滑走面のちょっと深い話

ちょっと久々のハウツーブログですね。

最近エントリー向けの動画を作成していますが、これがなかなか好評のようでしてうれしい限りです。ですが、スキーの世界にどっぷりつかっている皆さんには物足りない内容かとも思います。

そこで、今回は意外と深い滑走面のお話をしたいと思います。

<滑走面?>

スキーでは滑走します。当たり前です。かつては竹などが素材に選ばれていましたが、技術革新によってその素材はプラスティックに置き換わり、今の時代を迎えています。

この「滑走面」とはなんなのでしょうか?

滑走面はそのほとんどが「ポリエチレン(PE)」でできています。PEは低温に対して安定的な性質を持つため雪の上ではうってつけで、高い滑走性能を発揮します。

この「低温に対して安定的」というのが重要でして、他のプラスティック素材ですと低温ではもろくなりがちで、高速で滑走するスキーではPEは非常に有用な素材です。また生産コストが安価で加工もしやすく、スキーの滑走面としては非常に理想的な素材と言えます。

さらに、ワックスと呼ばれるパラフィンを染み込ませると容易にその滑走性を調整できるのも大きな特徴です。このため、スキーではワックスを滑走面に塗り、その滑走性を高めている訳です。

<シンタード?エクストリューデッド?>

一般には滑走面はPEですが、さらに大きく3種類の素材に分けられます。滑走面は「ベース」と呼ばれることから、これらは以下のように呼ばれています。

・PEベース

・エクストリューデッドベース

・シンタードベース

もっとも安価で手軽なのがPEベースです。これはキッズ向けの安価なスキーなどに採用されますが、PEと言ってもベース素材としては柔らかいため傷がつきやすく、滑走性もあまりよくありません。大人向けでも非常に安価な板に採用されますが持ちはよくありませんし、ワックスもあまり意味をなしません。スキーボードでも安価なモデルはこの滑走面が採用されているものもあると思います。

エクストリューデッドベースはEXベースともよばれ、extrudedの意味、押し出し成型からよばれています。滑走面としてはもっとも普及している素材で、ワックスとの相性もそれなりに良く、滑走性も安定しています。構造的にはPEベースよりも高密度なもので、近年では透明な素材もあるため、デザインを施した滑走面にはしばしば採用されます。

シンタードベースはEXベースよりもさらに高密度なポリエチレン素材を用いていて、その製法もPEベースやEXベースとは大きく異なります。そのため非常に硬く、ワックスの持ちの良い、滑走性の高い滑走面となるため、競技用の板やハイパフォーマンスな板に採用されています。しかしEXに比べると高額で、透明な素材が作りにくいためその多くが真っ黒な滑走面で、最近では切り貼りすることでデザインされた滑走面を作ることもできています。

このようにこれらには特徴があります。ちなみにGRではコストパフォーマンスとデザインの再現性、メンテナンス性を重視してEXベースを採用しております。

<滑走性を高めるならシンタード一択じゃないの?>

実はシンタードは「厄介な」滑走面なのです。

シンタードは値段意外いいことづくめ。滑走性は圧倒的で、ワックスも良く染み込むし持ちも良い。きちんと滑走面ができていれば多少ワックスをさぼっても余裕で滑れます。しかしこれが、実は「厄介」なのです。

EXベースはPEベースより硬いとはいえ作業性はよくシンタードよりも柔らかいので修復が比較的楽です。滑走性はシンタードよりも劣り、ワックスの持ちも劣りますがそのために自然に滑走面を手入れでき、もし致命的に劣化したとしても割と直しやすい特徴があります。

しかしシンタードはそうもいきません。滑ってしまうため習慣的に滑走面をメンテナンスしない方では、致命的に劣化するまでメンテナンスを行わないことがあります。こうなってしまったら直さねばなりませんが、その硬さゆえに簡単には治せません。しかも使う前にしっかりとベースワックスを染み込ませる「ベース作り」を行っておく必要もあり、その作業性はEXベースに比べてあまり一般向けではありません。性能が高く高価である反面、ユーザー次第ではEXベースよりも扱いにくい板になる場合もあります。

とはいえ、一般的なメンテナンスを日常的に行えるのであればシンタードほどよい滑走面は無いでしょう。しっかりベースを作り育てたシンタードの滑走面は、あらゆる状況で最高のパフォーマンスを発揮します。

GRではこの点を検討し、現モデルシンタードの採用を見送っております。将来的には採用するモデルをリリースする予定はもちろんありますが、シンタードは透明な素材も無いため滑走面のデザインを大事にしたいGRでは特別なモデル以外はEXベースを採用する方針です。

<滑走面の劣化とその対処?>

滑走面は必ず劣化します。シンタードも例外ではありません。PE<EX<シンタードの順に劣化に強いですが、PEの性質上何もしなくとも毎日劣化します。

PEはプラスティックなので、紫外線や水分による加水分解、熱などの要因で劣化します。よく「滑走面が焼けた」と言いますが、この状態は専門的には「ベースバーン」と呼び、滑走面が摩擦によって劣化してしまった状態です。この状態は板を見るとエッジのわきなどが白くぼやけたようになります。程度の軽いものであればワックスを入れるだけである程度改善しますが、ひどいものは削り取る必要があります。

劣化した滑走面はまず滑走性が悪くなります。引っ掛かるような感覚で板が進まなくなります。そしてワックスも劣化した個所は入らなくなり、そのまま放置するといくらワックスを塗っても滑走性が悪いままの板になります。(これがシンタードで劣化した場合に厄介な症状です)

しかし補修する場合はごく薄く削るだけで治すことが可能です。作業としてはヤスリなどで削り落とすのが一般的で、これらの作業を「サンディング」と呼びます。

劣化させない方法もあります。それは適切なワックスを常に入れておくことです。時期によりワックスは数種類を使い分けますが、とりわけ「ベースワックス」と呼ばれる基本的なワックスをしっかり入れておくと、滑走性も良く劣化もしにくくなります。具体的には滑って帰ってきたらワックスを入れておけば、ワックスが被覆して滑走面を守るだけでなく、ワックス自体もしっかり浸透して次に滑るときに快適に滑れるようになります。

このメンテナンスはすべての滑走面に言えることで、ワックスを切らさないことがすなわちもっとも大事なメンテナンスになります。

<ストラクチャー?>

滑走面には「ストラクチャー」と呼ばれる非常に細かい溝が刻まれています。これはサンディングの作業による副産物なのですが、この微細な溝が板の排水性を高め、滑走性をより高める効果があります。

さらに高級な板となると意図的にストラクチャーを入れる「ストラクチャー加工」が施されます。こうした板は効率的な排水が行われるのでより高い滑走性を維持できるようになります。

ところで、この撥水性はどのようなものか。滑走性を悪くする要因は滑走面の劣化ですが、それ以外の要因としては「水」「汚れ」「ワックス」があります。

水はもっとも身近な要因で、寒いゲレンデで水というとピンときませんが、板は滑走により摩擦されます。摩擦されると氷は水になり、水の表面張力によって板にまとわりつきます。こうなるとせっかくのPEの性能は発揮されなくなり、滑走性は著しく低下します。

そこでストラクチャーを入れることで排水を促し、ワックスの染み込んだPEがきちんと雪に触れられるようにします。このおかげで板は滑走性を保ったまま滑る事ができます。

しかしストラクチャーも過ぎたるは及ばざるが如しで、やりすぎると今度はストラクチャーの溝が抵抗となって滑走性に影響を及ぼします。ストラクチャーはあった方が良いですが、意図的に加工する場合は必ず技術者に依頼した方が良いでしょう。

<汚れ?ワックス?>

先ほど、滑走性を悪くする要因としてもう二つ、「汚れ」「ワックス」と紹介しました。

「汚れ」はわかるとして、「ワックス」は滑走性をよくするものでは?

