スキーボードのブーツ

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スキーボード(ファンスキー)のブーツは、普通のアルペンスキーのブーツが一般的です。過去にはスキーボード(ファンスキー)専用ブーツも存在していましたが、残念ながら現在では「専用」のブーツはほとんどありません。

では、どのようなブーツを選ぶべきでしょうか?

 

スキーボードに適しているブーツは、足首が使いやすく適度な硬さのブーツです。

 

スキーボードはその板を支える為に膝が重要で、膝を使うには足首が使いやすいブーツの方が楽に使えます。従来あったリアエントリーと呼ばれるブーツの後ろ側がガバっと開いて脱ぎ履きするタイプのブーツ、レンタルで良く見かけるあのブーツでは、足首が使いにくくスキーボードには少し向きません。

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写真のように少し膝を曲げた状態が基本的な姿勢になりますが、ブーツの足首が曲げにくいと膝も曲げにくくなります。

これに適したブーツとしてお勧めするのが「フリーライド系」と呼ばれるブーツです。最近では「フリーライド系(もしくはフリースキー系)」と呼ばれるスキーブーツが多く出回るようになりました。これらのブーツはスキーのフリースタイル、パークで飛んだり構造物の上を滑ったり、従来のスキーの枠に当てはまらないスキーを言いますが、そういった意味ではスキーボードは同じくくりとなり、ブーツもフリーライド系のもので十分楽しむ事ができます。

もちろん、従来のスキーブーツでも楽しむことが出来ますが、新しく購入するのであれば「フリーライド系」を試さない手はありません。

 

ちなみに、スキーボードは他にも「スノーボードブーツ」や「テレマークブーツ」でも楽しむことが出来ます。これらはそれぞれ専用のビンディングが必要となり、操作も通常とは異なるので今回は説明を割愛しますが、スキーボードはいろいろなスタイルで楽しむことが出来ます。

 

さて、ではどのように選ぶのか?と言うと、スキーブーツ選びは難しいものです。足に合った物でないと足が痛くなったり滑りにくかったり、かといってどれが自分に合っているか?はわかりにくいものです。

スキーブーツ選びで重要なポイントは3つあります。

  1. 自分の足の実寸の長さ
  2. ブーツの硬さ
  3. 履き心地

まず 1.の自分の足の実寸の長さですが、多くの方がブーツを選ぶ際に、今履いている自分の靴のサイズを参考に選んでいると思います。

が、これが実はマズイのです。スキーブーツは実際の足の実寸を測って選ばなければ、ただただ痛かったりフィット感が良くないブーツを選んでしまいます。多くの場合ブーツを購入する時に店員の方にお願いすると、実寸を測って貰えます。その実寸を参考にブーツを選ぶと、多くの場合は靴のサイズよりも小さいブーツとなると思います。私の場合ですと普段の靴は27cmですが、スキーブーツは25.5cmです。足の実寸が25.2cmですので、これで十分です。

大きいブーツを選んでしまった場合、滑走中に足がブーツの中で動いてしまいます。これは滑りにくいだけでなく、靴擦れのようにこすれて痛める場合もあります。それを防ぐためにしっかり締めると、こんどは締めすぎとなってうっ血して痛かったり、締めすぎる事自体で痛かったりします。

適切な大きさであれば適切な強さでブーツを締められるので、結果痛みが出にくくなります。ブーツの性能も発揮されやすく、滑りやすくなります。

さらに最近のブーツは「ラスト幅」と言うものが示されています。おおむね90~100mmで示されていますが、これは足の一番広い所の幅です。

ラスト幅

この幅も測れば、自分の足に合ったブーツがさらに選びやすくなります。このラスト幅が広いブーツは履き試した感じは広く快適に感じますが、しかしこの幅があまりに余裕があると、上の理由で足が左右に動いてしまい、結果親指の付け根や小指の付け根が痛んでしまうことに繋がるので注意です。

次に 2.のブーツの硬さですが、ブーツは「フレックスインデックス」と言うものでブーツの硬さを示しています。その数字は50~150で、一般のものでは80前後のものが主流となっています。

