フレックスについて【もっと詳しく】

前回(→こちら)にて板のいろいろな言葉とその意味をご紹介しましたが、フレックスとトーションに関してもう少し説明が必要なので今回は踏み込んで説明します。まずは身近なフレックスについて解説しましょう。

では前回のこの画像を参考にします。

フレックスとトーション

それぞれの言葉が何を意味しているのかはご理解頂けていると思います。では、これが実際滑っていてどのように影響があるのか?と言う部分をまず説明します。

<滑走とフレックス>

フレックスはその板の「乗っている時の安定感」に繋がります。フレックスの弱い板はふにゃふにゃと安定しませんし、強い板はガチッとしていて扱いにくさを感じます。フレックスは自身の体重にも影響があるのでフレックスが弱いと言っても体重が軽ければ硬く感じたり強く感じたりします。

このフレックスはキャンバーと相まって車で言うサスペンションのような役割もあります。要するに足元にばねがあると思ってもらって差し支えありません。このばねがショックを和らげたり多少の凹凸を軽減してくれたり、ターンを簡単にもしてくれます。

スキーの板はこのフレックスをどのように表現するか。それによって多種多様な板が生まれていると言っても過言ではありません。

一般的に初心者向きの板ほどフレックスは弱く、上級者ほど強い板になります。それは初級者は体重以外で板をたわませられないので過度なフレックスは邪魔なものでしかなくなりますし、上級者は遠心力なども利用して滑るので体重以上のものを支える力が必要になりますし、滑走スピードも上がるので雪面からのショックに耐えうる強いフレックスが必要になります。

したがって一般で言われる初心者用、上級者用とはこのように大まかに性格が違うのです。なので上級者モデルだからとハイスペックで素晴らしい板だと思いきや、実際滑ってみるとあれ?滑りにくい、というのは良くある話なのです。

ちなみにこのフレックスの強い、齢を一般では「硬い板/柔らかい板」と表現しています。

→フレックスの強い板=硬い板
→フレックスの弱い板=柔らかい板
<フレックスを選ぶには?>

フレックスに関して選ぶには何か指標となる数字があればよいのですが、これはメーカーとしても具体的な数字で示しているものではなくユーザーの主観と経験で判断する他ないです。それはレベルや体格などで要求されるフレックスが異なる事と、板によっては板のノーズとテールでフレックスが異なることも良く有るからです。

したがってメーカーパンフレットなどで示されている情報からフレックスの強さを検討して、実物があれば自分で硬さを確かめるほかありません。(注:店頭などで許可なくフレックスを確かめるために板を押したりしてはいけません。確認する場合には店員さんにきちんと許可を頂いてから確かめましょう)

ですが基本的に

初級モデル=フレックス弱め  <  上級モデル=フレックス強め

となっている事が多いので、そのメーカーがどういったユーザー向けに提供しているか?でもある程度判断できます。また目安的に自分の滑走レベルを考えた時に「安定して止まれるか」「どんなスキー場のどんなコースでも不安なく滑れるか」を目安とするとレベルの判断がしやすいと思います。

初級→安定して止まることが出来ない、もしくは不安がある
中級→安定して止まることは出来るが、コースによっては滑れない場合もある
上級→ほとんどのコースで不安なく滑ることが出来る
<レベル、滑りにに合わない板を選ぶデメリット>

軽く前述していますが、レベルや滑りに合わない板を選ぶと大きくデメリットを感じます。具体的にどうかと言うと

 

「板が硬く感じる場合(フレックスが強い板を履いている場合)」

・滑走感が悪く疲れる

・ちょっとしたギャップや凹凸で跳ね飛ばされる

・ターンがしにくい(曲がりにくい)

・板がバタつく

・板がいう事を聞かない

・エッジが引っかかる

「板が柔らかく感じる場合(フレックスが弱い板を履いている場合)」

・足元が安定しない(フニャフニャ感がある)

・ターンの切り替えしがしにくい

・スピードを出してターンをすると怖い

・止まりにくい

・滑っていて板の振動を感じる

・エッジが利いている感じが薄い(板がズルズルと動いてしまう)

 