「汚れ」はごみ、油、砂など様々です。PEはその性質上静電気を帯びやすく、ごみを吸着しやすい性質があります。春先に滑走性が良くないのはこれと水が原因ですが、もちろん対処方法もあります。

汚れにくい滑走面を作る事。つまりきっちりクリーニングされていれば汚れも付きにくくなり滑走性を保てます。そしてもう一つ「グラファイト」を用いたワックスを使う方法もあります。グラファイトは汚れを静電的にはじくので効果があります。しかし炭のように黒いため、滑走面は黒く汚れます。もしデザインされた滑走面であるなら、グラファイトの使用は一度検討してからの方が良いでしょう。

「ワックス」は真逆のようですがそうではありません。雪質に合わないワックスを使ったり、フッ素が必要ない状況でフッ素入りのワックスを使うと滑走性が妨げられる事があります。これらは経験でしか判断ができませんが、ワックスに書いてある「温度帯」を参考に、できるだけ雪に合ったワックスを選ぶことが大事です。

さらに、ワックスを剥がさないことも妨げられている原因です。これは単純にストラクチャーがワックスでつぶされている状態であり、排水性が悪くなっているのが原因です。ワックスを入れた後になぜブラシなどでこすり落とすか疑問だった方もいると思いますが、ストラクチャーの溝のワックスを掻き出すというのがその理由です。

ですが、最近では工夫されて塗りっぱなしで剥がさずとも効果のあるワックスもあります。これもワックスの説明書をよく読んで正しく使う必要があります。

<まとめ>

滑走面についてはちょっと深い話としてもこれほど盛り沢山な話となります。これ以上深い話はまたの機会にしますが、これで少しでも皆さんの疑問や解らないことが解決されれば幸いです。

また、板の短いスキーボードでは滑走性の維持が楽しく滑る為にも重要な要素となります。これを機会に皆さんも自分のメンテナンスを見直してみても良いかもしれません

2015年7月9日 | カテゴリー : blog, howto, mente | 投稿者 : YasutakaKikuchi

板のセット位置のお話

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スキーボードに限らずスキーの板には「セット位置」と言うのがあるのをご存じでしょうか?

セット位置とは、板に対してブーツをどの位置で固定するか?と言うもので、これはどんな板、ブーツにも目印がきちんと用意されています。

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上の写真を見て頂くと、板、ブーツそれぞれに線が引かれているのが分かると思います。このブーツ側の線を「ブーツセンター」板の線を「センターマーク」と言い、固定する際の目安にします。

※これらの「ブーツセンター」「センターマーク」はメーカー、モデルによって記載方法は異なります。わからない場合はそれぞれ販売店かメーカにお問い合わせください。

板にブーツを取り付ける際、このセット位置は非常に重要な意味があります。これを間違うと板の性能を発揮できないばかりか、余計に滑りにくくなる場合もあります。


スキーボードの場合、特に固定ビンディングであればこのセット位置は一部のモデルを除いて自由自在です。自分の好みでビンディングの固定位置を調整するだけで簡単に変えられます。また、解放式のモデルの場合でも自己責任にはなりますがチロリアのライトレールモデルなどは簡単に変えることができます。

※解放式ビンディングを調整する場合は原則認定技術者にご依頼ください。使用者自身が調整した場合はどのような場合でもすべてにおいて自己責任となります。

また、取付後に調整が出来ないモデルであっても取り付け時にセット位置の調整を依頼することである程度調整することが出来ます。この時に出てくる言葉が「セットフロント」「セットバック」と言う言葉です。

そもそも、この「センターマーク」とは何なのでしょうか?

センターマークはメーカーが推奨するセット位置で、この位置に合わせてブーツセンターを調整して取り付けると十分板の性能を発揮できますよ!と言う目安として表示されているものです。しかしユーザーそれぞれに好みがあり、ある程度この位置を中心に前後して取り付ける場合も多々あります。

たとえば通常滑走よりもパウダー滑走を重視して使いたいユーザーは「セットバック」を好みます。そしてパークやジブなどで楽しんだり、フェイキーなどを楽しむ方では「セットフロント」を好みます。これらは傾向としてですが、それぞれ意味があってセット位置を変えています。

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「セットバック」はパウダー以外でも、乗っていて前が短く不安定に感じる場合や、後ろが長くて引っかかる感覚があるときなどに効果があります。特にテールが引っかかると曲がりにくくなるパウダーでの滑走ではコントロール性を向上させる意味でもセットバックは有用です。しかしセットバックをすると板の反応性は緩慢になり、クイックでレスポンスの良い操作感は失われていきます

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「セットフロント」はセットバックの逆、よりクイックに板を回す事が多いパークではしばしば採用されます。また後ろ向きでの滑走でもセットフロントは効果があり、どちらかと言えばフリースタイルを好むユーザーにはセットフロントの方が扱いやすく感じると思います。しかし通常滑走では扱いにくさが目立ってしまいがちで、不安定でテールが長く引っかかる感覚を受けてしまう事もあります。

このような一長一短があるセット位置ですので、安易に変えると逆効果になる事もあります。ユーザーの利用環境に応じて調整すべきで、わからない場合はブーツセンターはセンターマークに合わせるのが最もベターなセット位置になると思います。

しかし、その位置では少し乗りにくい?と思うのであれば、調整することで板の性能が激変して楽しくなる事もあります。テールが引っかかる感覚や板が不安定に感じるのであればセットバック、レスポンスやフェイキーを重視するならばセットフロントを行うと乗りやすくなる場合があるでしょう。

実際、セット位置を変える場合は5mmくらいから動かして確かめます。どんなに大きく動かしても3cm程度まで、それ以上は動かしてもデメリットが目立ちすぎてしまうので、避けた方が良いでしょう。たとえ1cmでもその影響は大きいもので、ずいぶん乗り味や板の雰囲気が変わって感じられると思います。そして乗ってみて快適に感じられる位置が見つかれば、それはつまり板がより自分に合う板になったと言っても良いでしょう。

最後に、セット位置は基本的には変える必要がありません。ですが、もし不具合を感じるのであればこういった方法でも調整が出来ますので、一つの情報として知っておくとより自分に合った板探しの手助けになるでしょう。

そしてあまりセット位置を気にせず今まで固定ビンディングで使用していたとすれば、一度見直してみるのも良いと思います。固定ビンディングの場合ブーツセンターが全く合ってない場合が多いので調整して適切な位置にすると、今まで使ってた板が劇的に滑りやすくなるなんてこともあったりしますよ!

 


補足 ドセンターとそのセット位置について

いわゆる「ドセンター」と言うものがあります。これは板の前後に対する中心にセンターマークを設定した板で、フリーライド系の長板や昔のスキーボード(ファンスキー)に多くみられるセット位置です。ここからさらに板の前後のコンストラクションも同じにして作った板は「リアルツインチップ」などのような呼ばれ方をしています。

これらの板の目的はズバリ「フリーライド」であり、パークでの使用を前提に開発されています。こういったモデルでは初めからドセンターを前提に作っているので良いのですが、これらの板ではない通常のモデルでセットフロントを行ってわざわざドセンターにセットするのはあまりお勧めできません。上記のデメリットが目立つばかりではなく、板としての性能が発揮できない非常に使いにくい板になってしまうからです。巷では「ドセンター=ハイパフォーマンス」のようなイメージがありますが全くそれは意味が違う事で、ドセンターの板は少なからず滑走性などを犠牲にしてその位置で設計した結果、普通の板よりもパークでのパフォーマンスが特化されたものになっているのです。

センターセットにした方がパークでのパフォーマンスが有利になるかと思いきや、板の性能が発揮できない板にしてしまっては宝の持ち腐れになります。たとえばGRのForFreeをドセンターにセットしたとしたら、それはそれはテールが引っかかって不安定で大変な板になるでしょう。セット位置を決める際にはドセンターは考えず、少しずつ試しながら決めるのをお勧めします。

スキーボードのトリック解説 グラウンドトリック「フェイキー(スイッチランディング)」

スキーボード(ファンスキー)のグラウンドトリック解説動画です。今回はかなり重要なトリックである後ろ向き滑り、フェイキーについて解説しています。

ちなみに長板だと「スイッチ」とも呼ばれていますが、スイッチはグラトリとして別に存在するためこのように呼ばれます。スイッチの場合の呼び方は「スイッチランディング」と呼びます。

スキーボードのブーツ

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スキーボード(ファンスキー)のブーツは、普通のアルペンスキーのブーツが一般的です。過去にはスキーボード(ファンスキー)専用ブーツも存在していましたが、残念ながら現在では「専用」のブーツはほとんどありません。

では、どのようなブーツを選ぶべきでしょうか?

