ビンディング取付に関するS-B-Bシステムについて

S-B-Bシステム(以下SBB)と言うものをご存じでしょうか?

SBBは <こちら> にて詳しく書かれていますが、国際標準規格であるISOに基づいてスキーと板を繋ぐ金具「ビンディング」の取付や調整が行えるように、指導を受けて認定をされた技術者がその取付や調整を行うというものです。これには国内外大手各社が賛同しており、もちろんGR ski lifeでも認定を頂いております。

一般ではビンディングの調整に関してこのような取り決めがある事はあまり知られていませんが、スキーショップなどでオーダーした際に身長や体重を確認されたり、ブーツを持ってくるようお願いされた方は多いと思います。それはこのSBBに基づいて調整する為に訊かれていたことで、多くの販売店がこのSBBの元にビンディングの取付と調整を行っております。

そのSBBで必要となるのが「身長」「体重」「年齢」「ソールサイズ」「スキーヤーレベル」の5つです。この5つから適切に解放値を割り出し、調整を行います。また、これらの情報は「ワークショップチケット」に記載され、適切に調整されたか記録して保管されます。「ワークショップチケット」はSBBの要ともいえるもので、ユーザーはその内容を確認して署名する必要があります。

この「ワークショップチケット」に記載される情報の中で特にわかりにくいのが「ソールサイズ」「スキーヤーレベル」でしょう。ソールサイズはスキーブーツの大きさの事で、すべてのスキーブーツに示されています。一般に24.5cmとか26cmと言ってものそブーツ自体のサイズはメーカーやモデルによって異なり、この数字は解放値を決める上で非常に重要な数字となります。

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写真のようにブーツ下部のどこか(この場合は305mm)に書かれている場合がほとんどです。書かれ方や向きなどはメーカーによって異なりますが、おおむね250~330mmの数字で書かれています。

そしてスキーヤーレベルは3つに分かれます。


 

スキーヤーレベル TYPEⅠ 穏やかで滑らかなな斜面を慎重に滑るスキーヤー

スキーヤーレベル TYPEⅡ TYPEⅠ TYPEⅢのどちらにも当てはまらないスキーヤー

スキーヤーレベル TYPEⅢ 急な斜面をコントロールして滑る高速志向のスキーヤー


このどれかにあてはめます。簡単に言えば安定して止まったり曲がったりが出来なければTYPEⅠ、どこのスキー場でもどんなコースでもコントロールして安定して滑れるならばTYPEⅢ、それ以外は全てTYPEⅡとなります。

そして身長や体重、年齢は正確な値をお伝え下さい。こうしてようやく解放値が決定できます。

解放値が決定してもまだ調整は完了していません。先述のソールサイズによってビンディングの幅の調整は行われますが、ビンディングのモデルによってはさらに細かな調整が必要になる場合がります。それは実際にお使いになられるブーツをはめ込み、適正に調整します。

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たとえばこのブーツのようにブーツ前方のビンディングにひっかける部分が削れてしまっている場合、適正なソールサイズ通りの取付でもはめ込むと適正にならない場合があります。この状態のビンディングは解放値が正しくても外れやすかったり、逆に外れなかったりと不具合を示す可能性があります。ですので可能な限り目視で確認し、調整可能なものに関しては調整を行い、正しくビンディングが作用するようにします。

ですので、お買い求めになる場合でも可能な限りブーツを預け、調整をしてもらうようご依頼下さい。(万が一適正でないと感じた場合は最寄SBB認定技術者にご相談下さい。店舗情報などは <こちら> にて公開されております)

こうして調整されたビンディングは効果を発揮し、怪我などの程度を軽減させることが可能になります。

 

このように業界としても安全対策の為に非常に厳しく行っております。この点をご理解頂いて快適なスキーをお楽しみ頂けたらと思います。

ワックスの種類について

前回 <こちら> にてスキーとワックスについて解説しました。(まだご覧になっていない方は一度ご覧ください)

非常にわかりにくい話ですが、今回はさらに踏み込んだ解説をしたいと思います。

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前回、スキーとワックスの関係を解説しましたが、その中で「ワックスには種類がある」と言いました。その種類について解説します。ワックスの種類

(上記 A-EはAが最も優れている、Eが最も効果が期待できない。 S-HはSが柔らかい Mがふつう Hが硬いの意です)

このように種類があります。(表は一般的なワックスの参考です)