以上のように感じます。実際はこの限りではありませんが、多くはフレックスがあっていないことが原因のものでもあります。

<となると、初級なら柔らかく、上級なら硬いのを選ばないといけないの?>

と思うかもしれませんがそうでもありません。それは自身の滑走スタイルにもよるからです。むしろおすすめするのであれば

「初級者は柔らかいものを、上級者は好みで」

となるでしょう。硬い板はどうしても扱いにくさが目立ってしまいますが、柔らかい板はシチュエーションや滑り方をコントロールできれば大きくデメリットになる事もないからです。柔らかい板は構造上軽い板になる事も多く、その点でも初級者にお勧めするのであれば柔らかい板は扱いやすいでしょう。上級者ならば自分の好みの硬さもわかるでしょうし、さらに別で解説するトーションも絡んでくるとその板選びは非常に奥が深いものになるので、目安的にこれまでの話を念頭に置いておいて板選びの参考にして頂ければと思います。
以上、フレックスのより踏み込んだ解説でした。別記事となるトーションと合わせて読んで頂ければより板のスペックなどの見方が分かり、自分に合った板選びの目安になると思います。

スキーのキャンバーとロッカー、フレックスとトーションについて

前回(こちら)はスキーボードの各部の名称とその説明をさせて頂きました。今回はその続き、「キャンバー」と「ロッカー」、そして「フレックス」と「トーション」についてです。

という訳でまずはまたわかりにくい図を・・・

キャンバーとロッカー

キャンバー、ロッカーは板に意図的につけられたたわみの事です。静止状態で置いておくとスキーの板の多くは反っていると思います。これがキャンバーです。ロッカーはキャンバー同様に元々つけられたチップの大きな反りなのですが、このロッカーの仕組みは近年のスキー業界ではトレンドとなっています。

これらの話をする前に必要なのが「有効接雪点長」です。図で示していますが、滑走時に雪面に触れるエッジの長さをそういうのですが、一般ではそのまま板を置いた時に板と雪が触れるノーズ、テールの点を「接雪点」と言います。多くの板は板の一番幅の広い箇所と接雪点はほぼ同じ位置になり、その位置関係によってターン性能などが大きく変わってきます。

先に説明の簡単なロッカーについて。ロッカーはこの接雪点を意図的に手前にし、それ以上前の部分を浮かせた構造になっています。これが何を意味するのかと言うと深雪やパウダースノー、荒れたゲレンデなどにおいてあらかじめノーズが浮き上がっているために自力でノーズを持ち上げるような動きや操作をすることなく、普通の滑りで足を取られる事無く滑走が出来ます。しかしロッカーが無いとノーズが雪に埋まってしまう為ノーズを浮かせるように板を引き上げなければならず、しかも後ろ気味に重心をかけて滑るので通常の滑りと違った操作が必要になります。(これが割と大変なのです)

キャンバーロッカー補足

つまり簡単に言うと、ロッカーのある板は整地されていない状況でも楽に滑れるメリットがあるのです。しかしデメリットもあり、構造的に有効接雪点長が本来の長さよりも短くなってしまいます。なので板としての安定性は同じ長さの普通の板に比べて不安定になりやすく、ターンを楽しむ滑りには向かない傾向にあります。最近だと意図的にごくわずかのロッカーを入れて扱いやすくした板も多く、従来のものよりより楽にターンが楽しめる板もありますが、極端なロッカー形状の板になればなるほどターン性能は落ち、普通のゲレンデでは扱いにくくなります。

ですが、パウダーなどのシチュエーションでこれに勝る構造は他にはありません。そして短く構造的に作りにくいスキーボードであってもこの構造を持った板もあります。

 

キャンバーはロッカーとは違いずいぶん昔からその構造として存在しています。これがあることで効率的にノーズやテールを雪面に押し付ける事が出来て、板のレスポンスも上がるからです。エッジを十分に使えば使うほどターンは安定して曲がることが出来るようになります。キャンバーの無い板だと足元のエッジしか雪面に押し付けることができなく、せっかく板の長さを利用することが出来ません。

キャンバーはその板の硬さ、ねじれの強さも大きくかかわってきます。これらを「フレックス」「トーション」と言います。

フレックスとトーション

フレックスは板のたわみの強さの事です。フレックスが強い板ほど「硬い板」、弱い板は「柔らかい板」になります。トーションはねじれの強さで、最近の幅の広い板では非常に重要な部分となっています。