 

スキーボードに適しているブーツは、足首が使いやすく適度な硬さのブーツです。

 

スキーボードはその板を支える為に膝が重要で、膝を使うには足首が使いやすいブーツの方が楽に使えます。従来あったリアエントリーと呼ばれるブーツの後ろ側がガバっと開いて脱ぎ履きするタイプのブーツ、レンタルで良く見かけるあのブーツでは、足首が使いにくくスキーボードには少し向きません。

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写真のように少し膝を曲げた状態が基本的な姿勢になりますが、ブーツの足首が曲げにくいと膝も曲げにくくなります。

これに適したブーツとしてお勧めするのが「フリーライド系」と呼ばれるブーツです。最近では「フリーライド系(もしくはフリースキー系)」と呼ばれるスキーブーツが多く出回るようになりました。これらのブーツはスキーのフリースタイル、パークで飛んだり構造物の上を滑ったり、従来のスキーの枠に当てはまらないスキーを言いますが、そういった意味ではスキーボードは同じくくりとなり、ブーツもフリーライド系のもので十分楽しむ事ができます。

もちろん、従来のスキーブーツでも楽しむことが出来ますが、新しく購入するのであれば「フリーライド系」を試さない手はありません。

 

ちなみに、スキーボードは他にも「スノーボードブーツ」や「テレマークブーツ」でも楽しむことが出来ます。これらはそれぞれ専用のビンディングが必要となり、操作も通常とは異なるので今回は説明を割愛しますが、スキーボードはいろいろなスタイルで楽しむことが出来ます。

 

さて、ではどのように選ぶのか?と言うと、スキーブーツ選びは難しいものです。足に合った物でないと足が痛くなったり滑りにくかったり、かといってどれが自分に合っているか?はわかりにくいものです。

スキーブーツ選びで重要なポイントは3つあります。

  1. 自分の足の実寸の長さ
  2. ブーツの硬さ
  3. 履き心地

まず 1.の自分の足の実寸の長さですが、多くの方がブーツを選ぶ際に、今履いている自分の靴のサイズを参考に選んでいると思います。

が、これが実はマズイのです。スキーブーツは実際の足の実寸を測って選ばなければ、ただただ痛かったりフィット感が良くないブーツを選んでしまいます。多くの場合ブーツを購入する時に店員の方にお願いすると、実寸を測って貰えます。その実寸を参考にブーツを選ぶと、多くの場合は靴のサイズよりも小さいブーツとなると思います。私の場合ですと普段の靴は27cmですが、スキーブーツは25.5cmです。足の実寸が25.2cmですので、これで十分です。

大きいブーツを選んでしまった場合、滑走中に足がブーツの中で動いてしまいます。これは滑りにくいだけでなく、靴擦れのようにこすれて痛める場合もあります。それを防ぐためにしっかり締めると、こんどは締めすぎとなってうっ血して痛かったり、締めすぎる事自体で痛かったりします。

適切な大きさであれば適切な強さでブーツを締められるので、結果痛みが出にくくなります。ブーツの性能も発揮されやすく、滑りやすくなります。

さらに最近のブーツは「ラスト幅」と言うものが示されています。おおむね90~100mmで示されていますが、これは足の一番広い所の幅です。

ラスト幅

この幅も測れば、自分の足に合ったブーツがさらに選びやすくなります。このラスト幅が広いブーツは履き試した感じは広く快適に感じますが、しかしこの幅があまりに余裕があると、上の理由で足が左右に動いてしまい、結果親指の付け根や小指の付け根が痛んでしまうことに繋がるので注意です。

次に 2.のブーツの硬さですが、ブーツは「フレックスインデックス」と言うものでブーツの硬さを示しています。その数字は50~150で、一般のものでは80前後のものが主流となっています。

このフレックスインデックスは単純にフレックスとも言いますが、実はメーカーによってばらばらで決まった数値ではありません。が、目安として利用は出来ます。

フレックスの関係

この図はブーツのフレックスと硬さの関係を示したものです。スキーブーツには大きく「競技モデル」と「コンフォートモデル」があり、同じフレックスインデックスでもその硬さは違ったりします。多くの場合は競技モデルをえらばないのでコンフォートモデルになりますが、コンフォートモデル110だとしても、競技モデルでは硬さとして90くらい、となったりするので一概にフレックスで選べるか?と言うとさらにわかりにくくなります。フリーライド系ブーツの場合は多くがコンフォートモデルなので、130の硬いブーツを選んだとしても、それは競技用の130とは大きく異なる硬さなのです。

では実際どのように選ぶか?それは板を履かずにブーツを履いた状態でブーツをたわまして足首が曲がるかどうかで判断すると良い参考になります。これが全く動かなければ硬すぎ、簡単に動きすぎては柔らかすぎです。ぐっと力を込めて曲がるくらいがちょうどよいフレックスになりますし、もし買い替えで購入する場合は元々のブーツのフレックスを参考にすると良いです。

そして 3の履き心地は最も重要でしょう。いくら足に合っていてフレックスもちょうど良くても、履いて痛ければ意味がありません。一番はためし履きをしてしっかりとブーツを締めた状態で痛みや違和感が感じられない事。そして適度に足全体が締め付けられている事です。特に簡単にかかとが浮いてしまう場合は浮かないブーツを選んだ方が良いでしょう。

そして最近のブーツでも中級以上のものとなると「フォーミング」呼ばれる機能がついています。このフォーミングはインナーブーツ、ブーツの外側の硬い所ではなく内側の柔らかいブーツをインナーブーツと呼びますが、これを自分の足型に合わせて変形させることで足にぴったり合わせられる仕組みです。メーカーやブランドによって異なりますが、ブーツを熱して温めて足の形を取る「熱整形」と呼ばれるインナーであれば非常に高いフィット感を得られます。他にも履き続ける事で徐々に足に合っていくフォーミングインナーもあり、これは各メーカーや店員さんに問い合わせてください。

と、ここで一つ注意があるのですが、もし熱整形インナーのフォーミングをする場合、もし初めからインソールと呼ばれる中敷を交換するつもりがあるのならば、インソールを交換してフォーミングを行った方が良いです。熱整形フォーミングの場合熱を入れられる回数がほとんどの場合2~3回で、それ以上は整形できなくなります。インソールによっては足のあたる部分が変わるため、この点は注意しておきましょう。そして熱整形したブーツは絶対に過度に温めてはいけません。ブーツを履くときに冷えていると寒いし履きにくいのでヒーターなどで温める方も多いと思いますが、暖め過ぎるとそのせっかくのフォーミングが元に戻ってしまうからです。温めたとしても体温程度に留めましょう。

このように選んだとして、もう一つ悩ましい事があります。最近のブーツはいろいろ進化しているため、バックルが4つだったり3つだったり、またはワイヤーだったりと様々です。

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これらはそれぞれ意味がありますが、軽さを重視するのであればバックルが少ない方が有利です。そして特に3バックルモデルでは足首が使いやすいものが多く、足首が細くてフィット感が得られない方には3バックルはおすすめできます。トータルのホールド感では4バックルが最も良いですが、足首を使いたいスキーボードでは4バックルでは硬く感じることもあります。

他に写真を用意できませんでしたが、ワイヤーバックルのモデルはその軽さに特徴があります。最終的には「好み」になりますが、このような特性も把握しておくと選びやすいでしょう。

さらに前傾角やカント調整などこだわるといろいろありますが、まずはこれらの点を押さえておけばきっと良いブーツに出会えると思います。もし良いブーツに出会えればそれだけでスキーは上手になりますし、快適に一日過ごせます。

以上、スキーボードにブーツについてですが、最後に最も重要なポイントを一つ。

必ず、試し履きをして購入しましょう。

ネットで買うと安かったりしますが、結局買い替えるよりもためし履きして買った方がずっと安く抑えられると思います。最終的にネットで買うにしても、一度履いて確認することをお勧めします。

 

ビンディングの違いについて

先に http://grskilife.net/?p=602 をご覧頂くと話が分かりやすくなります。

前回、ビンディングについて解説しましたが、今回はスキーボード(ファンスキー)のビンディングのそれぞれについて解説したいと思います。

「 種 類 」

KIMG0439 プラビン(他と互換性のないプラスティック製の固定式ビンディング)