これらを使い分けるのがワックスのむずかしさであり醍醐味ですが、まず基本としてこのような関係があります。使う基準として気温や雪温が示されていますが実は単純にそれらの温度帯に合わせるだけでなく、使うシチュエーションに合わせてワックスを選ばなければ、逆にワックスが滑走性を悪くすることもあります。

たとえば人工雪のスキー場。人工雪は天然に比べて結晶が硬く、板が傷つきやすい傾向にあります。ですのでベースとしては保護性の硬いワックスが入っていないと後で残念なことになります。また、黄砂の舞う春先はこの黄砂やゴミが摩擦となって滑走性の邪魔になるので、暖かい時期ではありますが低温用のワックスが必要になります。

しかし保護性ばかり見ていると滑走性が悪くなる事もあります。これは「硬いワックスが入っていると柔らかいワックスが入りにくい」と言う特徴にもよる事で、板の撥水性が損なわれて雪が少しでも解けると滑りにくくなる板になったりもします。

したがってベースの作り方にコツが生まれてきます。ベースワックスは一般的に柔らかいものから順に硬いワックスを入れます。こうして作ったベースは滑走性も持ちつつ保護性も持たせたオールラウンドな板に仕上がります。これが面倒な場合は「オールラウンド用」の幅広いシチュエーションで使えるベースワックスを使う方法もありますが、多くはやや保護性にかけるので個人的には硬いワックスと組み合わせると良いと考えています。

こうして作り上げた滑走面は十分に浸透した皮膜層ができており、高い滑走性を維持することが出来ます。が、この皮膜層は滑るほど失われるため、適時ベースワックスを塗って維持する必要もあります。これは一見面倒ですが、一度ベースを作ってしまえば作業自体は割と簡単になります。こうして十分浸透した皮膜層を作り、維持していくことを「滑走面を育てる」と表現したりします。

ここで注意なのですが、ワックスは「それそのものは滑らない」と言う事です。

DSC06479_R 余分なワックスを削り取る各種ブラシ

スキーで滑る際に必要なのは「ワックスが浸透した滑走面」であって、その上に残るワックスは余分なものです。ですので、ワックス作業では必ずワックスをはがし取る必要があります。

この作業を「ブラッシング」と言いますが、ブラッシングの意味はもう一つあり、ストラクチャーと呼ばれる滑走面の微細な排水の為の傷のワックスをはがし取る意味もあります。

ストラクチャーは滑走面をよく見るとわかりますが、非常に微細に細かく傷がついているのがわかると思います。この傷が非常に大切で、滑る上で邪魔な「水」を効果的に排水してくれます。水はまとわりつく性質があり、滑走性に悪影響を及ぼします(表面張力、ゲレンデにできた水たまりに入った事がある人はわかると思います)。それを軽減してくれる構造が「ストラクチャー」です。ストラクチャーを失った滑走面はいくら育ててもなかなか滑走性が上がりません。(濡れた机に下敷きを置き、しっかりと押さえつけてから横に滑らそうとしてもなかなか滑りません。同じ現象が雪の上でも起こります)

かといって過度にストラクチャーを付けてしまうとそれそのものが滑走性を悪くする場合もあります。ストラクチャーは難しいので細かい説明は省きますが、安易にストラクチャーはいじれるものではありません。

話はそれましたがワックスが塗られるとこのストラクチャーはもれなく埋まってしまいます。ですのでブラッシングによってストラクチャーの中のワックスもはがし取る事でより滑走性を高めます。ワックスは必要なのにワックス自体は必要ない、少し矛盾な感じもしますね。

ですが「ワックスが浸透している滑走面が滑る」と覚えれば、理解しやすくなると思います。

なお、滑走面のワックスをすべて剥がし取るのは非常に大変です。慣れないうちはこの作業でかなり苦労すると思います。


これまで「滑走面とベースワックス」について着目して解説してましたが、次に「滑走ワックス」についてです。

滑走ワックスは滑走性を高めることを主眼としており、ベースワックスとの一番大きな違いは添加剤が加えられている事です。この添加剤は多くは「フッ素」で、他にグラファイトと呼ばれる炭素化合物や、ガリウムなどもあります。これらの添加物は水弾きに作用したり、静電気に作用したりと様々です。

