スキー板のエッジとサビについて

メンテを行う上で一番目についてわかりやすい不具合が「サビ」ですね。

スキー板は曲がるために板の周囲に「エッジ」と呼ばれる金属が外周に取り付けられています。これがあるから止まれるし曲がれるのですが、これが非常に錆びやすい!なのでメーカーやモデルによっては錆びに強い「ステンレスエッジ」を採用しているものもありますが、多くは鉄である「スチールエッジ」です。

となると、ステンレスの方が錆びないから良いんじゃいない?って思いませんか?

確かにステンレスであればメンテナンスフリーな板が作れそうです。ですが広く普及していないのには理由があります。ステンレスは鉄よりもコストが高く、メリットが小さいのです。

ステンレスと言えば一般では錆びない高性能な合金の代表みたいなものですが、非常に錆びにくいだけでスキーのエッジに使うには優先的に採用されるほどのメリットがないのです。ステンレスは鉄に比べて硬い金属なので加工しにくく、硬さ故に衝撃で割れるというデメリットを持ちます。鉄は錆びますが加工が容易で安価、衝撃で割れる事も少なくステンレスよりもやや元に戻ろうとする力も強いです。スキーのような衝撃を常に受けるシチュエーションで使うにはちょっとステンレスでは都合が悪そうです。

さらにスキーのエッジは削ってチューンナップします。これも削りにくいステンレスでは非常に作業性が悪く、細かなチューニングも困難になります。スキーの板は上級の方ともなると0~2°の角度で角度をつけたりしますが、ステンレスではこの作業が非常に大変です。

加えてスキーのエッジは滑るとステンレスであろうが鉄であろうがすり減って角が丸まってきます。丸くなったエッジは研がないと曲がれなかったり止まれなかったりしますが、加工が難しいステンレスでは削れにくくこそあれ、一度削れてしまえば再び研いで元に戻すのが大変です。もし包丁を研いだことがある人ならばわかると思いますが、鉄の包丁は研ぎやすく切れ味も鋭く、ステンレスは研ぎにくく切れ味も優れません。(プロの料理人などが包丁にわざわざ鉄製の包丁を使うのもこのような理由です)

このように、ステンレスはスキーのエッジに採用するにはデメリットがあって使いにくいのです。鉄のデメリットは「錆びる」と言うことだけと言ってよく、それならと多く採用されています。

ちなみにGR ski lifeの板はスチールエッジを採用しております。メンテナンスが必要ですが、細かくチューンのできる鉄の方が良いだろうと検討しての採用です。

では、錆びさせないためにはどうしたら良いか。これは水分をできるだけ触れさせないという事につきます。滑った後はタオルなどでしっかりと拭き取って乾かす、これにつきます。最近ではシーズンに入るとスポーツ用品店で塗りやすく加工されているさび止め剤もあります。こういったものを塗っておくのも良い方法だと思います。

それでもサビは出ます。ですが初期のサビは簡単な作業で落とすことが出来るのでそんなに怖いものではありません。怖いのは「錆びたまま」にしておくこと、サビはサビを呼び、もらい錆びと言うサビに触れたエッジをさらに錆びさせます。最悪構造にまでサビが入ると修復は出来ないので、普段は濡れたまま保管をしないようにして、たまにエッジをチェックしてサビがあったら落とす。これだけで十分何年も良い状態を保つことが出来ます。

では、次回はその「サビの落とし方」をお伝えしようと思います。

このエントリーをはてなブックマークに追加