためにワックスなどが必要なため、そのまま何もしないで使うのは出来るだけ避けた方が良い。参考→http://grskilife.net/mente/スキーボードクリーニング(リムーバー編)/

エッジ

→板の周囲に貼られた金属のパーツの事。エッジはターンしたり止まったりするために必要なもので、これによっても滑りは大きく変わる。エッジがあると滑りにくいと思われる方も多いと思うがその場合は適切にメンテナンスされていない可能性が多い。特にエッジの短いスキーボードは短いが故にエッジの影響が出やすく、これが原因で滑りにくいと思われている誤解もある。(もちろんGRはそういった部分もサポート致します)

サイドウォール

→サンドイッチ構造の板の横面をふさぐ素材。キャップ構造には構造上必要が無い。これがあるか無いかである程度構造の判断は出来る。