ですが一番の大きな目的は「水やゴミを滑走面に近づけない」事です。それによって安定した滑走性を発揮させるのが「滑走ワックス」です。

この滑走ワックスは基本的にベースワックスの上から使います。さらに滑走ワックスは滑るシチュエーションを良く検討した上で使うのが理想です。これは単純に滑走ワックスが高額であるのと、耐久性がベースワックスより劣るからです。しっかり状況にあった滑走ワックスを使わなければその効果は発揮されず、しかも一日滑れば滑走ワックスはだいたい剥がれ落ちてしまいます。

となると「浸透させればいいじゃない?」と考えますが、滑走ワックスに含まれる添加物はそのごく表面に効果を発揮します。浸透させてしまってもそれらの添加物は何も効果はありませんし、値段もかなり高い滑走ワックスなのでわざわざ頑張って浸透させるメリットはありません。

滑走ワックスイメージ 青が滑走面 黄色がワックス 黒点が添加物

図はイメージですが、このように捉えて頂ければ想像しやすいと思います。この表面に付着した添加物により、高い滑走性を発揮するのが滑走ワックスの役割です。特にフッ素は水に対して効果が高いので春雪などの水分が多い時期に用いると一日気持ちよく滑れる事でしょう。

滑走ワックスはこのような原理がありますが、実はレジャースキーであればそこまで必要なものでもありません。タイムを争う競技スキーでは避けて通れない部分ですが、タイムよりも快感を重視するスキーの場合、一日通して滑走性が保てるという事の方が重要です。

ですので敢えて滑走ワックスを使うよりも、ベースワックスをしっかり使って良いベースを作る事の方が重要です。コスト的にも滑走ワックスは高額なので、ベースワックスの扱いに慣れてから使い始める方が良いと思います。

私もたまに使いますが、毎回使う訳ではありません。あらかじめシチュエーション的に「必要だな」と思う時以外はあまり使いませんし、後述の液体ワックスなどを活用してピンポイントで滑走性を維持する方法でスキーを楽しんでいます。パウダーや雨のスキー、初めて訪れるスキー場など滑走ワックスがその効果を発揮するのは、そういった必要である状況が見えた時に使うようにしています。

この他に液体ワックスや、それを使いやすくしたスプレーワックスがありますが、原理的には滑走ワックスに近いものと捉えてしまって構いません。ですので一時的な滑走性は良いのですが、残念ながらその効果は一日、状況では半日も持たないものもあります。スプレーワックスを使う場合でも、最低限あらかじめベースワックスが浸透している滑走面を作っておいた方がより効果は長持ちします。

また、液体ワックスなどは一時的に浸透させるためにコルクなどでこすりあげる必要があります。これが実は結構大変な作業で、アイロンを使ったワックス作業が出来ればやりたくないと思うような作業です。ちなみにコルクでこすらずそのまま使った場合、最悪たった一本滑っただけでワックスが剥がれ落ちてしまう事もあります。

と、ここまではパラフィンが主成分となるワックスについて説明しました。しかし最近では「非ワックス系」というものも存在します。有名なのはザードスのノットワックスですね。

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このタイプは滑走面の表面にフッ素などの被膜を作り滑走性を保ちます。原理的にはテフロンコートのフライパンに近いです。ですので適切に使うと驚くべき効果を発揮し、しかも効果も滑走ワックスなどよりも長く体感できます。特に春雪には非常に効果が高く、扱いも手軽です。

ですが、根本的に「保護性」を無視しているのでこれもできれば保護性の高い硬いベースワックスで滑走面を作った後に使った方が良いです。実際にワックスに添加された状態のものもありますし、ワックスとの併用も推奨されています。

正直なところ、本当に効果が高いのでワックスに不慣れな方にはおすすめできるものでもあります。私も緊急用にいつも携帯しています。

最後にクリーニングワックスですが、クリーニングワックスは極力添加物や不純物のない、扱いやすいパラフィンでできています。よってその保護性や滑走性はあまり期待できませんが、滑走面をきれいにするためには非常に有用です。

これは、クリーニングワックスを滑走面に溶かし込むと滑走面の奥からゴミやほこり、油などを浮かし出してくれるからです。ですからクリーニングワックスは浸透させる目的もないので使う場合は滑走面に溶かしたら軽く固まるのを待ち、すぐに剥がし取ってしまいます。手間はかかりますがかなり滑走面をきれいにすることが出来ます。

 

このようにワックスの種類について説明させて頂きました。私の主観によるものもありますが、概ね把握して頂ければこれからのメンテナンスに生かせる情報にはなると思います。

ワックスは始めるのが少し大変ですが、出来るようになるとゲレンデで一日気持ちよく滑れるようにもなります。実際の施工方法はまた別の機会に説明させて頂きますが、この機会に始めてみてはいかがでしょうか?