このフレックスインデックスは単純にフレックスとも言いますが、実はメーカーによってばらばらで決まった数値ではありません。が、目安として利用は出来ます。

フレックスの関係

この図はブーツのフレックスと硬さの関係を示したものです。スキーブーツには大きく「競技モデル」と「コンフォートモデル」があり、同じフレックスインデックスでもその硬さは違ったりします。多くの場合は競技モデルをえらばないのでコンフォートモデルになりますが、コンフォートモデル110だとしても、競技モデルでは硬さとして90くらい、となったりするので一概にフレックスで選べるか?と言うとさらにわかりにくくなります。フリーライド系ブーツの場合は多くがコンフォートモデルなので、130の硬いブーツを選んだとしても、それは競技用の130とは大きく異なる硬さなのです。

では実際どのように選ぶか?それは板を履かずにブーツを履いた状態でブーツをたわまして足首が曲がるかどうかで判断すると良い参考になります。これが全く動かなければ硬すぎ、簡単に動きすぎては柔らかすぎです。ぐっと力を込めて曲がるくらいがちょうどよいフレックスになりますし、もし買い替えで購入する場合は元々のブーツのフレックスを参考にすると良いです。

そして 3の履き心地は最も重要でしょう。いくら足に合っていてフレックスもちょうど良くても、履いて痛ければ意味がありません。一番はためし履きをしてしっかりとブーツを締めた状態で痛みや違和感が感じられない事。そして適度に足全体が締め付けられている事です。特に簡単にかかとが浮いてしまう場合は浮かないブーツを選んだ方が良いでしょう。

そして最近のブーツでも中級以上のものとなると「フォーミング」呼ばれる機能がついています。このフォーミングはインナーブーツ、ブーツの外側の硬い所ではなく内側の柔らかいブーツをインナーブーツと呼びますが、これを自分の足型に合わせて変形させることで足にぴったり合わせられる仕組みです。メーカーやブランドによって異なりますが、ブーツを熱して温めて足の形を取る「熱整形」と呼ばれるインナーであれば非常に高いフィット感を得られます。他にも履き続ける事で徐々に足に合っていくフォーミングインナーもあり、これは各メーカーや店員さんに問い合わせてください。

と、ここで一つ注意があるのですが、もし熱整形インナーのフォーミングをする場合、もし初めからインソールと呼ばれる中敷を交換するつもりがあるのならば、インソールを交換してフォーミングを行った方が良いです。熱整形フォーミングの場合熱を入れられる回数がほとんどの場合2~3回で、それ以上は整形できなくなります。インソールによっては足のあたる部分が変わるため、この点は注意しておきましょう。そして熱整形したブーツは絶対に過度に温めてはいけません。ブーツを履くときに冷えていると寒いし履きにくいのでヒーターなどで温める方も多いと思いますが、暖め過ぎるとそのせっかくのフォーミングが元に戻ってしまうからです。温めたとしても体温程度に留めましょう。

このように選んだとして、もう一つ悩ましい事があります。最近のブーツはいろいろ進化しているため、バックルが4つだったり3つだったり、またはワイヤーだったりと様々です。

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これらはそれぞれ意味がありますが、軽さを重視するのであればバックルが少ない方が有利です。そして特に3バックルモデルでは足首が使いやすいものが多く、足首が細くてフィット感が得られない方には3バックルはおすすめできます。トータルのホールド感では4バックルが最も良いですが、足首を使いたいスキーボードでは4バックルでは硬く感じることもあります。

他に写真を用意できませんでしたが、ワイヤーバックルのモデルはその軽さに特徴があります。最終的には「好み」になりますが、このような特性も把握しておくと選びやすいでしょう。

さらに前傾角やカント調整などこだわるといろいろありますが、まずはこれらの点を押さえておけばきっと良いブーツに出会えると思います。もし良いブーツに出会えればそれだけでスキーは上手になりますし、快適に一日過ごせます。

以上、スキーボードにブーツについてですが、最後に最も重要なポイントを一つ。

必ず、試し履きをして購入しましょう。

ネットで買うと安かったりしますが、結局買い替えるよりもためし履きして買った方がずっと安く抑えられると思います。最終的にネットで買うにしても、一度履いて確認することをお勧めします。

 

トーションについて【もっと詳しく】

前にフレックスとトーションについて触れました。(参照:こちら

フレックスとトーションは切っても切れない関係で、そしてフレックスについて詳しく解説させて頂きました。(参照:こちら

そして今回はトーションについての詳しい説明です。トーションに関してはかなり理解するに難しい点もありますが、これを理解することが実は「スキーボードがなぜ短いだけのスキー板ではないのか」を説明する為にも大事な要素となります。