キャンバーのある板はフレックスの強さによってエッジに掛けられる力の強さ、板そのものの反応、レスポンスが変わってきます。一般に上級者ほどフレックスの強い板が好まれますが、反応性が高い板の方がさまざまなシチュエーションで使いこなせるといった意味があります。ですので初級者はあまり機敏な板よりもゆったりして優しい板、フレックスの弱い板の方が楽に滑れます。

トーションはいったい何に影響するかと言うと、弱ければ板はターン中にずれやすく、強ければエッジが立って切り込むように曲がれます。最近主流のカービングと呼ばれるずれないターンはトーションの利いた板でないと板がずれてしまってうまくカービングになりません。ですがカービングが必要でない滑りではトーションの利いた板はエッジが利きすぎて滑りにくく、曲がりにくくなります。

そしてトーションはそれ単体だけを硬くしたり柔らかくしたりすることがなかなか出来ません。板自体の硬さであるフレックスが大きく影響するためで、基本的にフレックスが強い板は、トーションも強くなる傾向にあります。メーカーは様々に工夫してこのバランスをとるために、板の構造としていろいろなパーツを取り付けたり凹凸をつけて表現しています。またトーションは幅の広い板ほど利きやすく、狭い板は影響が小さくなります。

これらのキャンバー、フレックス、トーションがうまくミックスされて様々な板が出来ています。同じ大きさ、太さの板でもこの3つが違うだけで全く別の板に感じられます。

ちなみにスキーボードでは板の幅が大きいためトーションが重要ですが、短いので一般的にはトーションは強めになってしまいます。ですのでメーカーは工夫してフレックスを柔らかくしてトーションも柔らかくする構造を優先して作っています。キャンバーもつけすぎるとエッジが利きすぎてしまうので緩やかのなものが多く、見た目に差異が感じられにくくなっています。

尚、グラウンドトリックを多用するスタイルの方であれば、トーションの強くないもの、キャンバーの緩やかなものが扱いやすくなります(ずらしやすくなるので)。滑走がメインの方ですと張りのあるフレックスが強めでキャンバーのしっかりついた板が良いでしょう(エッジが利かせやすく、反応性が良い)。

このようにこれらの言葉の意味と構造を理解すると自分が欲しい板の構造が何となくつかめると思います。

 

さて、キャンバーとロッカー、そしてフレックスとトーションですが、実際の所見た目では良くわからないのが実情です。乗ってみなければわからない、しかも体格や体重によっても印象が変わるために誰かが良いと言った板があんまり良くなかったり、自分の好きな板が他の人に好まれなかったりという事があります。ですが知っておくとより自分に合った板を選ぶことが出来るので、ただでさえ高価なスキー道具ですから後悔する事無く買う為にも知っておいて損は無いものだと思います。

以上、わかりにくい点もありますが構造の説明でした。

スキーボード板の各部の名称とその意味について

スキーボードに限らず、スポーツでは多く専門用語が用いられますが、ではその言葉の意味は?と思う方も多いでしょう。カタログやパンフレットを読んでもハテサテ?な単語ばかり。

ですが、理解しておくとそれがどのような板で自分に合うかどうか?が何となく見えるようになってきます。そこで今回は各部の名称を解説してみたいと思います。

板の各部の名称

わかりにくい図で申し訳ないのですが、以上を参考に解説します。

ノーズ・テール

→板の先端、もしくは後端。ノーズはトップとも言う。

キャンバー

→意図的に作られた板全体の反り。板の機敏さや乗り心地に関係します。(別記事にて詳しく解説します)

チップ

→ノーズ、もしくはテールの反りあがり。チップが大きいと深い雪や荒れた雪でも引っかかりにくくなりますが、大きすぎると逆に抵抗になる場合もある

サイドカット(サイドカーブ)

→上面図のようなしゃもじ型の形状の構造がどのようなものか示す。図の場合A-B-C Rx.xmとなっているが、ノーズの幅の最も広い所、センターの最も狭い所、テールの最も広い所が何mmかを示す。GR板(ForFree)の場合113-90-103なのでそれぞれAが113mm、Bが90mm、Cが103mmとなる。Rは次にて説明。