スキーとワックスの関係について

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(注)非常に長く理解しにくいかもしれません。あしからず。

スキーボードもスキーもスノボも、その板は雪の上で滑ります。なので、ほとんどの板は雪に対して滑りやすい素材を滑走面に採用しています。

この素材は簡単に言えば「ポリエチレン」でできています。数ある素材の中でポリエチレンが採用されたのはマイナス以下の温度に対して変質が少ないのと加工が容易なこと、そしてワックスとの相性が良いことが大きく採用されている理由です。そのポリエチレンの種類として専門用語的に「エクストリューテッドベース」「シンタードベース」などがあります。

このポリエチレンはワックスと共に使うと非常に強力に滑走性を高めることが出来ます。この原理は様々あるのですが大まかに

・水が張り付く事で損なわれる滑走性を軽減できる(表面張力による滑走性の低減)

・氷が傷つける事で損なわれる滑走性を軽減できる(摩擦力による滑走性の低減)

と、似て非なる二つの要因に対して有効なのがこの組み合わせなのです。


水は0℃で凍ります。凍った水の結晶が積もった状態が雪なのですが、この上を滑るからこそ難しい問題があります。それは雪がさまざまな状況で多様にその状況を変化させてしまう事。なので、滑走面として適切なのは一つのシチュエーションで優れた効果を持つものよりも、多様なシチュエーションに合わせて柔軟に対応できる素材である。という事です。

気温が0℃程度の時の雪はすぐに解けます。滑ると雪と滑走面の間に水がまとわりつき、滑りが悪くなります。そこで滑走面に撥水性を持たせれば水をはじき、滑走性を維持できます。

気温が非常に寒いマイナス10度の時は雪は硬く凍ります。その硬い結晶はやすりのように滑走面を削り、滑走性が悪くなります。そこで滑走面に削れにくい能力を持たせれば、滑走性を維持できます。

この二つの仕組みを滑走面に与えられるのが「ワックス」なのです。ワックスのその成分は「パラフィン」で、簡単に言うとロウソクのロウと同じ成分です。このパラフィンに様々な添加物を与えたり、そのものに工夫をすることで大変多くの種類のワックスが生み出されています。

DSC06473_R 例 写真はSWIX社などのもの。ワックスとその種類

簡単には、ワックスは気温によってその種類が分けられています。

・溶けやすい雪に対して撥水性を重視したもの(高温度用、写真では黄色のワックス)

・硬く傷つける雪に対して保護性を重視したもの(低温度用、写真では青いワックス)

・その中間となる1~3種類のもの(中温度用、写真では赤いワックス)

が多くのワックスメーカーで用意されています。さらに幅広いシチュエーションに対応できる「オールラウンド用」と、滑走面のクリーニング目的で使う「クリーニング用」があります。さらにその用途で「ベース用」「滑走用」などがありますが、今回はその説明は割愛します。

雪の状況に合わせて滑走面にワックスを塗る事で多様なシチュエーションに合わせて滑走性を維持できるのが、このポチエチレン+ワックスの最大の強みです。だからこそ一般のユーザーにはわかりにくい悩みが同時に存在しています。

それは「どのワックスをどのように使うか」

という事です。


ワックスの塗られていないポリエチレンのみの滑走面は、初期的には滑りますがどんどんその滑りは劣化していきます。ポリエチレンは低温や高温に強い反面、劣化しやすい性質があるからです。スキーではこれを「滑走面が酸化する」「滑走面が焼ける」と表現していて、横文字だと「ベースバーン」と言います。

この劣化は止める手段がなく、たとえどのような滑走面でも時間が経てば劣化します。さらに対候性に弱い性質を持つために、屋外で使うスキーは何もしなければどんどん劣化します。劣化してしまった滑走面はそのままではワックスを浸透させることが出来なくなっており、上記の滑走性の維持や保護性の向上が出来なくなるばかりか、より滑走面が劣化していきます。

この劣化を食い止めるのが、またワックスの役割です。劣化の大きな原因は水と空気と紫外線ですが、そのうち水と空気に関してワックスが塗られていれば、その劣化を大きく食い止めることが出来ます。ワックスによるごく薄い皮膜のような層によって無用な水や空気が滑走面に触れなくなり、滑走面はより長くその性能を維持することが出来ます。