KIMG0467 4×4ビン(4×4規格の金属ないし樹脂製ビンディング)

KIMG0444 解放ビン (アルペンビンディング)

種類としては大きくこの3種に分かれます。それぞれについて簡単にメリット、デメリットを見ると

<プラビン>

・メリット 非常に軽量で、コストが安い。調整がしやすい

・デメリット 耐久性に難あり。メーカーによって仕様が異なり、取り換えが出来ない。外れない。

<4×4ビン>

・メリット 互換性があり、種類も豊富。ニーズによってビンディングを選べる

・デメリット 手に入りにくい。高価。外れない。

<解放ビン>

・メリット 転倒時に外れてくれるので怪我の程度を軽減できる。

・デメリット 重さ、価格。取り付けモデルの場合は選べない。

このようになります。

 

「 具 体 的 な 比 較 」

ではさらに違いを検討してみます

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<プラビン>

参考板:エラン社(EXPO)

参考ビンディング:取り付け済み 固定式

板重量/ビンディング重量:不明(総重量1.4kg程度)

全体的に非常に軽く、コンパクトなプラビンなので板が90cm程度であっても長く見えます。しかしビンディングが独自のものののため、当時持っていたブーツではマッチングに問題がありビンディングを少し加工して使っていました。他のブランドのプラビンでも耐久性や強度に問題が出ることが多く、リリースから10年以上経つモデルでは自然劣化による破損の可能性も否めません。ビンディングが壊れた場合はほぼ換装が出来なくなるので、板も処分しなければならなくなります。


 

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<4×4ビン>

参考板:GR ski life(ForFree)

参考ビンディング:固定式 樹脂製

板重量/ビンディング重量:990g/560g(計1550g)

3枚目写真は下のもの。数少ない樹脂製の4×4規格のビンディングで、プラビン並みの重量が最大の特徴。調整機構に若干難があるためハードな使い方には向かないが、締め付けにある程度バネによる遊びがあるため履きやすい。プラビン同様に劣化の問題や、ベースの金属やビスが錆びやすいという問題はあるものの、これ以上軽い4×4規格のものはない。現状では生産メーカーが無いために中古で稀に見つかる程度で手に入れるのはほぼ不可能。


 

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<4×4ビン>

参考板:GR ski life(ForFree)

参考ビンディング:固定式 金属製

板重量/ビンディング重量:990g/700g(計1690g)

2,3枚目はそれぞれ上のもの。標準的な4×4規格の金属ビンディングで、これは最もベーシックなもののひとつです。樹脂製のものに比べてずいぶん重くはなりますが実際の使用感に問題はなく、プラビンや樹脂製に比べても高い剛性があるのでハードな使い方にも十分耐えることが出来ます。新品は手に入れにくいですが中古でも比較的手に入れやすく、質の良い中古品はオークションでも活発に取引されています。


 

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<解放ビン>

参考板:GR ski life(SnowFairy)

参考ビンディング:フリーライド向けアルペンビンディング 樹脂/金属製

板重量/ビンディング重量:775g/765g(計1540g)

マーカー社のフリーライド向け超軽量ビンディング。ハードユースにも耐えられるスペックながら非常に軽く、今回の組み合わせであれば4×4ビンよりも軽くなる可能性もあります。値段がネックではありますがその性能は十分なもので、長板でも評価が高い。プラビンなどに比べて見た目が大きいのでスキーボードの軽さを見ることが出来ませんが、履いてみると重さを感じさせません。板の横に伸びている2本の棒は「ブレーキ」と言って、板が外れた際にどこかに流れていかないようにするためのものですが、スキーボードの場合幅が広いものが多いためブレーキ幅は確認して取り付けないと対応しない場合もあります。(このビンディングは問題なし)


 

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<解放ビン>

参考板:GR ski life(WhiteLand -theFirstLimitedBlackEdition)

参考ビンディング:一般/レンタル向けアルペンビンディング 樹脂/金属製

板重量/ビンディング重量:880g/800g+210g※本体+レール重量(計1890g)

チロリア社のレールシステムを用いたビンディングで、最大の特徴は非常に簡単にサイズ調整が可能な事。このモデルは263mm~347mmと非常に幅の広い調整幅を持ち、かつ軽量である事から最近様々な板に採用されています。樹脂を多用することで軽量感がありつつもビンディングとしての機能は標準的なもので、スキーボードのビンディングとしても十分に使える革命的な一台。最軽量級とはいえ固定ビンの重さにはかなわないものの、しかしほぼ匹敵する軽さであるのでその使用感はほとんど大差がありません。


 

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<解放ビン>

参考板:GR ski life(ForFree)

参考ビンディング:一般/レンタル向けアルペンビンディング 樹脂/金属製

板重量/ビンディング重量:990g/805g+200g※本体+レール重量(計1995g)

チロリアのレールシステムビンディングの最新機種。上記のモデルの上位機種となり、同じく広い調整幅(255mm~338mm)を持ちつつも、スキーボードにおけるレールシステムのデメリットである板への影響を最大限解決しています。レールシステムはそのレールそのものを板に固定しますが、そのレールが影響して板が本来よりも硬く感じられるようになってしまいます。このモデルではその点を改善したため、レールシステムでありながら板の性能も犠牲にしない非常に優秀なビンディングとなっています。

 

このように、ビンディングによってそれぞれ異なった特徴があります。GRでご紹介、用意しているビンディングは全て軽量かつスキーボードに適したビンディングで、その重量なども比較して頂ければさほど差はありません。ちなみに今回手元になく比較できませんでしたが、解放式のレンタル用のビンディングのモデルは総重量が片足あたり2kgを超えるものが多く、軽量感はやや損なわれてしまいます。

 

「 重 さ 」

スキーボードのビンディングほど「重さ」を気にするものは無いでしょう。では、その重さのメリット、デメリットは何なのでしょうか?

重いビンディング

・メリット 重さがあるので安定感があり、剛性がある。余計な振動や挙動を吸収して適切に保持、解放が行える

・デメリット 操作感が重く感じて鈍い。足が疲れる。滑る用途以外には向かない。

軽いビンディング

・メリット 操作感が軽く、足元だけで板が操作できる。グラウンドトリックがしやすい

・デメリット 無用な挙動や振動を拾いやすく、足元が安定しにくい。高速時に不安定感を感じる

このようになります。スキーボードは軽さと言う部分で特に進化したため、滑りだけでなく頻繁に足を上げたりすることがあります。そういった場合重いビンディングは邪魔にしかならず、軽いビンディングが要求されています。長板などでは元々足を上げて滑るシチュエーションもほとんどないためビンディング自体の重さはデメリットになりにくく、むしろ重い方が安定感があって上級には好まれる傾向にあります。

足元の安定感があるというのは他にも意味があり、怪我などにおいては軽いビンディングよりも重いビンディングの方が安全性が高い傾向にあります。足元だけで操作しがちな軽いビンディングでは足をひねってしまう誤操作が多く、特に板も短いスキーボードでは顕著とも言えます。その点がスキーヤーにとってスキーボードを良しとしない理由の一つでもありますが、しかし重いビンディングは滑走スピードが高速化しやすく扱うには技術も必要になるため、怪我と言う部分においては実は大きく差が出ることは意外とありません。

むしろ「軽さ」においてメリットを見出して進化してきたスキーボードにおいて、重いビンディングしか選べないのはデメリットでもあります。しかし最近のフリースタイルスキーブームのおかげで生み出された超軽量ビンディングの登場で、スキーボードの世界も大きく変わろうとしています。スキーボーダーもビンディングを選ぶ時代が来たと言っても過言ではありません。

 

「 そ の 他 に つ い て 」

固定ビン、解放ビンにはそれぞれ機能があります。

<固定ビン>

履いたら外れませんが、その目的が単純な事から非常に軽量なものが多くあります。ブーツの大きさに対応する調整機能を持つものがほとんどで、多くのブーツに対して合わせることが可能になっています。スキーボードの普通では想定しえない動きにも十分対応でき、怪我の懸念はありますが有志による技術の検討や熟達、指導によって怪我も昔に比べて少なくなってきている。

4×4規格のものであれば自由に付け替えが可能で、固定ビンを一台持っていれば様々な板に付け替えて履く事が出来る(ただし自分で取付、調整したものは全て自己責任です)