 

さて、トーションですがつまりは「板のねじれの強さ」です。スキボに限らずスキー板もスノーボードも板のねじれ──トーションがあり、これがさまざまに板のバリエーションと乗り味を出しています。

フレックスとトーション板の各部の名称

トーションとフレックスの関係性はフレックスの部分でも説明していますが、このトーションを説明するのにもう一つ大事なのがサイドカットの形状です。近年のスノーボードを含むスキー板はサイドカットが付けられたいわばしゃもじのような形状になっています。この形状のお蔭でスキー業界では大発明となった「カービングターン」が生まれ、倒すだけでも誰でも特別な技術を必要とせずに曲がる事が可能になりました。

このカービングターンに適した形状を従来のまっすぐなストレート形状と区別してカービング形状とも呼びますが、この形状が非常にトーションと深く関係しています。

 

一般にトーションが強い板はエッジが利きやすく、弱い板はエッジが利きにくくずれやすい特性があります。それはターンの時に板が傾いた際にトーションが強いと板がねじれずそのまましっかりエッジに力が伝わり、トーションが弱いと板がねじれてエッジが立たず板がずれていきます。

それだけでなくトーションが強いとサイドカットの頂点(上の図のA,C)にはターン中に大きなねじれの力が加わりますがねじれに耐えるのでそのまま板は深く深くたわませられたり、エッジを強く効かせることが出来ます。一方トーションが弱いとA,C点が足元に比べて大きくねじれてしまい、足元よりも先端側のエッジは利きが弱くなります。同時に板がたわみにくくなるのでターンは浅くなったり、横にずれたりします。

ターン中トーション

この図はイメージ的なものですが、サイドカットの頂点に雪面が引っかかって板がたわむとイメージするとわかりやすいかもしれません。

つまり、トーションの強さでエッジの利きの強さや板のずれやすさ、板のたわみやすさや扱いやすさを表現しており、各社の様々なモデルの板はどのようにねじれてどのようにたわませるかを考えて作られています。


 

  • スキーレベルとトーションについて

スキーレベルとトーションは重要な関係があります。結論から言うと

初級⇒トーションが弱いもの

上級⇒トーションが強いもの

をお勧めします。トーションが強くなるとどうしてもエッジの利きが強くなりコントロールが難しく、また脚力自体も必要になってきます。またトーションが強い板はフレックスが硬い傾向にあるため反発も強く、スキー全体のコントロールが出来るレベルでないとただただ滑りにくい板になります。

トーションの弱い板はずれやすい反面マイルドで、ブレーキ操作もしやすい傾向にあります。限界域での性能はやはり劣りますが、それ以上にもてあますような挙動を見せない分楽に扱えます。

もしも板がどうしてもエッジが強く感じたりする場合は、おそらくエッジが立ちすぎているか、トーションの合わない板を履いているかどちらかの理由になると思います。これを改善させるには「ダリング」と言うエッジを意図的に落としてずれやすくするチューニングを行えば改善されますが、ダリングしても扱いにくい場合は板を変える他方法はありません。

 

  • トーションの利きやすい板とは?

トーションの利きやすい板はフレックスの強い板、そして幅の狭い板です。もともと板が硬いフレックスの強い板はトーションも硬くなり、また細い板は構造上ねじれにくいためにトーションが利きやすくなります。このような板は非常に動きがクイックでスキーボードにおいてもこの傾向は同じものです。また板の構造上の部分、多くの場合サンドイッチ構造よりはキャップ構造の方がトーションが強くなります。(ただしサンドイッチ構造の板はキャップ構造に比べて非常に細かく板のフレックスやトーションが調整できるのでその限りでない板もあります)

 

  • スキーボードにおけるトーションとは?