ですが、このワックスが浸透して出来た層は0.2ミクロンとも言われる非常に薄い層で、これは滑走によって徐々に失われていきます。よって、ワックスは適時塗り足して浸透させなければなりません。

では、削れにくくする「保護性」重視のワックスを使えばワックスははがれにくくなるでしょうか?答えはその通りですが、しかしデメリットがあります。保護性重視のワックスが浸透している滑走面は滑走性を重視する柔らかいワックスが入りにくくなります。したがってワックスをバランスよく浸透させることが一番大事になります。逆に滑走性のワックスだけが浸透している滑走面は低温時に滑走面が保護しきれずやすられて削られ、せっかくの浸透層がなくなって無防備な滑走面を晒して劣化させてしまいます。(良くスキーの板が滑走後に白く変色しているのはこれが理由です。なので圧が最もかかる足元のエッジ付近が良く白く変色して劣化します)

このバランスを簡単にしたものが「オールラウンド用」と呼ばれるワックスです。オールラウンド用ワックスは適度に滑走性と保護性を持っているので扱いは楽です。しかしシーズン通した幅広いシチュエーションすべてに対応できるほどの柔軟さは持っていませんし、多くのオールラウンド用は滑走性を重視して配合されています。より適した滑走面を求めるならば、数種のワックスを使い分ける方がより良い滑走面になります。

この場合、浸透させる順序があります。基本は高温度用の柔らかいワックスから低温度用の硬いワックスの順番に使います。さらに滑走面は1度や2度の作業ではワックスがしみこみきりません。何度も浸透させることで一様に均一な、様々なシチュエーションに対応できる滑走面が出来上がります。これを「滑走面を育てる」とも言います。

このようにして作った滑走面は滑走性を維持しつつもしっかりとした保護性を発揮し、多少のシチュエーションの変化でも諸ともしない良い滑走面になります。またしっかりワックスが浸透している事で劣化に対しても効果を発揮し、その寿命は格段に長くなります。あとはその都度時期や雪に合わせたワックスを塗り足していくことでシーズン通して快適なスキーを楽しむことが出来ます。


 

このようにスキーとワックスは切っても切れない関係にありながら、その原理的には非常に理解するのに難しい問題があります。しかしこれらの原理的な部分を理解しておくと、自分でチューンナップを行う際にワックスの選択などで判断しやすくなります。

次回はそんなワックスの具体的な種類と使い分けについて説明したいと思います。

 

GR板のプレチューンナップ作業の紹介

GR板のプレチューン紹介動画です。GR板は全てこのような作業の後に出荷されております。

(注)

これらの作業は滑走性などを向上させる目的で行われておりますが、すべてのユーザーに対してその効果を保障するものではありません

また、その効果は一時的なものであり恒久的に維持されるものではありません、これらの点をご了承ください。

スキーボードの板の種類(形状)について

スキーボードは短いですが、非常に豊富な板の種類があり、それぞれにその性能は違います。見た目にはわずかな差ですが性能が異なるのはスキーボードが短いというのが一番大きな理由です。

では、どのような種類があるかと言いますとまず形状の違いから3種類があります。

板の形状の違い

現在主流になっているのは「ツインチップ」形状で、この形状は様々にメリットがありフリーライドと呼ばれる長板を含むスキーの世界では多くに採用されている主要な形状です。この形状の最大の利点はテール部が反りあがっている事であり、前方向だけであったスキーが後ろにも自在に動け、その可能性を大きく引き出してくれました。

対して従来のスキーや、長板では主流なのがテールカット、もしくはラウンドカットです。テールカットは最も従来に近い形であり、その特徴は前に滑る目的であること。ラウンドカットはコンフォートなスキーで良く採用されている形状でテールカットよりも板の取り回しが楽になっています。

このテールカットとラウンドカットは現在のスキーボードではあまり採用されていない形状です。特にテールカットのものはほとんどなく、あったとしても非常に古い板であることが多いです。

これらの3種類を具体的にメリット、デメリットを上げると

ツインチップ

メリット:取り回しに優れ、方向を気にせず扱える   デメリット:滑走性や安定性が他に比べて劣る場合が多い

ラウンドカット

メリット:滑走性を犠牲にしない程度で取り回しが良くなっている   デメリット:後ろ向きにも扱えるが限界がある

テールカット

メリット:滑走性に優れ、板の本来の性能を最も発揮できる   デメリット:取り回しが悪く前方向にしか要さない

となります。単純にはツインチップとテールカットがあり、そのいいとこどりがラウンドカットだと理解してもらっても良いでしょう。尚、GRの板で言えばWhiteLandとForFreeはツインチップ形状、SnowFairyがラウンドカットになります。

