トーションについて【もっと詳しく】

前にフレックスとトーションについて触れました。(参照:こちら

フレックスとトーションは切っても切れない関係で、そしてフレックスについて詳しく解説させて頂きました。(参照:こちら

そして今回はトーションについての詳しい説明です。トーションに関してはかなり理解するに難しい点もありますが、これを理解することが実は「スキーボードがなぜ短いだけのスキー板ではないのか」を説明する為にも大事な要素となります。

 

さて、トーションですがつまりは「板のねじれの強さ」です。スキボに限らずスキー板もスノーボードも板のねじれ──トーションがあり、これがさまざまに板のバリエーションと乗り味を出しています。

フレックスとトーション板の各部の名称

トーションとフレックスの関係性はフレックスの部分でも説明していますが、このトーションを説明するのにもう一つ大事なのがサイドカットの形状です。近年のスノーボードを含むスキー板はサイドカットが付けられたいわばしゃもじのような形状になっています。この形状のお蔭でスキー業界では大発明となった「カービングターン」が生まれ、倒すだけでも誰でも特別な技術を必要とせずに曲がる事が可能になりました。

このカービングターンに適した形状を従来のまっすぐなストレート形状と区別してカービング形状とも呼びますが、この形状が非常にトーションと深く関係しています。

 

一般にトーションが強い板はエッジが利きやすく、弱い板はエッジが利きにくくずれやすい特性があります。それはターンの時に板が傾いた際にトーションが強いと板がねじれずそのまましっかりエッジに力が伝わり、トーションが弱いと板がねじれてエッジが立たず板がずれていきます。

それだけでなくトーションが強いとサイドカットの頂点(上の図のA,C)にはターン中に大きなねじれの力が加わりますがねじれに耐えるのでそのまま板は深く深くたわませられたり、エッジを強く効かせることが出来ます。一方トーションが弱いとA,C点が足元に比べて大きくねじれてしまい、足元よりも先端側のエッジは利きが弱くなります。同時に板がたわみにくくなるのでターンは浅くなったり、横にずれたりします。

ターン中トーション

この図はイメージ的なものですが、サイドカットの頂点に雪面が引っかかって板がたわむとイメージするとわかりやすいかもしれません。

つまり、トーションの強さでエッジの利きの強さや板のずれやすさ、板のたわみやすさや扱いやすさを表現しており、各社の様々なモデルの板はどのようにねじれてどのようにたわませるかを考えて作られています。


 

  • スキーレベルとトーションについて

スキーレベルとトーションは重要な関係があります。結論から言うと

初級⇒トーションが弱いもの

上級⇒トーションが強いもの

をお勧めします。トーションが強くなるとどうしてもエッジの利きが強くなりコントロールが難しく、また脚力自体も必要になってきます。またトーションが強い板はフレックスが硬い傾向にあるため反発も強く、スキー全体のコントロールが出来るレベルでないとただただ滑りにくい板になります。

トーションの弱い板はずれやすい反面マイルドで、ブレーキ操作もしやすい傾向にあります。限界域での性能はやはり劣りますが、それ以上にもてあますような挙動を見せない分楽に扱えます。

もしも板がどうしてもエッジが強く感じたりする場合は、おそらくエッジが立ちすぎているか、トーションの合わない板を履いているかどちらかの理由になると思います。これを改善させるには「ダリング」と言うエッジを意図的に落としてずれやすくするチューニングを行えば改善されますが、ダリングしても扱いにくい場合は板を変える他方法はありません。

 

  • トーションの利きやすい板とは?

トーションの利きやすい板はフレックスの強い板、そして幅の狭い板です。もともと板が硬いフレックスの強い板はトーションも硬くなり、また細い板は構造上ねじれにくいためにトーションが利きやすくなります。このような板は非常に動きがクイックでスキーボードにおいてもこの傾向は同じものです。また板の構造上の部分、多くの場合サンドイッチ構造よりはキャップ構造の方がトーションが強くなります。(ただしサンドイッチ構造の板はキャップ構造に比べて非常に細かく板のフレックスやトーションが調整できるのでその限りでない板もあります)

 

  • スキーボードにおけるトーションとは?

スキーボードはその安定性と滑走性を確保する為に長板に比べて幅の広いものが主流です。実はこの点が非常に大きな意味を持ちます。これは幅の広い板は構造上トーションが弱くなりやすく、トーションを確保する為に板が硬く、重くなる傾向にあるためです。

しかし幅広の板でフレックスが弱いと驚くほどペラペラした弱い板になります。こうした板は体重が軽い型や女性、筋力のない方には扱いやすいのですが体重のある方や筋力のある方には安定感のない非常に足元が不安定な板に感じてしまいます。

これは板が短いスキーボード特有のもので、長さのある長板のスキーなどではここまで極端に感じることも少ないものです。なのでスキーボードではわずかな板の幅の違いや硬さの違いが大きく滑走感に影響します。したがって従来のスキーボードが幅の広いものほど硬く、上級指向にあったのは不安定なトーションを確保する為に仕方なくフレックスも強くしていたという影響もあります。

しかし最近では技術向上もあって乗りにくいほどフレックスを固めずにトーションを確保した板もあります。またダリングの活用によって昔よりも乗りやすい板が作れるようにもなっています。

 

  • トーションの確かめ方

フレックスと違いトーションは乗ってみなければ確かめることが難しく、しかも前述のダリングやチューンナップ、雪質などによって変わるために簡単に確かめる方法はありません。おおむねフレックスの方さから推測する他ありませんが、試乗会などがあればそこで確かめるのが一番良い方法です。

適切なフレックス、トーションの板は非常に扱いやすく、快適に滑れます。自分がどういった滑りを好むのかを把握しておくと板選びの時に差を体感することが出来ると思います。


 

トーションは感覚的な部分も多くはっきりと感じることも難しいのですが、今後「ダリング」や「ビベル」と言ったチューンナップに手を伸ばした場合には少なからず知っておいて損のないものです。また各メーカーがフレックスを固めすぎずにトーションを確保する為に様々に工夫していますので、板選びの際にも役立つと思います。

最後にトーションをまとめるならば、ターン中の板のたわみとエッジの利きを左右するのがトーションの役割と考えて貰えば良いと思います。非常にわかりにくい解説になりましたが以上です。