スキーボードはその安定性と滑走性を確保する為に長板に比べて幅の広いものが主流です。実はこの点が非常に大きな意味を持ちます。これは幅の広い板は構造上トーションが弱くなりやすく、トーションを確保する為に板が硬く、重くなる傾向にあるためです。

しかし幅広の板でフレックスが弱いと驚くほどペラペラした弱い板になります。こうした板は体重が軽い型や女性、筋力のない方には扱いやすいのですが体重のある方や筋力のある方には安定感のない非常に足元が不安定な板に感じてしまいます。

これは板が短いスキーボード特有のもので、長さのある長板のスキーなどではここまで極端に感じることも少ないものです。なのでスキーボードではわずかな板の幅の違いや硬さの違いが大きく滑走感に影響します。したがって従来のスキーボードが幅の広いものほど硬く、上級指向にあったのは不安定なトーションを確保する為に仕方なくフレックスも強くしていたという影響もあります。

しかし最近では技術向上もあって乗りにくいほどフレックスを固めずにトーションを確保した板もあります。またダリングの活用によって昔よりも乗りやすい板が作れるようにもなっています。

 

  • トーションの確かめ方

フレックスと違いトーションは乗ってみなければ確かめることが難しく、しかも前述のダリングやチューンナップ、雪質などによって変わるために簡単に確かめる方法はありません。おおむねフレックスの方さから推測する他ありませんが、試乗会などがあればそこで確かめるのが一番良い方法です。

適切なフレックス、トーションの板は非常に扱いやすく、快適に滑れます。自分がどういった滑りを好むのかを把握しておくと板選びの時に差を体感することが出来ると思います。


 

トーションは感覚的な部分も多くはっきりと感じることも難しいのですが、今後「ダリング」や「ビベル」と言ったチューンナップに手を伸ばした場合には少なからず知っておいて損のないものです。また各メーカーがフレックスを固めすぎずにトーションを確保する為に様々に工夫していますので、板選びの際にも役立つと思います。

最後にトーションをまとめるならば、ターン中の板のたわみとエッジの利きを左右するのがトーションの役割と考えて貰えば良いと思います。非常にわかりにくい解説になりましたが以上です。

 

 

フレックスについて【もっと詳しく】

前回(→こちら)にて板のいろいろな言葉とその意味をご紹介しましたが、フレックスとトーションに関してもう少し説明が必要なので今回は踏み込んで説明します。まずは身近なフレックスについて解説しましょう。

では前回のこの画像を参考にします。

フレックスとトーション

それぞれの言葉が何を意味しているのかはご理解頂けていると思います。では、これが実際滑っていてどのように影響があるのか?と言う部分をまず説明します。

<滑走とフレックス>

フレックスはその板の「乗っている時の安定感」に繋がります。フレックスの弱い板はふにゃふにゃと安定しませんし、強い板はガチッとしていて扱いにくさを感じます。フレックスは自身の体重にも影響があるのでフレックスが弱いと言っても体重が軽ければ硬く感じたり強く感じたりします。

このフレックスはキャンバーと相まって車で言うサスペンションのような役割もあります。要するに足元にばねがあると思ってもらって差し支えありません。このばねがショックを和らげたり多少の凹凸を軽減してくれたり、ターンを簡単にもしてくれます。

スキーの板はこのフレックスをどのように表現するか。それによって多種多様な板が生まれていると言っても過言ではありません。

一般的に初心者向きの板ほどフレックスは弱く、上級者ほど強い板になります。それは初級者は体重以外で板をたわませられないので過度なフレックスは邪魔なものでしかなくなりますし、上級者は遠心力なども利用して滑るので体重以上のものを支える力が必要になりますし、滑走スピードも上がるので雪面からのショックに耐えうる強いフレックスが必要になります。

したがって一般で言われる初心者用、上級者用とはこのように大まかに性格が違うのです。なので上級者モデルだからとハイスペックで素晴らしい板だと思いきや、実際滑ってみるとあれ?滑りにくい、というのは良くある話なのです。

ちなみにこのフレックスの強い、齢を一般では「硬い板/柔らかい板」と表現しています。

→フレックスの強い板=硬い板
→フレックスの弱い板=柔らかい板
<フレックスを選ぶには?>

フレックスに関して選ぶには何か指標となる数字があればよいのですが、これはメーカーとしても具体的な数字で示しているものではなくユーザーの主観と経験で判断する他ないです。それはレベルや体格などで要求されるフレックスが異なる事と、板によっては板のノーズとテールでフレックスが異なることも良く有るからです。

したがってメーカーパンフレットなどで示されている情報からフレックスの強さを検討して、実物があれば自分で硬さを確かめるほかありません。(注:店頭などで許可なくフレックスを確かめるために板を押したりしてはいけません。確認する場合には店員さんにきちんと許可を頂いてから確かめましょう)