スキーボードの場合、元より短いためにその滑走性を維持しようとするとどうしても太くする必要も出てきます。これは接地面積を増やして安定させる意味が大きいですが、これも違いがあります。

一般に太いものは「ファット形状」細いものを「ナロー形状」と言います。その境はだいたいサイドカットのセンター幅が80~90mmを超えるかどうかであり、それ以下は「ナロー」、それ以上は「ファット」となります。

ファット形状は素晴らしい安定感をもたらしますが、反面板は反応が鈍く取り回しにくくなります。ですので「太ければよい」と言うものでなく、太すぎるものは曲がりにくく、逆に扱いにくくなります。ですがパウダーなどのシチュエーションでは太いものの方が有利で、他にも左右に対して安定性を求めるジブなどでは太いものが好まれます。

対してナロー形状ですが、これは最近少数にはなっています。板の反応が鋭く動きにすぐさま反応します。ファットに比べて安定性は劣りますが、ダイレクトな操作感を求めるのであればナロー形状はファットにはない十分な操作感を与えてくれます。安定性に対してデメリットがあるため近年ではあまり見かけませんが、そのクイックな乗り心地はスキーボード本来の軽い乗り味を最も表現しているものだと思います。

注意点としてこの太さの違いは体格によっても感覚が変わります。特にスキーレベルが低い方や小さい方にとっては太い板は扱いにくくなりがちです。かなり使用感に差の出る部分であるので板選びの際には注意したい部分です。

なお前述しましたが、近年であればナロー形状は少数派となっています。それは昨今のファットスキー人気と安定性の向上を目的としたもので、センター90mmの太さでもナロー形状に劣らない使用感を与えてくれる板もあります。GR板に関しては使用感と取り回しを重視しセンター90mmのモデルを展開しています。

板の各部の名称

さらに板の構造として「サンドイッチ構造」と「キャップ構造」があります。これは製法の違いですが、乗り味にも影響があります。

サンドイッチ構造は板が重くなりやすいデメリットはありますが、板全体のフレックスやトーションを設計しやすく、しっとりした乗り味の板が多くなります。たわませてエッジを使う使い方に適しており、高額になりやすい意味もあり上級のモデル向きな構造になります。

キャップ構造は構造が簡単なために初、中級モデルで良く採用されますが、軽さや耐久力ではサンドイッチ構造よりも有利で、エッジの利き具合もこちらの方が優位となる場合もあります。価格と軽さを重視するスキーボードでは主流の構造で、最近ではサンドイッチ構造に引けを取らないものもあります。


このように板の形状として

ツインチップ ラウンドカット テールカット

その太さとして

ファット形状 ナロー形状

そして以前説明しています構造としての違い

サンドイッチ構造 キャップ構造

これらを組み合わせてスキーボードは様々に商品が展開しています。実際に板選びの際に参考にすると、自分に合った板が見つけやすくなると思います。またこれらの言葉の意味が理解できるとカタログなどで説明される板の性能などが想像しやすく、複数の板を所有した場合でも遊びやシチュエーションに合わせた板をチョイスしやすくなると思います。

トーションについて【もっと詳しく】

前にフレックスとトーションについて触れました。(参照:こちら

フレックスとトーションは切っても切れない関係で、そしてフレックスについて詳しく解説させて頂きました。(参照:こちら

そして今回はトーションについての詳しい説明です。トーションに関してはかなり理解するに難しい点もありますが、これを理解することが実は「スキーボードがなぜ短いだけのスキー板ではないのか」を説明する為にも大事な要素となります。

 

さて、トーションですがつまりは「板のねじれの強さ」です。スキボに限らずスキー板もスノーボードも板のねじれ──トーションがあり、これがさまざまに板のバリエーションと乗り味を出しています。

フレックスとトーション板の各部の名称

トーションとフレックスの関係性はフレックスの部分でも説明していますが、このトーションを説明するのにもう一つ大事なのがサイドカットの形状です。近年のスノーボードを含むスキー板はサイドカットが付けられたいわばしゃもじのような形状になっています。この形状のお蔭でスキー業界では大発明となった「カービングターン」が生まれ、倒すだけでも誰でも特別な技術を必要とせずに曲がる事が可能になりました。