<解放ビン>

有事の際に外れて怪我のリスクを軽減させてくれる(怪我そのものを防ぐものではない)。非常に多くの種類があり、自分の目的に合わせたものを選べる。基本的に取り付けてしまった場合は再度取り外して取り付けることが難しく、スキーボードの場合固定ビンのように複数枚所有してビンディングだけ付け替えて使用するのが難しい。コスト的にも固定ビンよりも高額なため、複数所有する場合にはデメリットになるが、怪我のリスクを考えた場合にはやはり固定ビンよりは圧倒的に安心感がある。取り付け、調整には基本的に認定された技術者に依頼するのがほとんどで、知識と経験が無ければ自ら取り付け、調整するのは避けた方が良い(この場合も自己責任になります)。

ビンディングにおいて最大の機能は「ブーツと板を繋ぐ」ことで、少なくとも怪我のリスクや今後を考えた時にはスキーボードであっても解放ビンを私は勧めます。固定ビンを選ぶ場合は何よりも「解放しない」という事を念頭に置いて、怪我などのリスクも含めて責任が取れる場合でないと安易におすすめすることは出来ません。

 

いずれにしてもその使用に関しては利用者の自由です。これまで選択する機会が無かったスキーボードのビンディングは、今、解放ビンも加えて多くのものを選べる時代になりました。今回違いという事で解説させて頂きましたが、こういった違いに対する知識も皆さんで共有して、よりスキーボードが発展していったらと願っています。

ビンディングによってスキーボードは新しい時代に突入しました。現時点で解放ビンが選べるのはGR板しかありませんが、この先いろいろなアイデアで楽しい板が生まれ、それぞれのユーザーが楽しんで選択してスキーボードを楽しんでもらえたらと思います。

スキーボードのビンディングとは?

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スキーボードのビンディング?と言うと、ほとんどの方が「元々ついてるものでしょ?」と答えます。これは昔、ファンスキーやショートスキーと呼ばれていた頃からなぜか短い板には簡易的なビンディングがセットになっていて、そのイメージは今でもあります。

KIMG0440 多くの人のイメージにあるのはこれ

写真はエラン社のスキーボードで、簡易的なプラスティック製のビンディングがついています。このプラスティック製の固定式のビンディングは俗に「プラビン」と呼ばれ、かつてのショートスキーやファンスキーからスキーボードに至るまでに大きく影響を与えたビンディングです。

では、なでスキーボードには普通のビンディングがついているものが少なかったのか?これには非常に複雑な大人の事情もあるのですが、簡単に言えば

「普通のビンディングを取り付ける義務が無かったから」

です。これはISO規格やドイツ工業規格などにも及ぶ話なので割愛しますが、いろいろあって各メーカーがプラビンを選択して販売していました。

その頃、一部のメーカーは「4×4」(フォーバイフォーと読む)と言う規格に着目し、板とビンディングを別に用意し始めました。これらはハイパフォーマンスなものが多く、上級のスキーボーダーに多く受け入れられました。

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これらはGRのForFreeのものですが、スノーボードと同じような4つの穴をビンディング取付位置に用意し(インサートホール)、金属製などの固定式のビンディングをボルトで固定できるようになっています。写真3枚目のように異なるビンディングでも規格が同じものなら自由に選べるため、好みで組み合わせを自由に変えられます。

この4×4固定ビンディングは重量こそ従来のプラビンに劣るものの、その剛性や強度、取り換えがほぼできないプラビンと違い換装可能な点などが多く受け入れられ、今でも多くのスキーボーダーが利用しています。

しかし、残念ながら4×4固定ビンディングは現在なかなか手に入れることが出来ないものになっています。それは「簡単に外れない」と言う特徴がケガを重症化させやすいなど、一般に受け入れられなくなったからです。現在では自己責任において利用されていますが、新品を手に入れることは非常に難しくなっています。

これに代わって近年台頭し始めたのがレンタルで使われる調整幅の広い解放式ビンディング(一般にはアルペンビンディングと言いますが、ここでは固定式と区別するため解放式とします)です。このビンディングは一般ではレンタルビンと呼ばれていますが、その解放機能と調整幅のメリットはあるのものの、硬さや重量でスキーボードに与えるデメリットは多く、上級者にはなかなか選ばれないものになっています。板のコストパフォーマンスもあまり良くなく、過去の4×4規格の上級モデルに匹敵するものはありませんでした。

そこでGRが用意したのが「解放式でも取り付けられる板」なのです。この仕組みはこれまでになかった新しい発想の板です。

GR板はそのコンセプトとして「ユーザーが自由にビンディングを選べる」というものがあります。一部のモデルを除いてですが、固定ビンディングの取り付けられる4×4規格のインサートホールと、解放ビンディングが取り付けられる板内部の補強、ビンディングプレートが内蔵されています。これによって規格に準じた固定、解放のビンディングが取り付けられ、ユーザーの好みによって選ぶことが出来るようになりました。(ただし自分で取付、調整を行った場合は全て自己責任となります。ご容赦下さい)

KIMG0448 SnowFairy+Squire11

KIMG0455  ForFree+SLR10

このように解放式のビンディングも取り付けできます。これだけでなく始めから取り付けたモデルも用意しています。

KIMG0446 WhiteLand+LRX9.0

これらのビンディングは非常に軽く、スキーボードの特徴を生かしつつ、解放ビンディングが使えます。

ビンディングそれぞれについては次の機会に説明しますが、最近ではGRでも採用しているLRX9.0が標準取付されている板も出始め、スキーボードは次の段階に移行しつつあるとも言えます。そしてこれまで4×4固定ビンディングしか選べなかった中級以上のユーザーに一つ選択肢を提供できたのも、新しい段階に移行するきっかけになるのでは?と思っています。

最後は手前味噌になってしまいましたが、ビンディングについての説明でした。

ワックスの種類について

前回 <こちら> にてスキーとワックスについて解説しました。(まだご覧になっていない方は一度ご覧ください)

非常にわかりにくい話ですが、今回はさらに踏み込んだ解説をしたいと思います。

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前回、スキーとワックスの関係を解説しましたが、その中で「ワックスには種類がある」と言いました。その種類について解説します。ワックスの種類

(上記 A-EはAが最も優れている、Eが最も効果が期待できない。 S-HはSが柔らかい Mがふつう Hが硬いの意です)

このように種類があります。(表は一般的なワックスの参考です)

これらを使い分けるのがワックスのむずかしさであり醍醐味ですが、まず基本としてこのような関係があります。使う基準として気温や雪温が示されていますが実は単純にそれらの温度帯に合わせるだけでなく、使うシチュエーションに合わせてワックスを選ばなければ、逆にワックスが滑走性を悪くすることもあります。

たとえば人工雪のスキー場。人工雪は天然に比べて結晶が硬く、板が傷つきやすい傾向にあります。ですのでベースとしては保護性の硬いワックスが入っていないと後で残念なことになります。また、黄砂の舞う春先はこの黄砂やゴミが摩擦となって滑走性の邪魔になるので、暖かい時期ではありますが低温用のワックスが必要になります。

しかし保護性ばかり見ていると滑走性が悪くなる事もあります。これは「硬いワックスが入っていると柔らかいワックスが入りにくい」と言う特徴にもよる事で、板の撥水性が損なわれて雪が少しでも解けると滑りにくくなる板になったりもします。

したがってベースの作り方にコツが生まれてきます。ベースワックスは一般的に柔らかいものから順に硬いワックスを入れます。こうして作ったベースは滑走性も持ちつつ保護性も持たせたオールラウンドな板に仕上がります。これが面倒な場合は「オールラウンド用」の幅広いシチュエーションで使えるベースワックスを使う方法もありますが、多くはやや保護性にかけるので個人的には硬いワックスと組み合わせると良いと考えています。

こうして作り上げた滑走面は十分に浸透した皮膜層ができており、高い滑走性を維持することが出来ます。が、この皮膜層は滑るほど失われるため、適時ベースワックスを塗って維持する必要もあります。これは一見面倒ですが、一度ベースを作ってしまえば作業自体は割と簡単になります。こうして十分浸透した皮膜層を作り、維持していくことを「滑走面を育てる」と表現したりします。

