ダリングとダリングマーク

 

 

 

 

KIMG0416

*以下の作業はご自身の責任において行って下さい。性能向上の保証となるものではなく、間違った加工を行った場合、その復旧には実費が必要となる場合があります

「ダリング」と言う作業をご存知でしょうか?

「ダリング」は板のエッジを意図的に削り落とし、エッジが無用に引っかからないように行う「加工」です。

具体的にはエッジの両端に近い部分を数センチ、紙やすりなどでわずかに削り落とすだけの難しい作業ではありません。しかし一般的ではないし、簡単に出来る作業ではないのです。

と言うのも、どこまでエッジを落とすかで板の乗り味がかなり変わるだけでなく、削り過ぎ等加工に失敗した場合、簡単には元に戻せないからです。元に戻す場合は専用の道具を使ってエッジを削って復活させる以外に方法は無く、その作業は経験者でないと難しい作業です。

これらの問題があって一般でもあまり耳にしませんが、しかし重要な作業です。特に買ったばかりの板はスキーボードに限らずなんでも同じですがエッジが端から端まで立っていて、そのまま使うとエッジが引っかかって乗りにくいです。(*一部加工済みで売られている商品もあります)

特に問題になるのがスキーボードで、板が短いスキーボードはエッジの影響を受けやすく、他の長板などに比べてダリングの必要性が高いものです。

 

実は、このエッジが引っかかるというのがスキーボード(ファンスキー)が廃れた理由の一つだったりします

 

試しに滑ってみたらエッジが引っかかって滑りにくい。そうなればやめてしまうのは当然です。ならば最初からダリング処理を行っておけば?と思うのですが、ダリングは手作業で手間のかかるものなのです。

しかし、GR板は全てダリングしてあります。これは上記の問題を解決するためのもので、プレチューン作業に含まれて行われています。

ダリング

GRの板はそれぞれ「ダリングマーク」が示されており(写真の▲マーク)、そこから外側に約2cmの個所から先をダリングしてあります(やすりでエッジを落としている)

これはプレチューン動画内でもご紹介していますが、この加工があるのでGR板は最初からエッジがひっかかって滑りにくい!と言う問題が少なくとも解決されています。

もし、これでもエッジが引っかかるようでしたら、このダリングマークを基準に少しずつ紙やすりでエッジを落としてあげるとより好みの感覚になります。ダリングマークの位置より外側であれば比較的安全に調整が可能ですし、見た目の目印にもなるので失敗が減らせます。

なお、ダリングでエッジを落とす場合、紙やすりでわずかにエッジを丸める程度で十分効果があります。(*削り過ぎて失敗した場合は簡単には戻せないのでその点は十分注意して、自身の責任において行って下さい)金属製のやすり(ファイル)では経験が無い限り失敗しやすく、おすすめしません。また、雪質、状況でエッジのかかり方は変わります。必ず「簡単には戻せない」ことを確認してから行って下さい。

どのような雪質、状況でもエッジが引っかかる感覚があるのならばダリング加工は必要になります。そのときはエッジを丸める大きさを少しずつ調整したり、ダリングの範囲を少しずつ調整すると失敗は少なくなります。

 

この「ダリング」ついてもっと詳しい説明が必要な方はさらに下へ読み進めて下さい。(専門的なのでわかりにくい点が多々あります)

という訳でここから先はダリングの解説、ハードモードです。

ダリングの目的はつまり「トーションのコントロール」になります。

ターン中トーション板の各部の名称

ターン中にトーションを支えるのはだいたいダリングマークの個所、板をそのまま置いた時に雪と触れる「接雪点」が基準となります。この点がしっかりエッジが効いていればターンした時にエッジがたわみを支え、横滑りする事無くターンすることが出来ます。

この「トーション」「横滑り」をコントロールするのがダリングの最大の意図です。エッジが引っかかると感じるのはつまりこの接雪点のエッジがずれない事が大きく影響していて、トーションが強ければ強いほどエッジはしっかり効きますが、しばしば効きすぎることにもなります。

これがトーションが弱い板であれば影響は小さくなります。トーションがねじれて力が逃げることでエッジングが弱まるので、結果ダリングが必要なくなる場合もあります。しかしトーションが効きやすい板はこの影響を大きく受けます。短いスキーボードが他に比べて影響を受けやすいのはこれが原因で、結果「スキボ乗りにくい」の悪いイメージの一因になっています。

さらに、サイドカーブの強いスキーボードでは他に比べてエッジにより板がキョロキョロとブレやすい特徴があります。現在のスキー板のサイドカーブが18~28mが主流に対して、スキーボードは6~10mとかなりきついサイドカーブを持っています。したがってわずかでも傾けばエッジが効いて板が回り始め、すれが不快感に繋がります。

これを解決するには「エッジの引っ掛かりをコントロールする」ことが重要で、結果ダリングが重要になります。ターンした場合に一番初めに影響を及ぼす接雪点上のエッジを丸めてエッジングを抑える事でずらしやすくし、サイドカーブの影響も低減させられます。大きくターンする場合はエッジを丸めたと言っても食いつくのでトーションを支える事が出来ます。

しかし「失敗」してしまうとどうなるか。ダリングは意図的に滑走に使えるエッジの長さを変えるので、やればやるほど短くなります。するとエッジが必要な「ターン」や「制動」に大きく影響してしまい、曲がれない、止まれない不安定な板になってしまいます。しかもエッジを削った場合、直すためにはサイドエッジを削って治すしか方法が無く、そのためには専用の道具と専門の技術、そして実費が必要になります。

なお、ダリングのように有効エッジ長を減らさない方法でエッジの利きをコントロールする方法もあります。それは「ビベル」と言う加工ですが、これはサイドエッジを削るよりもはるかに難しい作業なので一般的ではありません。

そこでGR板では「ダリングマーク」を用意しました。ダリングマークは接雪点を基準にGRで独自に適切な箇所を検討して示してあります。出荷時はこのダリングマークからそれぞれ約2cm、指一本分外側までをしっかりダリングしてあります。一般であればこの調整で不快感を持たず、板の性能も発揮される設定になっています。

ですが、エッジの効き方は雪質や環境によって大きく変わります。良く行くゲレンデが雪の豊富なゲレンデであればあまり感じませんが、良くしまった雪ではエッジが効きやすく感じられます。そういったここのシチュエーションに対応する場合、このダリングマークを目安に加工を行うと調整しやすくなります。ダリングではどうしても「どこまで削ったら良いのか?」が分かりませんが、あらかじめ示しておくことで作業を簡単にし、失敗を少なくしています。

このような意図がありGR板ではダリングマークを用意し、プレチューンでダリングを行っています。すべての方において快適なものにはなりませんが、最低限不快感は持たずに滑ることが出来ると考えて行っています。

そしてくれぐれもご自身で調整する場合は「失敗したら簡単に戻せない」という事を念頭に置いて加工して下さい。少しでも板がお好みの感覚になれば幸いです。

 

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加