このカービングターンに適した形状を従来のまっすぐなストレート形状と区別してカービング形状とも呼びますが、この形状が非常にトーションと深く関係しています。

 

一般にトーションが強い板はエッジが利きやすく、弱い板はエッジが利きにくくずれやすい特性があります。それはターンの時に板が傾いた際にトーションが強いと板がねじれずそのまましっかりエッジに力が伝わり、トーションが弱いと板がねじれてエッジが立たず板がずれていきます。

それだけでなくトーションが強いとサイドカットの頂点(上の図のA,C)にはターン中に大きなねじれの力が加わりますがねじれに耐えるのでそのまま板は深く深くたわませられたり、エッジを強く効かせることが出来ます。一方トーションが弱いとA,C点が足元に比べて大きくねじれてしまい、足元よりも先端側のエッジは利きが弱くなります。同時に板がたわみにくくなるのでターンは浅くなったり、横にずれたりします。

ターン中トーション

この図はイメージ的なものですが、サイドカットの頂点に雪面が引っかかって板がたわむとイメージするとわかりやすいかもしれません。

つまり、トーションの強さでエッジの利きの強さや板のずれやすさ、板のたわみやすさや扱いやすさを表現しており、各社の様々なモデルの板はどのようにねじれてどのようにたわませるかを考えて作られています。


 

  • スキーレベルとトーションについて

スキーレベルとトーションは重要な関係があります。結論から言うと

初級⇒トーションが弱いもの

上級⇒トーションが強いもの

をお勧めします。トーションが強くなるとどうしてもエッジの利きが強くなりコントロールが難しく、また脚力自体も必要になってきます。またトーションが強い板はフレックスが硬い傾向にあるため反発も強く、スキー全体のコントロールが出来るレベルでないとただただ滑りにくい板になります。

トーションの弱い板はずれやすい反面マイルドで、ブレーキ操作もしやすい傾向にあります。限界域での性能はやはり劣りますが、それ以上にもてあますような挙動を見せない分楽に扱えます。

もしも板がどうしてもエッジが強く感じたりする場合は、おそらくエッジが立ちすぎているか、トーションの合わない板を履いているかどちらかの理由になると思います。これを改善させるには「ダリング」と言うエッジを意図的に落としてずれやすくするチューニングを行えば改善されますが、ダリングしても扱いにくい場合は板を変える他方法はありません。

 

  • トーションの利きやすい板とは?

トーションの利きやすい板はフレックスの強い板、そして幅の狭い板です。もともと板が硬いフレックスの強い板はトーションも硬くなり、また細い板は構造上ねじれにくいためにトーションが利きやすくなります。このような板は非常に動きがクイックでスキーボードにおいてもこの傾向は同じものです。また板の構造上の部分、多くの場合サンドイッチ構造よりはキャップ構造の方がトーションが強くなります。(ただしサンドイッチ構造の板はキャップ構造に比べて非常に細かく板のフレックスやトーションが調整できるのでその限りでない板もあります)

 

  • スキーボードにおけるトーションとは?

スキーボードはその安定性と滑走性を確保する為に長板に比べて幅の広いものが主流です。実はこの点が非常に大きな意味を持ちます。これは幅の広い板は構造上トーションが弱くなりやすく、トーションを確保する為に板が硬く、重くなる傾向にあるためです。

しかし幅広の板でフレックスが弱いと驚くほどペラペラした弱い板になります。こうした板は体重が軽い型や女性、筋力のない方には扱いやすいのですが体重のある方や筋力のある方には安定感のない非常に足元が不安定な板に感じてしまいます。

これは板が短いスキーボード特有のもので、長さのある長板のスキーなどではここまで極端に感じることも少ないものです。なのでスキーボードではわずかな板の幅の違いや硬さの違いが大きく滑走感に影響します。したがって従来のスキーボードが幅の広いものほど硬く、上級指向にあったのは不安定なトーションを確保する為に仕方なくフレックスも強くしていたという影響もあります。

しかし最近では技術向上もあって乗りにくいほどフレックスを固めずにトーションを確保した板もあります。またダリングの活用によって昔よりも乗りやすい板が作れるようにもなっています。

 

  • トーションの確かめ方

フレックスと違いトーションは乗ってみなければ確かめることが難しく、しかも前述のダリングやチューンナップ、雪質などによって変わるために簡単に確かめる方法はありません。おおむねフレックスの方さから推測する他ありませんが、試乗会などがあればそこで確かめるのが一番良い方法です。