ここで注意なのですが、ワックスは「それそのものは滑らない」と言う事です。

DSC06479_R 余分なワックスを削り取る各種ブラシ

スキーで滑る際に必要なのは「ワックスが浸透した滑走面」であって、その上に残るワックスは余分なものです。ですので、ワックス作業では必ずワックスをはがし取る必要があります。

この作業を「ブラッシング」と言いますが、ブラッシングの意味はもう一つあり、ストラクチャーと呼ばれる滑走面の微細な排水の為の傷のワックスをはがし取る意味もあります。

ストラクチャーは滑走面をよく見るとわかりますが、非常に微細に細かく傷がついているのがわかると思います。この傷が非常に大切で、滑る上で邪魔な「水」を効果的に排水してくれます。水はまとわりつく性質があり、滑走性に悪影響を及ぼします(表面張力、ゲレンデにできた水たまりに入った事がある人はわかると思います)。それを軽減してくれる構造が「ストラクチャー」です。ストラクチャーを失った滑走面はいくら育ててもなかなか滑走性が上がりません。(濡れた机に下敷きを置き、しっかりと押さえつけてから横に滑らそうとしてもなかなか滑りません。同じ現象が雪の上でも起こります)

かといって過度にストラクチャーを付けてしまうとそれそのものが滑走性を悪くする場合もあります。ストラクチャーは難しいので細かい説明は省きますが、安易にストラクチャーはいじれるものではありません。

話はそれましたがワックスが塗られるとこのストラクチャーはもれなく埋まってしまいます。ですのでブラッシングによってストラクチャーの中のワックスもはがし取る事でより滑走性を高めます。ワックスは必要なのにワックス自体は必要ない、少し矛盾な感じもしますね。

ですが「ワックスが浸透している滑走面が滑る」と覚えれば、理解しやすくなると思います。

なお、滑走面のワックスをすべて剥がし取るのは非常に大変です。慣れないうちはこの作業でかなり苦労すると思います。


これまで「滑走面とベースワックス」について着目して解説してましたが、次に「滑走ワックス」についてです。

滑走ワックスは滑走性を高めることを主眼としており、ベースワックスとの一番大きな違いは添加剤が加えられている事です。この添加剤は多くは「フッ素」で、他にグラファイトと呼ばれる炭素化合物や、ガリウムなどもあります。これらの添加物は水弾きに作用したり、静電気に作用したりと様々です。

ですが一番の大きな目的は「水やゴミを滑走面に近づけない」事です。それによって安定した滑走性を発揮させるのが「滑走ワックス」です。

この滑走ワックスは基本的にベースワックスの上から使います。さらに滑走ワックスは滑るシチュエーションを良く検討した上で使うのが理想です。これは単純に滑走ワックスが高額であるのと、耐久性がベースワックスより劣るからです。しっかり状況にあった滑走ワックスを使わなければその効果は発揮されず、しかも一日滑れば滑走ワックスはだいたい剥がれ落ちてしまいます。

となると「浸透させればいいじゃない?」と考えますが、滑走ワックスに含まれる添加物はそのごく表面に効果を発揮します。浸透させてしまってもそれらの添加物は何も効果はありませんし、値段もかなり高い滑走ワックスなのでわざわざ頑張って浸透させるメリットはありません。

滑走ワックスイメージ 青が滑走面 黄色がワックス 黒点が添加物

図はイメージですが、このように捉えて頂ければ想像しやすいと思います。この表面に付着した添加物により、高い滑走性を発揮するのが滑走ワックスの役割です。特にフッ素は水に対して効果が高いので春雪などの水分が多い時期に用いると一日気持ちよく滑れる事でしょう。

滑走ワックスはこのような原理がありますが、実はレジャースキーであればそこまで必要なものでもありません。タイムを争う競技スキーでは避けて通れない部分ですが、タイムよりも快感を重視するスキーの場合、一日通して滑走性が保てるという事の方が重要です。

ですので敢えて滑走ワックスを使うよりも、ベースワックスをしっかり使って良いベースを作る事の方が重要です。コスト的にも滑走ワックスは高額なので、ベースワックスの扱いに慣れてから使い始める方が良いと思います。

私もたまに使いますが、毎回使う訳ではありません。あらかじめシチュエーション的に「必要だな」と思う時以外はあまり使いませんし、後述の液体ワックスなどを活用してピンポイントで滑走性を維持する方法でスキーを楽しんでいます。パウダーや雨のスキー、初めて訪れるスキー場など滑走ワックスがその効果を発揮するのは、そういった必要である状況が見えた時に使うようにしています。

この他に液体ワックスや、それを使いやすくしたスプレーワックスがありますが、原理的には滑走ワックスに近いものと捉えてしまって構いません。ですので一時的な滑走性は良いのですが、残念ながらその効果は一日、状況では半日も持たないものもあります。スプレーワックスを使う場合でも、最低限あらかじめベースワックスが浸透している滑走面を作っておいた方がより効果は長持ちします。

また、液体ワックスなどは一時的に浸透させるためにコルクなどでこすりあげる必要があります。これが実は結構大変な作業で、アイロンを使ったワックス作業が出来ればやりたくないと思うような作業です。ちなみにコルクでこすらずそのまま使った場合、最悪たった一本滑っただけでワックスが剥がれ落ちてしまう事もあります。

と、ここまではパラフィンが主成分となるワックスについて説明しました。しかし最近では「非ワックス系」というものも存在します。有名なのはザードスのノットワックスですね。

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このタイプは滑走面の表面にフッ素などの被膜を作り滑走性を保ちます。原理的にはテフロンコートのフライパンに近いです。ですので適切に使うと驚くべき効果を発揮し、しかも効果も滑走ワックスなどよりも長く体感できます。特に春雪には非常に効果が高く、扱いも手軽です。

ですが、根本的に「保護性」を無視しているのでこれもできれば保護性の高い硬いベースワックスで滑走面を作った後に使った方が良いです。実際にワックスに添加された状態のものもありますし、ワックスとの併用も推奨されています。

正直なところ、本当に効果が高いのでワックスに不慣れな方にはおすすめできるものでもあります。私も緊急用にいつも携帯しています。

最後にクリーニングワックスですが、クリーニングワックスは極力添加物や不純物のない、扱いやすいパラフィンでできています。よってその保護性や滑走性はあまり期待できませんが、滑走面をきれいにするためには非常に有用です。

これは、クリーニングワックスを滑走面に溶かし込むと滑走面の奥からゴミやほこり、油などを浮かし出してくれるからです。ですからクリーニングワックスは浸透させる目的もないので使う場合は滑走面に溶かしたら軽く固まるのを待ち、すぐに剥がし取ってしまいます。手間はかかりますがかなり滑走面をきれいにすることが出来ます。

 

このようにワックスの種類について説明させて頂きました。私の主観によるものもありますが、概ね把握して頂ければこれからのメンテナンスに生かせる情報にはなると思います。

ワックスは始めるのが少し大変ですが、出来るようになるとゲレンデで一日気持ちよく滑れるようにもなります。実際の施工方法はまた別の機会に説明させて頂きますが、この機会に始めてみてはいかがでしょうか?