ですが基本的に

初級モデル=フレックス弱め  <  上級モデル=フレックス強め

となっている事が多いので、そのメーカーがどういったユーザー向けに提供しているか?でもある程度判断できます。また目安的に自分の滑走レベルを考えた時に「安定して止まれるか」「どんなスキー場のどんなコースでも不安なく滑れるか」を目安とするとレベルの判断がしやすいと思います。

初級→安定して止まることが出来ない、もしくは不安がある
中級→安定して止まることは出来るが、コースによっては滑れない場合もある
上級→ほとんどのコースで不安なく滑ることが出来る
<レベル、滑りにに合わない板を選ぶデメリット>

軽く前述していますが、レベルや滑りに合わない板を選ぶと大きくデメリットを感じます。具体的にどうかと言うと

 

「板が硬く感じる場合(フレックスが強い板を履いている場合)」

・滑走感が悪く疲れる

・ちょっとしたギャップや凹凸で跳ね飛ばされる

・ターンがしにくい(曲がりにくい)

・板がバタつく

・板がいう事を聞かない

・エッジが引っかかる

「板が柔らかく感じる場合(フレックスが弱い板を履いている場合)」

・足元が安定しない(フニャフニャ感がある)

・ターンの切り替えしがしにくい

・スピードを出してターンをすると怖い

・止まりにくい

・滑っていて板の振動を感じる

・エッジが利いている感じが薄い(板がズルズルと動いてしまう)

 

以上のように感じます。実際はこの限りではありませんが、多くはフレックスがあっていないことが原因のものでもあります。

<となると、初級なら柔らかく、上級なら硬いのを選ばないといけないの?>

と思うかもしれませんがそうでもありません。それは自身の滑走スタイルにもよるからです。むしろおすすめするのであれば

「初級者は柔らかいものを、上級者は好みで」

となるでしょう。硬い板はどうしても扱いにくさが目立ってしまいますが、柔らかい板はシチュエーションや滑り方をコントロールできれば大きくデメリットになる事もないからです。柔らかい板は構造上軽い板になる事も多く、その点でも初級者にお勧めするのであれば柔らかい板は扱いやすいでしょう。上級者ならば自分の好みの硬さもわかるでしょうし、さらに別で解説するトーションも絡んでくるとその板選びは非常に奥が深いものになるので、目安的にこれまでの話を念頭に置いておいて板選びの参考にして頂ければと思います。
以上、フレックスのより踏み込んだ解説でした。別記事となるトーションと合わせて読んで頂ければより板のスペックなどの見方が分かり、自分に合った板選びの目安になると思います。

スキーのキャンバーとロッカー、フレックスとトーションについて

前回(こちら)はスキーボードの各部の名称とその説明をさせて頂きました。今回はその続き、「キャンバー」と「ロッカー」、そして「フレックス」と「トーション」についてです。

という訳でまずはまたわかりにくい図を・・・

キャンバーとロッカー

キャンバー、ロッカーは板に意図的につけられたたわみの事です。静止状態で置いておくとスキーの板の多くは反っていると思います。これがキャンバーです。ロッカーはキャンバー同様に元々つけられたチップの大きな反りなのですが、このロッカーの仕組みは近年のスキー業界ではトレンドとなっています。

これらの話をする前に必要なのが「有効接雪点長」です。図で示していますが、滑走時に雪面に触れるエッジの長さをそういうのですが、一般ではそのまま板を置いた時に板と雪が触れるノーズ、テールの点を「接雪点」と言います。多くの板は板の一番幅の広い箇所と接雪点はほぼ同じ位置になり、その位置関係によってターン性能などが大きく変わってきます。

先に説明の簡単なロッカーについて。ロッカーはこの接雪点を意図的に手前にし、それ以上前の部分を浮かせた構造になっています。これが何を意味するのかと言うと深雪やパウダースノー、荒れたゲレンデなどにおいてあらかじめノーズが浮き上がっているために自力でノーズを持ち上げるような動きや操作をすることなく、普通の滑りで足を取られる事無く滑走が出来ます。しかしロッカーが無いとノーズが雪に埋まってしまう為ノーズを浮かせるように板を引き上げなければならず、しかも後ろ気味に重心をかけて滑るので通常の滑りと違った操作が必要になります。(これが割と大変なのです)