ラディウス

→その板が半径何mの円弧と同じ深さのサイドカーブなのか示す。一般に数字が小さいほどクイックに曲がり、大きいほど緩やかに曲がる性質になる。ForFreeの場合はR9.7mなので半径9.7mくらいの深さの円弧のサイドカーブと言える。スキーボードの場合7~9mが平均的で、一般の長板の15~20m比べてラディウスは小さいのが一般的。ラディウスが大きい板は曲がりにくく、ラディウスが小さい板はまっすぐ滑っていてもキョロキョロと動きやすいデメリットがあるが、板のたわみやすさなども関係するため目安としての数字である。

センターマーク

→メーカーが推奨する位置で、示し方、名称はそれぞれメーカーで異なることが多い。この位置を参考に金具を取り付けたりブーツの位置を合わせると板の本来の性能が発揮されやすくなる。逆にこの位置を参考に好みで位置を変えることで乗り味が変化し、板の性格も変わる。一般的にはブーツ側に示されているブーツセンターに合わせるように調整するのが良い。このセンターマークよりも前にブーツセンターを合わせたセッティングを「セットフロント」、後ろだと「セットバック」と言い、ゲレンデの状況やスタイルにあわせて簡単に調整できる金具も売られている。

<参考:ブーツのブーツセンター表示>

DSC06633_R わかりにくいですが中央部にある線がブーツセンター。これもメーカーによって示し方が変わります。

芯材(コア)

→構造の要となるもので、多くはウッドコアと呼ばれる木製、もしくは化学合成素材(ポリウレタンなど)が用いられる。この芯材によって板の性格は大きく変わり、一般的にはウッドコアの方が優れた性能を発揮することが出来るとされているが、技術革新のために合成素材のものでも十分な性能を発揮するものもある。この芯材によってほとんどその板の性格が決められるため、各社とも心材をどうするかは重要な開発のキーポイントになる。近年ではカーボンを利用したものや、チタンなどの軽量高剛性金属を複合的に用いるものもあり、ここ数年でさらなる進化をすると思われる。スキーボードでは比較的安価で性能を出しやすいポリウレタンコアが主流だが、ウッドコアのものもある。心材は値段にも大きく影響し、値段的にはウッドコアの方が高くなる。

トップシート

→板の表面の事。多くはプラスティック系の素材が用いられる。トップシートの張り方で以下の構造に大きく影響がでる。

構造(サンドイッチ構造:キャップ構造)

→トップシートをどのように張るのかでその構造は大きく「サンドイッチ構造」と「キャップ構造」に分かれる。サンドイッチ構造は芯材をトップシートと滑走面で挟んだ構造で、その横にはサイドウォールと言う素材が張り付けられる。キャップ構造は芯材を丸ごとトップシートで覆って滑走面に張り付ける構造。サンドイッチ構造はコスト的に高くなるがその乗り味や硬さなどを比較的自由に設計できる。キャップ構造は比較的安価に作れ、十分な強度を期待できる。お互いにデメリットもあり、サンドイッチ構造はその強度と重さが、キャップ構造は細かい設計としなやかさがデメリットとなるが、この二つを組み合わせた構造の板も存在している。軽さと強度を求められるスキーボードではキャップ構造が主流だが、ハイパフォーマンスなモデルではサンドイッチ構造のモデルもある。

滑走面(ソール)

→板の裏側の事。滑る為に最も重要なもので、昔は黒一色が多かったが近年グラフィックが入ったカラフルな滑走面も多い。滑走面はポリエチレン系の素材で作られており、その素材によって、またその素材に添加されるものによってその滑走性とメンテナンス性が大きく異なる。多くはエクストリューテッドと呼ばれる滑走面で、更なる滑走性を求めるモデルには高価なシンタードと呼ばれる素材が用いられる。劣化や滑走性維持のためにワックスなどが必要なため、そのまま何もしないで使うのは出来るだけ避けた方が良い。参考→http://grskilife.net/mente/スキーボードクリーニング(リムーバー編)/

エッジ

→板の周囲に貼られた金属のパーツの事。エッジはターンしたり止まったりするために必要なもので、これによっても滑りは大きく変わる。エッジがあると滑りにくいと思われる方も多いと思うがその場合は適切にメンテナンスされていない可能性が多い。特にエッジの短いスキーボードは短いが故にエッジの影響が出やすく、これが原因で滑りにくいと思われている誤解もある。(もちろんGRはそういった部分もサポート致します)

サイドウォール

→サンドイッチ構造の板の横面をふさぐ素材。キャップ構造には構造上必要が無い。これがあるか無いかである程度構造の判断は出来る。