適切なフレックス、トーションの板は非常に扱いやすく、快適に滑れます。自分がどういった滑りを好むのかを把握しておくと板選びの時に差を体感することが出来ると思います。


 

トーションは感覚的な部分も多くはっきりと感じることも難しいのですが、今後「ダリング」や「ビベル」と言ったチューンナップに手を伸ばした場合には少なからず知っておいて損のないものです。また各メーカーがフレックスを固めすぎずにトーションを確保する為に様々に工夫していますので、板選びの際にも役立つと思います。

最後にトーションをまとめるならば、ターン中の板のたわみとエッジの利きを左右するのがトーションの役割と考えて貰えば良いと思います。非常にわかりにくい解説になりましたが以上です。

 

 

夏季休業のお知らせ

誠に勝手ながら以下のように夏季休業とさせていただきます。

8/27(水)~9/1(月)

 

メールなどの返信、各種サポートに関しては9/2以降となりますのでご了承ください。また、チューンナップ受付は先日告知しましたように今月中の受付となりますのでよろしくお願い致します。

コミュニティGRがリニューアルしました

GRmini長らくお待たせいたしましたが、コミュニティーGRがリニューアルし、本日より公開となっております。

 

http://www.grandtrick.net

このコミュニティーGRは元は2005年から私が運営しておりますスキーボードチーム「GrandtrickRaver’s」が元となっております。ちなみにGrandtrickのつづりは意味があっての造語で間違いではありません。

このGrandtrickRaver’sは通称GRの名で親しまれておりまして、現在日本最大規模の活動しているスキーボード団体の一つとして運営されています。その規模はメンバーが日本中に、北は北海道から南は九州まで、大勢の皆様にご参加頂いております。

ブランドのGRと区別する為にコミュGRと書きますが、コミュGRでの活動が今現在このブランドGRを生み出したと言っても過言ではありません。GRではmixiを利用してメンバーを管理し、毎シーズン活発に活動を行っております。その中で皆さんの意見や現状、希望や要望が積み重なりGRが生まれました。

 

そんなコミュGRはこの春に一旦リニューアルの為に閉じさせてもらっていました。というのもブランドGRが立ち上がった事でそのサイト機能に変更を迫られたのと、長らく更新していなかったのでこの機会にと思い一旦閉じていました。そしてこの度リニューアルとなったわけです。

新しいコミュGRではコミュニティー機能を前面に、スキボのデータや解説などはブランドGRで行っているのでそのデータベースとして活用することにしました。ですので

・スキボで楽しんだり集まったり、皆さんの活動を支えるコミュGR

・スキボの販売から解説など、スキボを支えるブランドGR

と棲み分けることになります。もちろん管理者代表は私ですが、コミュGRは基本的にフリーの団体となるので、GRのスキボユーザーだけでなく多くのスキーボーダーに参加して頂きたいと願っています。

これまでGRを懇意にしていただいていた方に於いてもコミュGRの活動自体はほとんど変わりません。これまで通り楽しいイベント活動など企画しますので随時チェックして頂ければと思います。

 

改めましてコミュGRを宜しくお願い致します。

板の予約が始まりました

本日より板の予約が始まりました!

シーズンまで残り数か月!そろそろ今シーズンの準備を…と考えていませんでしたか?GR ski lifeではそんなあなたに4種類の板を今シーズンご提供します。

初心者から乗りこなせるエントリーモデルの「WhiteLand」はうれしいバインディング付で、ほとんどのスキーブーツに合わせて調整が可能です。

足前に自信のある方は「ForFree」あなたのスキーが自由に!解き放たれた快感をご体感下さい!

女性や体格の小さい型には「SnowFairy」90cmの短い長さでありながらラウンドカットの採用でその滑走感は99cmに匹敵します!

そして限定50台となる「WhiteLand-theFirstLimitedBlackEdition」はWhiteLandの色違いですが今回限りの限定モデルです!

 

尚、予約特典として販売予定のステッカー、チューンナップ割引券、送料1000円の各種特典がございます。こちらの予約は実販売が始まるまでの予約ですのでお早めにご予約頂けたらと思います。

今シーズン、スキボで楽しんでみませんか?身近で手軽で楽しくて奥の深いスキーボードは、きっとあなたの新しいスキーライフの扉を開けてくれます!そしてゲレンデにはGR ski lifeのベースとなったコミュニティの仲間たちが大勢います!皆さんで今シーズンのゲレンデを一気に盛り上げましょう!!

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