キャンバーロッカー補足

つまり簡単に言うと、ロッカーのある板は整地されていない状況でも楽に滑れるメリットがあるのです。しかしデメリットもあり、構造的に有効接雪点長が本来の長さよりも短くなってしまいます。なので板としての安定性は同じ長さの普通の板に比べて不安定になりやすく、ターンを楽しむ滑りには向かない傾向にあります。最近だと意図的にごくわずかのロッカーを入れて扱いやすくした板も多く、従来のものよりより楽にターンが楽しめる板もありますが、極端なロッカー形状の板になればなるほどターン性能は落ち、普通のゲレンデでは扱いにくくなります。

ですが、パウダーなどのシチュエーションでこれに勝る構造は他にはありません。そして短く構造的に作りにくいスキーボードであってもこの構造を持った板もあります。

 

キャンバーはロッカーとは違いずいぶん昔からその構造として存在しています。これがあることで効率的にノーズやテールを雪面に押し付ける事が出来て、板のレスポンスも上がるからです。エッジを十分に使えば使うほどターンは安定して曲がることが出来るようになります。キャンバーの無い板だと足元のエッジしか雪面に押し付けることができなく、せっかく板の長さを利用することが出来ません。

キャンバーはその板の硬さ、ねじれの強さも大きくかかわってきます。これらを「フレックス」「トーション」と言います。

フレックスとトーション

フレックスは板のたわみの強さの事です。フレックスが強い板ほど「硬い板」、弱い板は「柔らかい板」になります。トーションはねじれの強さで、最近の幅の広い板では非常に重要な部分となっています。

キャンバーのある板はフレックスの強さによってエッジに掛けられる力の強さ、板そのものの反応、レスポンスが変わってきます。一般に上級者ほどフレックスの強い板が好まれますが、反応性が高い板の方がさまざまなシチュエーションで使いこなせるといった意味があります。ですので初級者はあまり機敏な板よりもゆったりして優しい板、フレックスの弱い板の方が楽に滑れます。

トーションはいったい何に影響するかと言うと、弱ければ板はターン中にずれやすく、強ければエッジが立って切り込むように曲がれます。最近主流のカービングと呼ばれるずれないターンはトーションの利いた板でないと板がずれてしまってうまくカービングになりません。ですがカービングが必要でない滑りではトーションの利いた板はエッジが利きすぎて滑りにくく、曲がりにくくなります。

そしてトーションはそれ単体だけを硬くしたり柔らかくしたりすることがなかなか出来ません。板自体の硬さであるフレックスが大きく影響するためで、基本的にフレックスが強い板は、トーションも強くなる傾向にあります。メーカーは様々に工夫してこのバランスをとるために、板の構造としていろいろなパーツを取り付けたり凹凸をつけて表現しています。またトーションは幅の広い板ほど利きやすく、狭い板は影響が小さくなります。

これらのキャンバー、フレックス、トーションがうまくミックスされて様々な板が出来ています。同じ大きさ、太さの板でもこの3つが違うだけで全く別の板に感じられます。

ちなみにスキーボードでは板の幅が大きいためトーションが重要ですが、短いので一般的にはトーションは強めになってしまいます。ですのでメーカーは工夫してフレックスを柔らかくしてトーションも柔らかくする構造を優先して作っています。キャンバーもつけすぎるとエッジが利きすぎてしまうので緩やかのなものが多く、見た目に差異が感じられにくくなっています。

尚、グラウンドトリックを多用するスタイルの方であれば、トーションの強くないもの、キャンバーの緩やかなものが扱いやすくなります(ずらしやすくなるので)。滑走がメインの方ですと張りのあるフレックスが強めでキャンバーのしっかりついた板が良いでしょう(エッジが利かせやすく、反応性が良い)。

このようにこれらの言葉の意味と構造を理解すると自分が欲しい板の構造が何となくつかめると思います。

 

さて、キャンバーとロッカー、そしてフレックスとトーションですが、実際の所見た目では良くわからないのが実情です。乗ってみなければわからない、しかも体格や体重によっても印象が変わるために誰かが良いと言った板があんまり良くなかったり、自分の好きな板が他の人に好まれなかったりという事があります。ですが知っておくとより自分に合った板を選ぶことが出来るので、ただでさえ高価なスキー道具ですから後悔する事無く買う為にも知っておいて損は無いものだと思います。

以上、わかりにくい点もありますが構造の説明でした。