スキーとワックスの関係について

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(注)非常に長く理解しにくいかもしれません。あしからず。

スキーボードもスキーもスノボも、その板は雪の上で滑ります。なので、ほとんどの板は雪に対して滑りやすい素材を滑走面に採用しています。

この素材は簡単に言えば「ポリエチレン」でできています。数ある素材の中でポリエチレンが採用されたのはマイナス以下の温度に対して変質が少ないのと加工が容易なこと、そしてワックスとの相性が良いことが大きく採用されている理由です。そのポリエチレンの種類として専門用語的に「エクストリューテッドベース」「シンタードベース」などがあります。

このポリエチレンはワックスと共に使うと非常に強力に滑走性を高めることが出来ます。この原理は様々あるのですが大まかに

・水が張り付く事で損なわれる滑走性を軽減できる(表面張力による滑走性の低減)

・氷が傷つける事で損なわれる滑走性を軽減できる(摩擦力による滑走性の低減)

と、似て非なる二つの要因に対して有効なのがこの組み合わせなのです。


水は0℃で凍ります。凍った水の結晶が積もった状態が雪なのですが、この上を滑るからこそ難しい問題があります。それは雪がさまざまな状況で多様にその状況を変化させてしまう事。なので、滑走面として適切なのは一つのシチュエーションで優れた効果を持つものよりも、多様なシチュエーションに合わせて柔軟に対応できる素材である。という事です。

気温が0℃程度の時の雪はすぐに解けます。滑ると雪と滑走面の間に水がまとわりつき、滑りが悪くなります。そこで滑走面に撥水性を持たせれば水をはじき、滑走性を維持できます。

気温が非常に寒いマイナス10度の時は雪は硬く凍ります。その硬い結晶はやすりのように滑走面を削り、滑走性が悪くなります。そこで滑走面に削れにくい能力を持たせれば、滑走性を維持できます。

この二つの仕組みを滑走面に与えられるのが「ワックス」なのです。ワックスのその成分は「パラフィン」で、簡単に言うとロウソクのロウと同じ成分です。このパラフィンに様々な添加物を与えたり、そのものに工夫をすることで大変多くの種類のワックスが生み出されています。

DSC06473_R 例 写真はSWIX社などのもの。ワックスとその種類

簡単には、ワックスは気温によってその種類が分けられています。

・溶けやすい雪に対して撥水性を重視したもの(高温度用、写真では黄色のワックス)

・硬く傷つける雪に対して保護性を重視したもの(低温度用、写真では青いワックス)

・その中間となる1~3種類のもの(中温度用、写真では赤いワックス)

が多くのワックスメーカーで用意されています。さらに幅広いシチュエーションに対応できる「オールラウンド用」と、滑走面のクリーニング目的で使う「クリーニング用」があります。さらにその用途で「ベース用」「滑走用」などがありますが、今回はその説明は割愛します。

雪の状況に合わせて滑走面にワックスを塗る事で多様なシチュエーションに合わせて滑走性を維持できるのが、このポチエチレン+ワックスの最大の強みです。だからこそ一般のユーザーにはわかりにくい悩みが同時に存在しています。

それは「どのワックスをどのように使うか」

という事です。


ワックスの塗られていないポリエチレンのみの滑走面は、初期的には滑りますがどんどんその滑りは劣化していきます。ポリエチレンは低温や高温に強い反面、劣化しやすい性質があるからです。スキーではこれを「滑走面が酸化する」「滑走面が焼ける」と表現していて、横文字だと「ベースバーン」と言います。

この劣化は止める手段がなく、たとえどのような滑走面でも時間が経てば劣化します。さらに対候性に弱い性質を持つために、屋外で使うスキーは何もしなければどんどん劣化します。劣化してしまった滑走面はそのままではワックスを浸透させることが出来なくなっており、上記の滑走性の維持や保護性の向上が出来なくなるばかりか、より滑走面が劣化していきます。

この劣化を食い止めるのが、またワックスの役割です。劣化の大きな原因は水と空気と紫外線ですが、そのうち水と空気に関してワックスが塗られていれば、その劣化を大きく食い止めることが出来ます。ワックスによるごく薄い皮膜のような層によって無用な水や空気が滑走面に触れなくなり、滑走面はより長くその性能を維持することが出来ます。

ですが、このワックスが浸透して出来た層は0.2ミクロンとも言われる非常に薄い層で、これは滑走によって徐々に失われていきます。よって、ワックスは適時塗り足して浸透させなければなりません。

では、削れにくくする「保護性」重視のワックスを使えばワックスははがれにくくなるでしょうか?答えはその通りですが、しかしデメリットがあります。保護性重視のワックスが浸透している滑走面は滑走性を重視する柔らかいワックスが入りにくくなります。したがってワックスをバランスよく浸透させることが一番大事になります。逆に滑走性のワックスだけが浸透している滑走面は低温時に滑走面が保護しきれずやすられて削られ、せっかくの浸透層がなくなって無防備な滑走面を晒して劣化させてしまいます。(良くスキーの板が滑走後に白く変色しているのはこれが理由です。なので圧が最もかかる足元のエッジ付近が良く白く変色して劣化します)

このバランスを簡単にしたものが「オールラウンド用」と呼ばれるワックスです。オールラウンド用ワックスは適度に滑走性と保護性を持っているので扱いは楽です。しかしシーズン通した幅広いシチュエーションすべてに対応できるほどの柔軟さは持っていませんし、多くのオールラウンド用は滑走性を重視して配合されています。より適した滑走面を求めるならば、数種のワックスを使い分ける方がより良い滑走面になります。

この場合、浸透させる順序があります。基本は高温度用の柔らかいワックスから低温度用の硬いワックスの順番に使います。さらに滑走面は1度や2度の作業ではワックスがしみこみきりません。何度も浸透させることで一様に均一な、様々なシチュエーションに対応できる滑走面が出来上がります。これを「滑走面を育てる」とも言います。

このようにして作った滑走面は滑走性を維持しつつもしっかりとした保護性を発揮し、多少のシチュエーションの変化でも諸ともしない良い滑走面になります。またしっかりワックスが浸透している事で劣化に対しても効果を発揮し、その寿命は格段に長くなります。あとはその都度時期や雪に合わせたワックスを塗り足していくことでシーズン通して快適なスキーを楽しむことが出来ます。


 

このようにスキーとワックスは切っても切れない関係にありながら、その原理的には非常に理解するのに難しい問題があります。しかしこれらの原理的な部分を理解しておくと、自分でチューンナップを行う際にワックスの選択などで判断しやすくなります。

次回はそんなワックスの具体的な種類と使い分けについて説明したいと思います。

 

スキーボードの板の種類(形状)について

スキーボードは短いですが、非常に豊富な板の種類があり、それぞれにその性能は違います。見た目にはわずかな差ですが性能が異なるのはスキーボードが短いというのが一番大きな理由です。

では、どのような種類があるかと言いますとまず形状の違いから3種類があります。

板の形状の違い

現在主流になっているのは「ツインチップ」形状で、この形状は様々にメリットがありフリーライドと呼ばれる長板を含むスキーの世界では多くに採用されている主要な形状です。この形状の最大の利点はテール部が反りあがっている事であり、前方向だけであったスキーが後ろにも自在に動け、その可能性を大きく引き出してくれました。

対して従来のスキーや、長板では主流なのがテールカット、もしくはラウンドカットです。テールカットは最も従来に近い形であり、その特徴は前に滑る目的であること。ラウンドカットはコンフォートなスキーで良く採用されている形状でテールカットよりも板の取り回しが楽になっています。

このテールカットとラウンドカットは現在のスキーボードではあまり採用されていない形状です。特にテールカットのものはほとんどなく、あったとしても非常に古い板であることが多いです。

これらの3種類を具体的にメリット、デメリットを上げると

ツインチップ

メリット:取り回しに優れ、方向を気にせず扱える   デメリット:滑走性や安定性が他に比べて劣る場合が多い

ラウンドカット

メリット:滑走性を犠牲にしない程度で取り回しが良くなっている   デメリット:後ろ向きにも扱えるが限界がある

テールカット

メリット:滑走性に優れ、板の本来の性能を最も発揮できる   デメリット:取り回しが悪く前方向にしか要さない

となります。単純にはツインチップとテールカットがあり、そのいいとこどりがラウンドカットだと理解してもらっても良いでしょう。尚、GRの板で言えばWhiteLandとForFreeはツインチップ形状、SnowFairyがラウンドカットになります。

スキーボードの場合、元より短いためにその滑走性を維持しようとするとどうしても太くする必要も出てきます。これは接地面積を増やして安定させる意味が大きいですが、これも違いがあります。

一般に太いものは「ファット形状」細いものを「ナロー形状」と言います。その境はだいたいサイドカットのセンター幅が80~90mmを超えるかどうかであり、それ以下は「ナロー」、それ以上は「ファット」となります。

ファット形状は素晴らしい安定感をもたらしますが、反面板は反応が鈍く取り回しにくくなります。ですので「太ければよい」と言うものでなく、太すぎるものは曲がりにくく、逆に扱いにくくなります。ですがパウダーなどのシチュエーションでは太いものの方が有利で、他にも左右に対して安定性を求めるジブなどでは太いものが好まれます。

対してナロー形状ですが、これは最近少数にはなっています。板の反応が鋭く動きにすぐさま反応します。ファットに比べて安定性は劣りますが、ダイレクトな操作感を求めるのであればナロー形状はファットにはない十分な操作感を与えてくれます。安定性に対してデメリットがあるため近年ではあまり見かけませんが、そのクイックな乗り心地はスキーボード本来の軽い乗り味を最も表現しているものだと思います。

注意点としてこの太さの違いは体格によっても感覚が変わります。特にスキーレベルが低い方や小さい方にとっては太い板は扱いにくくなりがちです。かなり使用感に差の出る部分であるので板選びの際には注意したい部分です。

なお前述しましたが、近年であればナロー形状は少数派となっています。それは昨今のファットスキー人気と安定性の向上を目的としたもので、センター90mmの太さでもナロー形状に劣らない使用感を与えてくれる板もあります。GR板に関しては使用感と取り回しを重視しセンター90mmのモデルを展開しています。

板の各部の名称

さらに板の構造として「サンドイッチ構造」と「キャップ構造」があります。これは製法の違いですが、乗り味にも影響があります。

サンドイッチ構造は板が重くなりやすいデメリットはありますが、板全体のフレックスやトーションを設計しやすく、しっとりした乗り味の板が多くなります。たわませてエッジを使う使い方に適しており、高額になりやすい意味もあり上級のモデル向きな構造になります。

キャップ構造は構造が簡単なために初、中級モデルで良く採用されますが、軽さや耐久力ではサンドイッチ構造よりも有利で、エッジの利き具合もこちらの方が優位となる場合もあります。価格と軽さを重視するスキーボードでは主流の構造で、最近ではサンドイッチ構造に引けを取らないものもあります。


このように板の形状として

ツインチップ ラウンドカット テールカット

その太さとして

ファット形状 ナロー形状

そして以前説明しています構造としての違い

サンドイッチ構造 キャップ構造

これらを組み合わせてスキーボードは様々に商品が展開しています。実際に板選びの際に参考にすると、自分に合った板が見つけやすくなると思います。またこれらの言葉の意味が理解できるとカタログなどで説明される板の性能などが想像しやすく、複数の板を所有した場合でも遊びやシチュエーションに合わせた板をチョイスしやすくなると思います。

トーションについて【もっと詳しく】

前にフレックスとトーションについて触れました。(参照:こちら

フレックスとトーションは切っても切れない関係で、そしてフレックスについて詳しく解説させて頂きました。(参照:こちら

そして今回はトーションについての詳しい説明です。トーションに関してはかなり理解するに難しい点もありますが、これを理解することが実は「スキーボードがなぜ短いだけのスキー板ではないのか」を説明する為にも大事な要素となります。

 

さて、トーションですがつまりは「板のねじれの強さ」です。スキボに限らずスキー板もスノーボードも板のねじれ──トーションがあり、これがさまざまに板のバリエーションと乗り味を出しています。

フレックスとトーション板の各部の名称

トーションとフレックスの関係性はフレックスの部分でも説明していますが、このトーションを説明するのにもう一つ大事なのがサイドカットの形状です。近年のスノーボードを含むスキー板はサイドカットが付けられたいわばしゃもじのような形状になっています。この形状のお蔭でスキー業界では大発明となった「カービングターン」が生まれ、倒すだけでも誰でも特別な技術を必要とせずに曲がる事が可能になりました。

このカービングターンに適した形状を従来のまっすぐなストレート形状と区別してカービング形状とも呼びますが、この形状が非常にトーションと深く関係しています。

 

一般にトーションが強い板はエッジが利きやすく、弱い板はエッジが利きにくくずれやすい特性があります。それはターンの時に板が傾いた際にトーションが強いと板がねじれずそのまましっかりエッジに力が伝わり、トーションが弱いと板がねじれてエッジが立たず板がずれていきます。

それだけでなくトーションが強いとサイドカットの頂点(上の図のA,C)にはターン中に大きなねじれの力が加わりますがねじれに耐えるのでそのまま板は深く深くたわませられたり、エッジを強く効かせることが出来ます。一方トーションが弱いとA,C点が足元に比べて大きくねじれてしまい、足元よりも先端側のエッジは利きが弱くなります。同時に板がたわみにくくなるのでターンは浅くなったり、横にずれたりします。

ターン中トーション

この図はイメージ的なものですが、サイドカットの頂点に雪面が引っかかって板がたわむとイメージするとわかりやすいかもしれません。

つまり、トーションの強さでエッジの利きの強さや板のずれやすさ、板のたわみやすさや扱いやすさを表現しており、各社の様々なモデルの板はどのようにねじれてどのようにたわませるかを考えて作られています。


 

  • スキーレベルとトーションについて

スキーレベルとトーションは重要な関係があります。結論から言うと

初級⇒トーションが弱いもの

上級⇒トーションが強いもの

をお勧めします。トーションが強くなるとどうしてもエッジの利きが強くなりコントロールが難しく、また脚力自体も必要になってきます。またトーションが強い板はフレックスが硬い傾向にあるため反発も強く、スキー全体のコントロールが出来るレベルでないとただただ滑りにくい板になります。

トーションの弱い板はずれやすい反面マイルドで、ブレーキ操作もしやすい傾向にあります。限界域での性能はやはり劣りますが、それ以上にもてあますような挙動を見せない分楽に扱えます。

もしも板がどうしてもエッジが強く感じたりする場合は、おそらくエッジが立ちすぎているか、トーションの合わない板を履いているかどちらかの理由になると思います。これを改善させるには「ダリング」と言うエッジを意図的に落としてずれやすくするチューニングを行えば改善されますが、ダリングしても扱いにくい場合は板を変える他方法はありません。

 

  • トーションの利きやすい板とは?

トーションの利きやすい板はフレックスの強い板、そして幅の狭い板です。もともと板が硬いフレックスの強い板はトーションも硬くなり、また細い板は構造上ねじれにくいためにトーションが利きやすくなります。このような板は非常に動きがクイックでスキーボードにおいてもこの傾向は同じものです。また板の構造上の部分、多くの場合サンドイッチ構造よりはキャップ構造の方がトーションが強くなります。(ただしサンドイッチ構造の板はキャップ構造に比べて非常に細かく板のフレックスやトーションが調整できるのでその限りでない板もあります)

 

  • スキーボードにおけるトーションとは?

スキーボードはその安定性と滑走性を確保する為に長板に比べて幅の広いものが主流です。実はこの点が非常に大きな意味を持ちます。これは幅の広い板は構造上トーションが弱くなりやすく、トーションを確保する為に板が硬く、重くなる傾向にあるためです。

しかし幅広の板でフレックスが弱いと驚くほどペラペラした弱い板になります。こうした板は体重が軽い型や女性、筋力のない方には扱いやすいのですが体重のある方や筋力のある方には安定感のない非常に足元が不安定な板に感じてしまいます。

これは板が短いスキーボード特有のもので、長さのある長板のスキーなどではここまで極端に感じることも少ないものです。なのでスキーボードではわずかな板の幅の違いや硬さの違いが大きく滑走感に影響します。したがって従来のスキーボードが幅の広いものほど硬く、上級指向にあったのは不安定なトーションを確保する為に仕方なくフレックスも強くしていたという影響もあります。

しかし最近では技術向上もあって乗りにくいほどフレックスを固めずにトーションを確保した板もあります。またダリングの活用によって昔よりも乗りやすい板が作れるようにもなっています。

 

  • トーションの確かめ方

フレックスと違いトーションは乗ってみなければ確かめることが難しく、しかも前述のダリングやチューンナップ、雪質などによって変わるために簡単に確かめる方法はありません。おおむねフレックスの方さから推測する他ありませんが、試乗会などがあればそこで確かめるのが一番良い方法です。

適切なフレックス、トーションの板は非常に扱いやすく、快適に滑れます。自分がどういった滑りを好むのかを把握しておくと板選びの時に差を体感することが出来ると思います。


 

トーションは感覚的な部分も多くはっきりと感じることも難しいのですが、今後「ダリング」や「ビベル」と言ったチューンナップに手を伸ばした場合には少なからず知っておいて損のないものです。また各メーカーがフレックスを固めすぎずにトーションを確保する為に様々に工夫していますので、板選びの際にも役立つと思います。

最後にトーションをまとめるならば、ターン中の板のたわみとエッジの利きを左右するのがトーションの役割と考えて貰えば良いと思います。非常にわかりにくい解説になりましたが以上です。